CoinPostで今最も読まれています

ニューヨーク連銀とカリフォルニア大の共同論文「CBDCは民間仮想通貨よりプライバシー面で有益」

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

CBDCは消費者の情報保護に有益

カリフォルニア大学サンタバーバラ校(USCB)の経済学教授と、ニューヨーク連邦準備銀行のエコノミストが、中銀発行デジタル通貨(CBDC)についての論文を執筆。民間セクターの暗号資産(仮想通貨)よりも、プライバシーの点でユーザーに有益だと評価した。

論文タイトルは「Monetizing Privacy(プライバシーの収益化)」で、USCBのRod Garratt教授とニューヨーク連銀のMichael Lee氏により共同執筆されたもの。

両者は、CBDCが、消費者に低コストでプライバシーを保護する電子決済手段を提供すると論じている。

大手ハイテク企業が提案するデジタル通貨は、プライバシー保護とは根本的に対立しているという。決済取引データを収集し、そのデータをマーケティングや販売などに用いることで通貨発行元企業は収益化できるものの、ユーザーにとっては個人情報が第三者に利用されることにも繋がると指摘。

そして、ハイテク企業が収集するデータが多ければ多いほど「データ独占」に近い状態になってしまうとした。

そうした場合データを独占する企業が、取得したユーザー情報を解析して、競合他社の製品よりも優れた製品を作成できることになる。この品質のギャップにより、企業は価格をより自由に設定できるようになり、結果として消費者は彼らのデータが提供されたことにより生まれた利益のわずかなシェアしか得られないという。

両氏の論文において「大手ハイテク企業のデジタル通貨」とはFacebook主導のステーブルコイン「リブラ」などが念頭に置かれていると考えられる。リブラについては、各国政府機関などから、「金融主権を脅かす」という懸念と共に、ユーザーのプライバシー保護の点からも妥当性が問われていた。

またGarratt氏とLee氏は、ビットコインのような仮想通貨は、「大手ハイテクのデジタル通貨」に比べれば、ある程度ユーザープライバシーを保護する可能性があるものの、取引手数料の変動や、エネルギーコストという問題も抱えていると述べる。

CBDC設計の際は、プライバシー機能が重要

こうした民間仮想通貨に対してGarratt氏とLee氏はCBDCについて、プライバシーを保護しつつ、消費者の購入コストも削減できる可能性があるとしている。そしてCBDCが設計される際には、「消費者が個人データを公開せずに購入取引を行えるようにすること」が重視されなければいけないと強調した。

またCBDCが導入されれば民間のデータ独占がなくなるわけではないものの、少なくともCBDCは民間デジタル通貨と競合することで、民間通貨を使用する際に消費者が支払うコストを下げる方向にも働くだろうと予測している。

つまり、民間デジタル通貨の発行体は、消費者がCBDCよりもその通貨を使うインセンティブを与えるために価格を下げるよう促される。そこで最終的にある消費者が、CBDCよりも民間通貨の使用を選択した場合でも、プライバシーデータを提供することにより生み出される収益がより還元されることになるという。

Garratt氏とLee氏は、論文の要約記事の最後で、CBDC発行の上では、プライバシー保護機能の他、信頼性が高く堅牢なシステムが必要で、さらにユーザープライバシー保護に重きをおくのであれば、規制当局は、現在のマネーロンダリング対策の適用方法についても再考しなければならないと結論した。

欧州中央銀行(ECB)のデジタル・ユーロ構想を始め、主要な政府もデジタル通貨発行の検討へと本腰を入れ始めているが、プライバシーは課題の一つとして持ち出されることが多い。

「デジタル・ドル」の発行については慎重な姿勢を見せている米国では、連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が「ユーザーのプライバシー保護と犯罪対策のバランス」もリスクの一つとして挙げた。

関連: デジタルドルは慎重に──パウエル議長が語る「米国とCBDC(中銀デジタル通貨)」

また、ボストン連邦準備銀行責任者も、CBDC構築の上では、設計の関係で最初からプライバシー保護機能を備えておく必要があり、後付けではうまく機能しないと指摘している。

関連: デジタル通貨に「プライバシーが大前提」=米連銀責任者

CoinPost App DL
注目・速報 相場分析 動画解説 新着一覧
07/27 土曜日
09:45
3兆円運用の米ミシガン州の退職年金、10億円以上のビットコイン現物ETF保有
仮想通貨ビットコインの現物ETFに対する米国の年金基金からの需要は増加傾向にある。運用資産総額3兆円に相当するミシガン州の退職年金はウィスコンシン州とニュージャージー州のジャージー市の年金基金に続き、ビットコインETFの株を保有していることを報告した。
08:10
マスク氏のX(旧ツイッター)、ビットコインなどの仮想通貨絵文字表示を削除か
イーロン・マスク氏がオーナーのX(旧ツイッター)は、ビットコインなどの仮想通貨絵文字表示を削除した。ドージコイン擁護のためか。
07:35
BitwiseのETH現物ETFの横断幕、NYSEに掲揚
仮想通貨運用企業Bitwiseのイーサリアム現物ETFの横断幕が、ニューヨーク証券取引所に掲げられた。同社は、取引終了のベルを鳴らすことも報告している。
07:05
野村傘下のレーザーデジタル、利回り提供のイーサリアムファンド販売予定か
野村ホールディングスの仮想通貨資産子会社であるLaser Digital(レーザーデジタル)は、イーサリアム現物ETFの代替商品の導入を計画しているようだ。
06:40
米SEC、グレースケールのミニ版ビットコインETFを承認
仮想通貨投資企業グレースケールが提供するGBTCは手数料(1.5%)が最も高く資金流出は続いていたが、新商品を導入し0.15%という業界最安の手数料設定で競争力を高める狙いだ。
06:20
ビットコイン価格が21年後に最大で75億円に到達か、マイケル・セイラー氏の強気予想
ビットコインを最も保有する米上場企業マイクロストラテジーのマイケル・セイラー氏はカンファレンス「ビットコイン2024」で、BTCの今後の強気予想のプレゼンテーションを行った。
07/26 金曜日
17:10
「米大統領選で価格変動 トランプやハリス由来のミームコインの買い方
トランプトークンの概要 ドナルド・トランプ前米大統領とその「Make America Great Again」(アメリカを再び偉大に)というスローガンからインスピレーションを得…
17:10
ヤマハ発動機が初のVTuberコラボNFTを発行、Yamaha E-Ride Baseを訪れて進化可能
ヤマハ発動機が初のNFTデジタルステッカーを発行。横浜のYamaha E-Ride Baseで進化するダイナミックNFTを体験し、限定グッズをゲットできる。
15:13
ビットフライヤーがFTX Japan買収完了、カストディ事業展開へ
株式会社bitFlyer HoldingsはFTX Japanの株式100%を取得し、完全子会社化を発表。8月26日までに社名を変更し、クリプトカストディ事業を展開予定。法制度整備後の暗号資産現物ETF関連サービス提供も視野に入れている。
14:43
Neo Xメインネットが正式稼働 EVM互換でネオのエコシステムを拡張
Neoは高性能EVMベースのサイドチェーン「Neo X」のメインネット正式稼働を発表。クロスチェーンブリッジで流動性と互換性が向上し、エコシステムの可能性が広がる。
14:15
カマラ・ハリス氏のミームコインが過去最高値を記録、大統領候補指名の期待受け
PolitiFiと呼ばれる政治パロディのミームコインが、仮想通貨領域で独自のジャンルを形成しており、カマラ・ハリス副大統領のパロディコイン「 Kamala Horris(KAMA)」が急騰し話題となっている。
12:55
アルトコインETFの未来、ブラックロックが語る現実と可能性
ブラックロックのデジタル資産責任者は、イーサリアム現物ETFが承認されていても他のアルトコインETF誕生には困難があると話した。
12:14
仮想通貨相場反発、ビットコイン・カンファレンスのトランプ登壇に関心集まる
昨日までの大幅下落とは打って変わり暗号資産(仮想通貨)相場は反発した。強気シグナルのハッシュリボンが点灯しているほか、今週末にはビットコインカンファレンスに米国のトランプ前大統領が登壇予定であり、投資家の関心が集まる。
11:00
トランプ前大統領の陣営、4〜6月期で仮想通貨で6億円の寄付金調達
トランプ前大統領は、ビットコインなど仮想通貨で6億円以上の選挙資金を調達。「ビットコイン2024」でもさらに資金を集める予定だ。
10:30
BTCが290万ドルに到達するシナリオ、VanEckが公開
仮想通貨ビットコインが2050年までに290万ドルに到達するシナリオをVanEckのアナリストが公開。このシナリオを実現するための条件を説明している。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア