ビットコイン相場と金融マーケット
週明け27日の暗号資産(仮想通貨)市場。 ビットコイン価格は、前日比+2.34%の481万円(44,150ドル)と反発した。
中国人民銀行(中央銀行)、及び最高人民法院など9つの機関の共同声明は24日、暗号資産(仮想通貨)取引と関連サービス、採掘(マイニング)事業を全面禁止すると発表。この影響で市場が動揺し、BTC価格は一時5,000ドルほど急落した。
しかし、直近の度重なる暴落で、デリバティブ市場のポジション整理が進んでいたこともあり、4万ドルのサポートライン(下値支持線)で下げ止まってからは、強めのショートカバーを伴い急反発している。
仮想通貨に否定的な中国はこれまでも規制は度々行ってきたが、今年になってからの取り締まりは、中国政府で最も権力を持つ最高機関の一つである「国務院金融安定発展委員会(金融委員会)」主体で動くなど、対象範囲の規模や本気度が異なるとされる。「仮想通貨関連サービスは違法」であるとの立場を明確にし、刑事責任を追求する可能性を示唆するなど圧力を強める。
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今年5月には、ビットコインなど仮想通貨マイナー(採掘事業者)への取り締まりを強化。それまで世界最大のシェアを占めていた同国内のマイニング事業者の多くは、事業撤退・縮小を余儀なくされ、米国やカザフスタンなど新天地への海外移転を進めている。
中国政府は、”国家の安全と金融の安定性”を大義名分に掲げるが、その背景には、仮想通貨を介した資金の国外流出懸念や「共同富裕」の政策に相反すること、中国人民銀行が発行する中央銀行デジタル通貨である「デジタル人民元(e-CNY)」の推進など複数要因があるとみられる。
特にデジタル人民元については、2022年2月に開催予定の「北京五輪」でお披露目することを目指し、驚異的な速度で発行準備を進める国家戦略の一つとされる。
各国が研究・開発を進める中央銀行デジタル通貨(CBDC)では、通貨の管理や決済等においてコスト削減や効率性向上が期待できる一方で、取引・送金履歴が記録されることによる個人情報保護、セキュリティ対策、金融システムへの影響などリスク面の不安材料も少なくない。
世界の基軸通貨の「米ドル」で覇権を握る米国や伝統金融システムへの影響懸念で日本が及び腰にある反面、米ドル依存に風穴を開けようと画策する中国は、他国に先駆け積極的な実証実験を繰り返してきた。
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金融・経済・軍事で米中対立が先鋭化するなか、米議員は今年7月、次のように警鐘を鳴らした。
中央銀行デジタル通貨(CBDC)の規制や流通をめぐって、今後も各国で主導権を奪い合い、ある種の代理通貨戦争が激化することも予想される。
中国国内の影響と資金移動
そのような状況にあるなか、渦中の中国大手取引所であるHuobiGlobalは、新規のユーザー登録一時停止を余儀なくされた。Huobiは、同国内の法に準拠する形で中国本土のユーザーアカウントについては、今年末までに全ての対象アカウントを段階的に停止するとの声明を出した。
事態を重くみた投資家は、Huobi Token(HT)から資金を避難させており、HTは前日比-15.23%と大きく後退した。OKExのOKBトークンも売られている。
Huobi利用者によれば、登録の際の「国/地域」の選択から「中国本土」の選択肢が削除された一方で、現時点では「台湾」と「香港」は選択できるという。最大手取引所のバイナンスのスポークスマンは対応について、「中国本土のIPをブロックしている」と強調している。
対して、イーサリアムチェーン基盤最大手の分散型取引所(DEX)であるUniSwapのネイティブトークンのUNIが、前日比+36.9%と高騰。同系統のDEXのSushiSwapのSUSHIトークンも前日比+27.5%と大きく買われた。
中国が規制強化を打ち出して以来の数日間は、DeFi(分散型金融)やNFT(非代替性資産)市場で最も普及するデジタルウォレットの「MetaMask」や分散型デリバティブプロトコル「dYdX」のユーザー数急増が観測された。暗号資産(仮想通貨)市場において、特に”非中央集権性”の強いDeFi市場に注目が集まり、保有資産の分散、及びリスクヘッジを兼ねた中国投資家の資金移動を示唆している。
このようなDeFi市場への資金流入に伴い、ビットコインの前日比+4.54%に対し、イーサリアム(ETH)は前日比+9.44%となるなど、2倍以上の反発となった。
オンチェーンデータ分析
なお、データ分析企業Santimentによれば、100〜10,000BTC保有する大口投資家(クジラ)のアドレスは、急落局面にて、26日までの24時間で33.2億ドル相当の80,000BTC以上を買い増した。
中国の不動産開発大手「恒大グループ」のデフォルト危機を含め、しばらく相場の不透明感が高まりそうな局面であるが、中国当局が今回最も厳しいカードを切ってきたことから、チャイナリスクの一環として仮想通貨に関する(目先)悪材料は出尽くしたとみる向きもある。関係各所の売り圧力など影響の範囲について、当面注視されることになりそうだ。
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