仮想通貨企業に追加の法的遵守プロセスを求める
決済大手のVisaとMastercardが、暗号資産(仮想通貨)企業に対して、より厳しい法的遵守プロセスを適用していることが分かった。他のカード発行会社よりも厳しいチェックが行われる。
両社と提携してカード発行を行いたい仮想通貨企業は、その顧客へのカード提供を承認される前に、不正やマネーロンダリングの対策を詳細に説明する必要があるとした。
Visaの仮想通貨部門責任者Cuy Sheffield氏は、この方針について「一般的な発行者に対して行うものよりも、強化されたデューデリジェンスプロセスである」と説明した。
決済大手二社は、仮想通貨分野へと事業開拓を開始したところだが、慎重に法的遵守を実施しながら進める姿勢であることが窺える。
仮想通貨分野に本格参入を開始
Mastercardは7月に初めて、プリンシパルメンバーシップライセンスをロンドンを拠点とする仮想通貨企業でウォレットプロバイダーのWirexに付与した。Mastercardはこの際、仮想通貨分野への同社の取り組み拡大により、「パートナーは、より簡単かつ迅速に法的に準拠した安全なカードを市場に投入できるようになる」と述べていた。
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これに続いて11月にVisaは、フィンテック企業がVisaの基盤を活かして迅速に事業を立ち上げることを支援する「ファストトラックプログラム」の拡張を発表。より幅広いフィンテック企業が参加できるようになり、仮想通貨決済サービスCrypto.comと大手オンライン取引プラットフォームeToroが、パートナーとして承認された。
Visaカードを発行する仮想通貨企業は、ウォレットプロバイダーZenGo、大手仮想通貨取引所コインベース、P2P取引所Paxfulなど他にもすでに様々登場している。
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Visaは個別取引の合法性もチェック
一方でカードユーザーがネットワークで仮想通貨建て決済を行うと、それは法定通貨へと変換されることになり、仮想通貨企業は保有する仮想通貨が信頼できるソースから届いたものであることを証明する必要がある。
最近Mastercardと提携してデビットカードを発行した仮想通貨取引プラットフォームZigluの創業者Mark Hipperson氏によると、顧客身元確認、マネーロンダリングや不正防止、トランザクションの監視などについての体制が整っているか綿密にチェックされるという。
また、VisaとMastercardのどちらとも作業した経験を持つWirexのCEO、PavelMatveev氏は、VisaはChainalysisやEllipticなどの分析ツールを使用しており、パートナーの実施するセキュリティ対策だけではなく、個々の取引の合法性についても照会してくると説明した。
「デジタル通貨はより普及する」
米国メディアCNBCが11月10日に開催したイベント「CNBC Evolve Summit」の席で、VisaのCEO、Alfred Kelly氏は同社の仮想通貨分野での展望を語っている。
「仮想通貨は世界の決済市場において成長中の部分で、それは現在非常に初期の段階にある」「Visaは仮想通貨へ非常に高い関心を抱いている」と述べた。
また、すぐに実現することではないものの、デジタル通貨は最終的にVisaプラットフォームでより主流なものとして使われるようになるだろうとした。特にナイジェリアのように、銀行など従来型の金融機関にアクセスできない人々が多い新興国の市場で普及すると見ている。