
方針転換をSEC内部から批判
米証券取引委員会(SEC)のキャロライン・クレンショー委員(民主党)は27日、SECがコインベースに対する訴訟を取り下げたことについて、内部から痛烈に批判する声明を発表した。
SECは27日、仮想通貨の規制枠組みに取り組むタスクフォースの作業を待つことを理由として、コインベースと共同で訴訟取り下げの合意書を提出している。
これに対してクレンショー氏は、法律が今後どう変わるにしても、市場参加者は平等に現在の枠組みに従うべきだと意見した。また、訴訟からの撤退はSEC執行部の信頼性を損なうものだとして、次のように主張している。
今回の動きは、当局が選挙サイクルに合わせて、または資金力のある者を優遇するために執行リソースを割り当てるという恐れを生み出すものだ。
当局が政治的背景を理由に動くという批判を招き、政府への不信を植え付ける。当局の仕事は、投資家、資産発行者、資本市場にとって正しいことを行うことであり、取り下げはこれに該当しない。
クレンショー氏の任期は6月までとなっている。仮想通貨業界によるロビー活動も一つの背景に、クレンショー氏が委員に再指名されることはない。
現在は、3人の現職委員のうち、仮想通貨擁護派のヘスター・ピアース委員、マーク・ウエダ委員2人に対して、反対派はクレンショー氏1人となっている。クレンショー氏は少数派ではあるものの、6月まではSEC内で仮想通貨擁護の方向性に異論を唱え続ける可能性がある。
クレンショー氏は声明で、仮想通貨業界には「詐欺や市場操作、マネーロンダリング、国家安全保障上の懸念、ボラティリティ、個人投資家の損失など、よく知られたリスクがある」と批判した。
また、訴訟取り下げについては、SECが不正なネズミ講を取り締まる能力が損なわれている可能性を指摘し、SECは仮想通貨を他の資産よりも特別扱いするつもりなのかと疑念を投げかけている。
SECとは
株や債券などの証券の取引を監督する米国の政府機関のこと。1934年設立。公正な取引の確保と投資家保護を目的としており、インサイダー取引や企業の不正会計、相場操縦などを防止する。仮想通貨が有価証券に該当するかという判断も行う。
数々の訴訟を取り下げ・延期へ
SECのマーク・ウエダ委員長代理は、対コインベース訴訟取り下げにあたって、次のように話していた。
過去数年間、SECの仮想通貨に関する見解は、市民と対話することなく主に執行措置を通じて表明されてきた。
SECがこうしたアプローチを修正し、より透明性のある方法で仮想通貨政策を策定する時が来ている。仮想通貨タスクフォースは、まさにそれを目的とするものだ。
こうした言葉通り、SECはコインベースに対するものだけではなく、仮想通貨ウォレットのメタマスクに対する訴訟も終わらせる意向だ。さらに、仮想通貨取引所ジェミナイや分散型取引所ユニスワップへの調査も終了した。