何の利益も得ていない
ドナルド・トランプ米大統領は、4日に公開されたNBCニュース「ミート・ザ・プレス」のインタビューで、自身の公式ミームコイン「TRUMP」から金銭的な利益を得ているという主張を強く否定した。
1月17日にローンチされたTRUMPトークンは、大統領就任前日に73.43ドル(約10,570円)の最高値を記録した。その後、価格は下落していたが、4月24日に同トークンの上位保有者を対象にしたトランプ氏とのプライベートな晩餐会の計画が発表されると、価格は50%以上急騰。ブロックチェーンデータ企業Chainalysisによると、 TRUMPトークンはわずか2日間でその支援者に約90万ドル(約1億2,960万円)の取引手数料をもたらしたという。
トランプ大統領は、トークン価格が急騰したことはもちろん、価格についても全く知らなかったと述べた。
「大統領職を利用して利益を得ているのではないかという懸念に対して、何と答えるか」と尋ねられたトランプ氏は、「私は何の利益も得ていない」と断言。大統領選前から、暗号資産(仮想通貨)プロジェクトを開始しており、仮想通貨を強く支持する理由は「何百万人もの人々がそれを求めているからだ」と答えた。
また、仮想通貨の根強い人気と市場の回復力の強さに言及し、仮想通貨の重要性を強調。「我々がやらなかったら、中国がやる」と付け加えた。
再度、トランプ氏自身が仮想通貨から利益を得ていないのかと念を押されると、「見てもいない」と回答し、次のような論理を展開した。
私が何らかの株を所有していて、私がいい仕事をしたために株式市場が上昇したとすれば、利益を得たということになるのだろうね。
仮想通貨からの利益を政府に還元するのかと尋ねられると、そんなことは思ってもみなかったと答えた。そして自身が所有している不動産が、大統領になって良い仕事をしたために少し上昇したからといって、その全てを政府に提供する理由にはならないと反論した。
さらに、第一次トランプ政権時に歴代大統領の中で初めて(ジョージ・ワシントンについては不明)、大統領としての給与(4年間で約200万ドル=2億8,700万円)を政府に寄付したこと、また今期も同様に寄付する予定であることを強調。しかし、このような自身の政府への奉仕の姿勢が報道されることは一度もないと訴えた。
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利益相反の懸念
NBCのインタビューでトランプ大統領は、トランプ一族の仮想通貨プロジェクトと大統領職の利益相反の可能性について自身の言葉で反論したが、その懸念は払拭されていない。
ファイナンシャル・タイムズによると、同氏の公式ミームコイン・プロジェクトはすでに少なくとも3億5,000万ドル(503億円)の利益を上げており、そのうち3億1,400万ドル(452億円)はトークン販売によるもので、3,600万ドル(51億7,700万円)は手数料によるものだという。
中でもTRUMPトークン保有者向けの晩餐会の開催については、批判が集中している。
ジョン・オソフ上院議員(民主党)は、「現職大統領が実質的に自身への直接支払いとなる行為で特別アクセス権を売っているのは明らかに弾劾されるべき行為」と批判。クリス・マーフィー上院議員(民主党)は、「大統領がこれまでに行った中で最も厚かましく腐敗した行為だ」と非難した。
同じく民主党のアダム・シフ上院議員やエリザベス・ウォーレン上院議員も、米国政府倫理局に書簡を送り、この晩餐会の開催について緊急に調査を開始するよう促した。
トランプ大統領の発表は、大統領の事業の一つへの多額の投資と引き換えに、大統領への独占的なアクセスを約束するものだ
両議員は、5月22日に予定された特別晩餐会が「金銭を支払った者に政治的便宜を図る汚職行為」にあたり、連邦倫理法に違反する可能性があると主張している。
共和党の仮想通貨支持派議員からも懸念の声が出ている。シンシア・ルミス上院議員は、この件については「ためらいを感じる」と表明。ミームコインについては「無法地帯」であり、さらなる混乱を招かないためにも、明確な規制整備が必要だと訴えた。
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関税について
NBCのインタビューでは関税問題にも繰り返し言及された。
ベビーカーなどの日常用品の価格上昇など、関税が国民生活に負の影響を与える可能性を強調するインタビューアーに対し、トランプ大統領はガソリン価格や住宅ローン金利の低下、米国の自動車産業が受ける恩恵など、「より大きな社会全体への影響」に目を向けるように促した。
トランプ氏は、関税はアメリカの貿易赤字削減と国内製造業の復活に必要だと強調。最終的には国内製造業の隆興により、一般消費者は関税のことを心配せずに消費活動を行えるようになると主張した。
また、就任後数ヶ月という短期間に「米国への投資は史上最大の規模に達した」と主張。その総額の試算は9兆ドル(約1,290兆円)規模に上ると付け加えた。
一方、トランプ大統領はいずれは関税を引き下げる可能性があることも示唆。「そうでなければ貿易相手国とは、全くビジネスができない。彼らは積極的な取引を望んでいる」と述べた。
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