フィデリティがSECにアピール
米金融最大手Fidelity Investments(以下、フィデリティ)は8日、ビットコインETFを承認するよう、米証券取引委員会(SEC)と話し合いの場を持ったことが分かった。CoinDeskが報じた。
トム・ジェソップ社長をはじめとするフィデリティの幹部が、オンラインミーティングで、SECのイノベーション・フィンテック部門、トレーディング・市場部門、投資管理部門などの職員に、プレゼンテーションを行った形だ。
ビットコインETFとは
ビットコインを投資対象に含んだ上場投資信託(Exchange Traded Fund)のこと。投資信託とは、投資家から集めたお金を1つの資金としてまとめ、株式や債券などに投資して運用される金融商品。運用成果が投資家それぞれの投資額に応じて分配される仕組みになっている。投資信託の中でもETFは証券取引所に上場しているため、株式と同様に売買ができる。
▶️仮想通貨用語集
投資家の間で高まる関心
フィデリティは、現在ビットコイン(BTC)が個人投資家に広く採用されており、機関投資家もビットコインへのエクスポージャー(ポートフォリオの一部が当該資産の価格変動などの影響を受けること)を得ることに関心を高めていることをアピールした。
ケンブリッジ大学の調査を引用し、世界で暗号資産(仮想通貨)のアカウントを所有する者は、2018年の3,500万人から、2020年には1億人を超えるまでに成長していることを説明。これは、1人で複数の口座を持つ場合を除外したユニーク・アカウントの数である。
関連:仮想通貨ユーザー、世界で1億人突破=ケンブリッジ大学調査
また、フィデリティによると、米国の機関投資家のうち33%がデジタル資産に投資しており、方法としては現物よりも投資商品の購入が好まれている。69%が将来、デジタル資産を投資ポートフォリオの一部に組み入れるべきだとしたデータも挙げた。
さらに、フィデリティは、米大手デリバティブ取引所CME(シカゴマーカンタイル取引所)が提供するビットコイン先物の四半期別取引高が、2019年から2021年にかけて20倍以上に増加、2021年第2四半期で1,190億ドル(約13兆円)に達したことも指摘した。
「ビットコイン市場は成熟している」
フィデリティは、ビットコインの需要に応える形で、カストディ、取引所、指数、資産管理など様々な形態のサービスが発展していることにも触れた。カナダ、ドイツ、スイス、スウェーデンなどの規制当局は、すでにビットコインのETP(上場取引型金融商品)を認めている。
仮想通貨市場は充分に発達しており、ETFを含め、ビットコインETPを認める機は熟していると訴える格好だ。
規制されたビットコインETP商品が投資家にもたらす恩恵としては「ETP商品の評価や価格の透明性」「ETP提供企業が、ビットコインカストディアンの選択と監督を行える」ことを挙げた。
2021年中に承認の可能性は?
フィデリティは3月、伝統的な金融企業としては初めて、ビットコインETFの目論見書をSECに提出している。
米国ではまだビットコインETFが承認された事例はないが、8月にブルームバーグの上場投資信託のシニアアナリストは「早ければ10月末までにビットコインETFがローンチされる可能性もある」との独自見解を発表した。
SECのゲンスラー委員長が、8月に「CMEで取引されているビットコイン先物に限定したETF」であれば好意的に審査される可能性もあると示唆していたことも背景にある。
関連:米ビットコインETFが年内実現の可能性 ブルームバーグアナリストが分析