- 英ケンブリッジ大、仮想通貨規制状況を考察
- 英名門ケンブリッジ大学と野村総研との共同研究の結果、仮想通貨業界発展のために、世界標準で利用可能な仮想通貨用語の名称および定義統一が最優先課題とした。
英ケンブリッジ大、主要国の仮想通貨規制を調査
暗号資産など、仮想通貨業界の専門用語に対する認識と定義の相違が、世界各国の仮想通貨規制の発展を阻んでいる最大要因であることが英ケンブリッジ大学の調査で判明した。
各国の規制状況を総括したレポートは、野村総合研究所と連携して行なわれている。
日本や米国など23カ国を対象に120ページにも及ぶ詳しい情報を記載したレポートは、世界基準の仮想通貨規制が未だに定まっていない理由として仮想通貨業界に係る「専門用語の定義」や名称、そして認識が異なることを挙げた。
特に定義が定まっていない用語の代表例として挙げられたのは「暗号資産」(Cryptoasset)で、各国の規制スタンスによって主に以下の3つの異なる定義に分けることができる。
暗号資産の定義
広い見方
分散型台帳技術を活用した全てのシステム上(パブリック・プライベートチェーン含む)で発行・取引される全てのデジタルトークン。
中間的な見方
パーミッションレスでオープン、パブリックな分散型台帳上で発行・取引される全てのデジタルトークン。
狭い見方
パーミッションレスでオープン、そして基盤となる分散台帳またはアプリケーションが重要な役割を担うデジタルトークン。
特定の発行元はなく、ネットワークが事前に決定されたスケジュールに則り計画的に発行するデジタルトークン。
また調査の結果、82%の国では仮想通貨と有価証券を差別化する法案が出ていることがわかった。さらに仮想通貨業界が自国で成長している政府は仮装通貨を既存の法律に組み込んだケースが47%と一番多く見られている。
さらに調査の結果、各国の仮想通貨規制が業界の一部分に偏っていることが判明している。一般的な金融市場と類似している点(ICO・取引所)が多く規制されているが、専門的な部分(マイニング、エアドロップ、フォーク)の規制には至っていない。これは長期的に見て、仮想通貨業界の発展を拒みかねないため注意する必要があると考えられるだろう。
仮想通貨の様々な呼称
そして、仮想通貨や暗号資産の定義に限らず、仮想通貨の呼び方自体が違うケースも多い。
主要国の仮想通貨に対する名称をまとめた下記図を参照すると、各国において仮想通貨を指す用語が異なることがわかる。
ユーロ圏の国家では、Cryptoasset(暗号資産)、Virtual Asset(仮想資産)、Cryptocurrency(暗号通貨)、Digital asset(デジタルアセット)、Digital currency(デジタル通貨)などの名称が採用されている。
一番多く見られるのは、日本やアメリカ、韓国などが利用するVirtual Currency、いわゆる仮想通貨の名称は人気だ。
仮想通貨の名称|過去傾向
また下記の図は各国政府が発令した仮想通貨に関する文書を参考に、時間の経過とともに仮想通貨を指す用語の変化を示したチャートである。
ビットコインは一般的に各国政府から認知され始めたのは、BTC価格が1000ドルに達した2013年ごろとされるため、統計は2013年からスタートしている。
当初は技術そのものを「ビットコイン」と呼ぶ政府が過半数を超えていた。また、おそらくビットコインのホワイトペーパーの題名「P2Pの電子キャッシュシステム」を元にしたElectronic Currency(電子通貨)も利用されていたが、2014年までにはVirtual Currencyが最も人気となっている。
その後は暗号通貨、デジタル通貨などの表現も利用されはじめた。そしてICOなどが急成長を見せた2017年は特に仮想通貨を資産とする見方が増え「Cryptoasset(暗号資産)」とする政府も増えた。
ICOの厳しい規制が見られた2018年を経た2019年2月現在、一番利用されている名称は未だに「仮想通貨」であるものの、暗号資産や「デジタル資産」、デジタル金融資産などの名称も台頭を表している。
国内の名称変更に関する事例
日本国内では、「仮想通貨」の呼称が一般的に浸透している。
しかし、今年3月には仮想通貨の呼称が「暗号資産」に変更されることが、金融商品取引法と資金決済法の改正案を閣議決定した際に決まった。
すでに金融庁から登録を受けている国内の取引所などは、事業ブランディングや商標登録など全て仮想通貨の呼称で行われているため、大体的な変化こそないとされるが、政府がG20に向けて呼称を変更した意義は大きいと言えるだろう。