
大統領らによるミームコイン活動など禁止
米国上院の民主党議員ら20名は先週、ドナルド・トランプ大統領らの暗号資産(仮想通貨)活動を禁止する法案を提出した。ジェフ・マークリー議員とチャック・シューマー議員が主導している。
「仮想通貨腐敗(汚職)防止案:End Crypto Corruption Act of 2025」と題するもので、大統領の他、副大統領や行政機関の高官、議員、およびその直近の家族が、ミームコインやステーブルコインなど仮想通貨やNFT(非代替性トークン)の発行、推奨、後援することを禁ずる内容だ。
法案の対象は個人や家族の暗号資産活動(発行、後援、推奨)であり、ビットコイン準備金の創設など政府機関による仮想通貨推進を直接禁止しないものと見られる。ただし、トランプ氏や政権幹部の個人利益が絡む場合、間接的に政策に影響を与える可能性はある。
現時点で法案の可決可能性は低いとされるが、トランプ氏の利益相反を批判する政治的ツールとしての役割も果たしており、可決に至らなくても議論を通じて世論を喚起する狙いがあると見られる。
法案支持者の一人であるケリー議員は、次のように表明した。
ドナルド・トランプ氏は、大統領職を利用して金儲けをし、自身の仮想通貨で数百万ドルを稼いでいる。これはまさに白昼堂々の汚職だ。
大統領やその他の政府関係者が仮想通貨で利益を得ることを違法とするこの法案を提出する。今こそ、不正に終止符を打つ時だ。
対象となる政府職員の中には、イーロン・マスク氏や政府効率化局の他のメンバーも含まれるとみられる。なお、マスク氏は最近、政府効率化局がドージコイン(DOGE)を公式に採用する予定はないと明言した。
法案は、違反者には罰金と懲役刑を科すとしている。一方で、対象となる者が仮想通貨など金融資産の購入、売却、保有を行うことは許可する。
法案は政府職員およびその家族を対象としており、その任期中および任期終了後1年間について先に挙げた禁止事項を課すものだ。
なお、共和党が議会で多数派を占めていることやトランプ氏の影響力を考慮すると、この法案を上院で可決することは現在のところ難しいとみられる。また、米国政府自体による仮想通貨推進政策を妨げるものではない。
トランプ氏は、大統領就任式の3日前となる1月17日に、公式ミームコイン「TRUMP」を発行。この件でトランプ氏とその家族が巨額の利益を得ている可能性が指摘され、民主党より利益相反と批判されている。
トランプ氏はミームコインで利益を得ていることを、独自の論理を展開して否定したところだ。
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ミームコインとは
インターネット上で話題になることで人気を集めるコイン。代表的なものにイーロン・マスク氏がSNSで言及することで取引量が急増したドージコイン(DOGE)がある。2020年にドージコインを踏まえてリリースされたSHIBA INU(SHIB)も存在。
米国下院では、サム・リカード議員らも2月に同様の法案を提出していた。
この「現代的報酬・不正行為執行法(MEME法)」は、大統領や下院議員、その他の政府高官とその家族が、証券およびミームコインを含む仮想通貨を発行したり後援することを禁止する内容だ。
また、法案に違反した取引から得た報酬を、米財務省に返還しなければならないという規定も盛り込んでいる。
米国では現在、ステーブルコイン法案が両院で議論されているところだ。民主党の一部からは、トランプ一族による金融プロジェクト「World Liberty Financialが米ドル建てステーブルコイン「USD1」を発行していることから、利益相反になるとの指摘が挙がっていた。
その後、上院のステーブルコイン規制法案「GENIUS法案」は重要な手続き投票で否決され、成立の見通しが大幅に低下している。
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