アフリカでブロックチェーンを国家戦略に
アフリカ最大の人口と経済規模を誇るナイジェリアの連邦政府が、国家戦略としてブロックチェーン技術の導入を計画していることがわかった。
現地メディア「Technology Times」によると、連邦通信デジタル経済省(FMoCDE)と国家情報技術開発庁(NITDA)は共同で、「国家ブロックチェーン採用戦略」と題した文書を作成し、政府が「デジタル経済へ移行するためのプラットフォームとしてブロックチェーン技術を活用する」ための、包括的な指針と枠組みを提示した。
ナイジェリアの課題
この文書(草案)によると、ナイジェリア政府は、主要産業である石油・ガス部門への依存度の高い経済から脱却するため、デジタル技術を活用し、経済の多様化に向けた取り組みを強化している。
効率的で安全、かつ生産性が高く実行可能な「デジタル・ナイジェリア」の創造・育成を推進するために、白羽の矢が立ったのが、ブロックチェーン技術採用という戦略だ。
同文書は、政府と民間セクターの信頼関係を促進するブロックチェーンの価値、ブロックチェーンのユースケースを評価する際の考慮事項や課題、先進国におけるブロックチェーン実装の経験から得た教訓などを紹介している。ナイジェリアにおけるブロックチェーンシステム導入の手引となることを意図しているという。
戦略の枠組み
文書では、ブロックチェーン技術採用のためのロードマップと戦略を概説するとともに、連邦政府の全省庁を通じて特に追求すべき戦略的な目標と具体的なイニシアチブを設定している。
ビジョン:デジタル経済への移行を実現させるための技術としてブロックチェーンを活用する
ミッション:行政におけるブロックチェーン技術の採用を推進し、ガバナンスにおける効率性、透明性、説明責任の向上と、デジタル経済の変革課題における雇用創出の機会を開くこと。
戦略の枠組みは、5つの目標と6つの取り組み、そして政府の政策及び規制の枠組み作りから成り立っている。
戦略目標
- 規制と監督方法の確立
- イノベーションと起業家精神の促進
- バリューチェーンにおける安全性と信頼性、透明性の向上
- 投資機会と雇用創出の促進
- ガバナンス
これらの目標を実現させるイニシアチブとして、以下の6つを挙げた。
- ナイジェリア・ブロックチェーン・コンソーシアムの設立
- 規制および法的枠組みの強化
- 国民デジタルIDの枠組みづくり
- ブロックチェーンビジネスのためのインセンティブプログラム
- ブロックチェーンに関する知識と認知度の向上を推進
- 概念実証と試験運用実施のための、公的なブロックチェーン・サンドボックスの設立
そして、次のような政府の枠組みが、ブロックチェーンの採用の推進を支える。
- 国家デジタル経済戦略と政策(2020−2030)
- 国家IT政策(2012年策定)
- 電子政府マスタープラン
- ナイジェリア・クラウドポリシー(2019年策定)
- 全国ブロードバンド計画(2020−2025)
- データ保護規則(2019年策定)
仮想通貨利用度が高いナイジェリア
ブロックチェーン分析会社Chainalysisが9月に公開した、世界154ヶ国を対象とした仮想通貨利用状況レポートによると、ナイジェリアは、6位の米国、7位の南アフリカに次いで8位にランクインした。(1位ウクライナ、2位ロシア、3位ベネズエラ)
大手取引所バイナンスが、最初の法定通貨ペアとして対応したのは、ナイジェリア・ナイラであり、主にアフリカ市場をターゲットにしたソーシャルペイメントアプリ「Bundle」でも利用できる。P2Pの仮想通貨取引もアフリカ諸国の中で最も盛んだ。
規制の面では、長らく曖昧な状況が続いていたが、先月、証券取引委員会(SEC)が、全てのデジタル資産とトークンの提供を有価証券として扱うと発表。当局による明確な規制の枠組みづくりに進展が見られた。
前述のブロックチェーンの普及を目指す戦略文書でも、仮想通貨に対する法的枠組みの強化が挙げられており、今後、ナイジェリアでは規制整備の機運が高まると思われる。
参考:National Blockchain Adoption Strategy