- 米初事例、仮想通貨トレーダーが報告義務の怠惰で罰金へ
- 米国の金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)は、現金からビットコインを交換するサービスを提供していた1人の仮想通貨のトレーダーが銀行秘密法(BSA)上の登録および報告要件を遵守しなかったとし、約400万円の罰金を科した。
米初事例、仮想通貨トレーダーをマネロン対策法違反で400万円罰金科す
米国の金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)は18日、カリフォルニア在住の仮想通貨のトレーダーであるEric Powers氏が、2012年から2014年の間に銀行秘密法(マネーロンダリング対策法)の登録および報告要件を遵守しなかったと発表した。当局によると、インターネット上でビットコインを売買する「事業」を行っている間、Powers氏は自分自身を為替業者としても、マネー・サービス・ビジネス(MSB)業者としても登録していなかった。
また、Powers氏はMSBとして、仮想通貨と法定通貨で行われた疑わしい取引を報告せず、例えばダークネット市場のSilk Roadに関連する「事業」を行うなど、約500万ドル(5億円)相当のビットコインを約160回取引きし、さらに1万ドル(100万円)を超える法定通貨の取り引きを200回以上行ったが、自己申告を一度もしなかったという。
仮想通貨トレードは「金融事業」?
マネーロンダリング・テロファイナンスの対策を講じるFinCENの今回の判断で、示唆される議論は2つあるとされる。
- 二者間の通貨交換は「送金」である。
- 個人でも為替業者になり得る。
つまり、個人が事業を営んでいる場合、その事業の規模にかかわらず、銀行秘密保護法上で「金融事業」となり、さらに「peer-to-peer exchangers」という個人間での交換も金融為替業者間の取引として認識される。
しかし、Powers氏は某仮想通貨コミュニティーサイト上で、現金使用および直接面会してのビットコイン交換サービスの告知をし、原理に基づいて仮想通貨の売買をしていた。自分自身のことをMSBとも、「金融事業」を行っていたとも認識していなかったのだ。そのため、同氏は取引に関するレポートの提出も不必要だと考えたと主張した。
米国当局によると、後にPowers氏は違反行為を認め、35000ドル(約400万円)の罰金が科された。
米「Blockchain」のCEO兼最高法務責任者であるMarco Santori氏はこの事件について、
これは実在の法律でも、裁判所による判例でもない。しかし法律とは紙一重であり、この事件は仮想通貨界の弁護士にとっては重要な転機であるだろう。
と、本件の将来への影響を懸念するコメントをした。
19) Is this law? No. This is not a court case and there is no precedent made here. Is it close? Oh yes. For the cryptolawyers looking for guidance, this is the stuff of watershed .
— Marco Santori (@msantoriESQ) April 19, 2019
現在、米国内の仮想通貨トレーダーは、上述のような違反をしているのかどうか、そして当局に対し自己申告する必要があるのかを確かめるため、業界の弁護士への問い合わせが殺到しているに違いないと、Santori氏は予測している。
顧客のお金を守るためにMSBのライセンスを発行する州と、マネーロンダリングに対して対策を講じる連邦政府の間において、仮想通貨の統一した規制や法律が存在しないため、FinCENが下した判断は事実上取締の先例となり、今後複数の規制機関がどのようにそれぞれの定義や方針を踏まえた上で法的手段を執行するか業界にとって非常に重要な動きになる。