仮想通貨市場11の予測
米資産管理大手VanEck社は、2023年の暗号資産(仮想通貨)市場について11の予測を発表した。ビットコイン(BTC)価格回復のきっかけや、採用拡大を迎えるユースケースについて説明した。
- 23年第1四半期にビットコインは1~1.2万ドルの底値に到達する
- 23年後半にビットコインは3万ドルまで回復する
- 金融機関、100億ドル以上のオフチェーン資産をトークン化する
- ブラジル政府、国債の一部をトークン化する
- ツイッター社、決済サービスを強化する
- 分散型ステープルコインが時価総額10億ドルに達する
- 石油輸出国、政府系ファンドに仮想通貨を組み込む
- リップル社、SEC(米証券取引委員会)訴訟で敗訴する
- ゲイリー・ゲンスラー委員長、SECを退任する
- Web3ゲーマー数、トリプルA級ゲームの市場投入により劇的に増加する
- イーサリアムでステーキング解除が可能になる
ビットコイン価格の見通し
電気代の上昇とビットコイン価格の下落により、ビットコインの採掘(マイニング)事業者の多くは22年以降採算がとれない状況が持続している。VanEckは、23年に入っても当面は破産申請や合併が続くと予測する。
また、リップル社のSEC訴訟が第1四半期末に解決するも、リップル側の敗訴となる可能性があると指摘。これが下落圧力の最終波となり、ビットコインが1万ドル〜1.2万ドルの底値を付ける。この水準への到達は、2020年5月の半減期後の上昇幅の一掃を意味する。
しかし、2023年後半にはビットコインは3万ドルへ上昇するとVanEckは予測する。原動力となるのは、ウクライナ停戦、インフレ率の低下、エネルギー高騰の緩和、マネーサプライ(M2)拡大の4つ。
ウクライナ戦争の終戦によりエネルギー問題が解消され、先進国で「ビットコインのマイニングが政治的に受け入れられやすくなる可能性が高い」とVanEckは指摘。ひいてはインフレヘッジとしてのビットコイン投資論文(テーゼ)の復活につながると加えた。
また、23年にインフレ率の低下を背景にFRB(米連邦準備制度理事会)が政策金利の利上げを停止すると予測される。仮想通貨市場固有の問題がない限り、これらの影響でビットコイン価格は3万ドルに回復するとした。
実世界資産のトークン化
23年には、金融機関によるパブリックチェーンの採用が拡大。実世界資産のトークン化市場は1.3兆円(100億ドル)以上に拡大する見通しだ。
トークン化資産の取引ネットワーク企業Owneraは22年9月、シリーズAで28億円を米メガバンクのJPモルガン、不動産投資企業LRC Groupなどから調達した。
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11月には、JPモルガン・チェースとSBIデジタルアセットホールディングスが、パブリックブロックチェーンを利用した最初のDeFi(分散型金融)取引を実行したことを発表した。イーサリアムのスケーリングソリューション「ポリゴン(MATIC)」上に構築されたAave(修正版)が使用された。
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特にVanEckは、ブラジルで国債のトークン化がスタートすると予測。同国最大規模の銀行イタウ・ウニバンコは資産のトークン化プラットフォームを構築しており、顧客向けにカストディサービスを提供する予定だ。
VanEckはまた、ある石油輸出国が、ビットコインなど仮想通貨を政府系ファンドのポートフォリオに含める計画を発表すると予測した。
私たちは、複数の仮想通貨企業から、サウジアラビアの政府系ファンドが小規模ながら既にビットコインを採掘しているという話を直接聞いている。
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米ツイッター社は22年11月、送金事業を行うため、米財務省の機関「金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)」に登録申請を行った。VanEckは、同社が米ドルだけでなく、ビットコインやドージコイン(DOGE)などの仮想通貨も統合すると予測する。
SECの動向
SECは22年11月、独自トークンLBCを販売したLBRY社を相手取った、証券法違反に関する訴訟で勝訴している。VanEckはこの判例により、2020年以来継続しているリップル社の裁判に不利に働くと指摘した。
リップル社とSECは9月、略式判決の申し立てを提出。リップル裁判に関心を持つ一般弁護士のJames K.Filan氏は、2023年3月31日かそれ以前に、米連邦地方裁判所のアナリサ・トーレス判事による略式判決が下ると予測している。
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一方、SECのゲイリー・ゲンスラー委員長は、仮想通貨に対する規制アプローチに欠陥があったとして批判を集めている。米連邦下院のトム・エマー議員は12月、ツイッターで「ゲンスラー氏が旧テラ(LUNA)、セルシウス、Voyager、FTXを見過ごす原因となった、明らかに矛盾したアプローチを議会に示すことができただろう」と主張した。
VanEckもまた、「適切なガイダンスと規制があれば、2022年に仮想通貨業界の崩壊を防ぐことができたかもしれない」と指摘。
歴代のSEC委員長の平均在任期間が2.75年、中央値は2年であることから、21年4月に就任したゲンスラー氏がリップル社に対するSEC側の勝訴を以て退任すると予測している。
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ユースケースの拡大
仮想通貨固有のユースケースとして、VanEckはWeb3(分散型アプリ)ゲームと、分散型ステーブルコインに注目している。
特に、NFT(非代替性トークン)採用のPlay2Earn(プレイして稼ぐ)ゲームは、AAAレベルの高品質ゲームの参入及びヒットにより、「Web3月間総ゲーマー数は200万人から、2,000万人規模に増加する」との見解を示した。
株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングスの松田洋祐社長は1日の年頭所感で、ブロックチェーンゲームについてさらに開発を進めていくと述べていた。
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分散型ステープルコインは、特定の仮想通貨、あるいは需要と供給のバランスをとるオンチェーンアルゴリズムに基づいて、一定価格を維持するように設計されているデジタル資産のこと。
昨年のテラ(LUNA)ショック以降、アルゴリズム型ステーブルコインは規模縮小傾向にある。反対に、規制された保全機関に保管された法定通貨を担保に発行されるUSDCoin(USDC)やBUSD、テザー(USDT)などの中央集権型ステーブルコインは市場シェアを拡大させてきた。
中央集権型ステープルコインのポイントは、発行者によりユーザーの保有する資金を凍結できる機能があること。また、MakerProtocolの「ダイ(DAI)」は総発行量57億ドルと最大の分散型ステーブルコインだが、DAIの担保資産の50%ほどはUSDCであるため、規制当局の影響を間接的に受ける恐れがある。
VanEckによれば、「規制当局に押収される懸念のない、検閲に強いステーブルコインの需要」は高まり続けている。DeFiレンディング大手のAave(アーべ)が発行予定のステーブルコインGHOなどのような分散型ステーブルコインが支持を集める可能性があると同社は予測した。
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VanEckはまた、22年9月に待望のアップグレード「マージ(Merge)」を実装し、PoS(プルーフオブステーク)への移行を果たしたイーサリアムについても言及。マージ後の最初のアップグレード「Shanghai(上海)」により、ステーキングETHの引き出しが可能になることが、「新規ステーキング参加者の増加につながる」と予測した。
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