はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習 WebX
CoinPostで今最も読まれています

米国初の「ビットコイン先物ETF」上場で今後の影響は|先物の元プロが解説 寄稿:元プロップトレーダー「つきらいん」

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

ビットコイン先物、今後の影響は

米国にBTCのETFが上場したので、今後予想される市場に与える影響などについて考えてみたいと思います。

BTC価格に対する影響

短期的には大型イベント後の材料出尽くし売り懸念などが取り沙汰されておりますが、中長期的には価格の下支え要因になると思います。そう考える理由には、ETF経由の資金流入とSEC承認のアナウンスメント効果が挙げられます。

過去、CMEのBTC先物上場やコインベース上場を節目として大きな下落を強いられた記憶から、今回のETF上場後も下落を見込む向きが一定数おり、既にETF上場を見越した先回り買いの資金も相当数あったと思います。それを考慮するとETF上場直後は相応の売り需要の発生が予想されます。

ただ、単純に思惑だけを誘うイベント材料でもなければ株式市場のインデックスイベントのような単発の資金フローイベントではなく、ETF上場を契機とした継続的な資金流入の可能性を考えると、一般に言われる「知ったら終い」にはならないと考えます。

たしかに、米国外ではBTC連動のETFが既にいくつか上場されていますし、機関投資家向けの投資信託なども暗号資産投資の受け皿として資金流入が既にあります。 しかし、米国市場にETFという形で上場したことで、これまで以上に広範囲な大衆向けに投資機会が提供されたことで、新たな資金流入が見込めると思います。なにより、米国証券取引委員会(SEC)が暗号資産の大衆向け投資商品を正式に承認したというアナウンスメント効果は、これまで躊躇していた他国の規制当局や投資家層に与える影響は大きいのではないでしょうか。今後、米国に限らず、BTCやETHを投資対象とした大衆向け投資商品の組成が増加していく可能性は高いと思います。

GOLD・ETFの例

GOLDの場合、世界で初めてのETFは2003年3月にオーストラリアに上場しました。米国では、現在世界最大のGOLDのETFであるGLDが上場されたのは2004年11月です。GLDは着実に資金流入の受け皿となりGOLDの保有高を増加させ価格の下支え要因となりました。結果、2004年に400ドル前後だったGOLD価格は投資需要の増加を伴い直近では1800ドルまで値位置を切り上げています。同じ投資性のある貴金属であり、GOLD以上に希少性のあるプラチナ(プラチナの地上在庫はGOLDの20分の1)の価格が2004年に800ドルとGOLDの2倍だったものが、直近は1000ドル程度であることと比較すると、現在のGOLDの価格がそれなりに投資需要で押し上げられていることが伺えます。

出典:SPDR Gold Shares(SPDRゴールドトラストの残高推移)

そのほか

BTCの価格水準以外への影響として想定されるのは、先物イールド(価格差)の変化と他金融資産との相関があります。

先物イールドの変化については、コンタンゴ(期近安期先高)が恒常的になることが考えられます。コモディティ(実物資産)の現物と先物の価格差、もしくは先物期近と期先の価格差は、基本的に現物保有コストやコンビニエンスイールドと言われる現物保有メリット、米ドル金利などから説明されますが、裁定取引(アービトラージ)が働かない、もしくは働きにくい環境下では市場の需給によって大きく歪むことがあります。

寄稿者より提供

米国で承認されたBTCのETFは先物ETFなので、BTCとETFに連動しつづけるために定期的もしくは不定期に先物市場でロールオーバーを行う必要があります。具体的には決済期日の迫った期近の買いポジションを決済し、より決済期日の遠い期先に新たに買いポジションを建てるという行為です。

今後、資金流入によりETFの純資産残高が大きくなっていくにつれて、このロールオーバー圧力は強くなります。市場にはロールオーバーとは反対に取引を行う裁定業者などが存在しているため極端なことにはなりにくいと思いますが、裁定業者が参加するには価格の歪みが十分にある必要があるので、ETFによるロールオーバーは期近を割安で売り期先を割高で買うというのが恒常的になると思います。結果、長期的なリターンでみると現物とETFで比較すると現物のリターンが上回ると思います。それでもETFを選好するメリットとしては、株式などと同じ口座で取引ができたり、損益通算や税率などが挙げられます。

ETF上場により、株式などと同じ口座内でポートフォリオの一つとしてBTCやETHのポジションが管理されていくことになると、株価指数などの他リスク資産との相関は高まっていくことが考えられます。過去データで計算して、ポートフォリオのリスク分散効果があると考えてBTCを持つ人が増えるにつれて、当初考えていたリスク分散効果は薄れていく可能性は十分にあります。例えば、リスクイベントが発生した時、ポートフォリオとして運用されていた株式と同時にBTCも売却されるということが将来起きることなどが予想されます。

今後は、これまで以上に、暗号資産以外のリスク資産動向にも注目していく必要があると共に、金融市場全体のリスク選好に一時的に左右された結果、意外な投資機会が出てくることもあるかもしれません。

関連:米初のビットコイン先物ETFが取引開始、初日の出来高1000億円突破

寄稿者:つきらいん
先物(金、原油)の元プロップトレーダー。現在は日本の限界集落に居住し、年間330日農業に従事する専業農家。 現在のリサーチテーマは「ブロックチェーン技術と暗号通貨が、既存の社会経済の仕組みと金融市場をどのように変容させていくか」。趣味はウクレレとリサーチ。

過去に掲載した寄稿記事一覧はこちら

CoinPost App DL
厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
12/31 水曜日
14:00
ブラックロックの2026年投資展望 AI投資が米株式市場を牽引、ステーブルコインは金融の架け橋に
ブラックロックの2026年投資展望レポートでは、AI関連投資が米国株式市場を牽引し、生産性向上で171兆円の経済効果が見込まれると分析した。また、38兆円規模に成長したステーブルコイン市場について決済システムへの統合が進み、トークン化された金融システムへの第一歩となると見ている。
12:00
2026年末のビットコイン価格はどうなる?有識者7人に予想を聞いた
ビットコイン2026年末価格予想を暗号資産(仮想通貨)業界の著名人7人が回答した。平均は12.3万ドルで約40%の上昇見込み。FRB政策、機関投資家参入、半減期アノマリー崩壊など注目ポイントを分析。強気派と慎重派の見解を比較し、相場の行方を占う。
11:00
仮想通貨TOP20と国内発トークン、25年の騰落率は
ドナルド・トランプ氏の米大統領就任やビットコインの最高値更新があった2025年。本記事では同年の時価総額上位銘柄と国内発プロジェクトのトークンの年間騰落率をまとめている。
10:00
激動の2025年 仮想通貨の時価総額トップ20、過去8年間における順位変動は
2025年はビットコインが12万ドルを突破した。仮想通貨に肯定的な米トランプ政権が始動した1年を終えるにあたり過去8年間において仮想通貨の時価総額の順位がどのように変動してきたかを振り返る。
12/30 火曜日
14:00
米カリフォルニア州の超富裕層への「5%資産税」に業界猛反発 仮想通貨起業家流出の懸念も
米カリフォルニア州で純資産10億ドル超の富裕層に5%課税する提案が行われ、Kraken創業者やBitwise CEOをはじめとする仮想通貨・テック業界リーダーが強く反発し、警告を発した。株式、不動産、仮想通貨などを対象とし、未実現の含み益にも課税される点が問題視されている。
14:00
コインベース・ベンチャーズが注目する2026年の仮想通貨4大トレンドとは
米最大手コインベースの投資部門コインベース・ベンチャーズが2026年に積極投資する4分野を発表した。RWA永久先物、専門取引所、次世代DeFi、AIとロボット技術など、次のブレイクアウトが期待される仮想通貨領域について紹介。
12:32
ビットマイン、イーサリアム買い増し 独自のステーキング・インフラも準備中 
ビットマインの仮想通貨イーサリアム保有量が411万枚に到達した。年末の価格下落を好機と捉え買い増しを行っている。2026年には独自ステーキング基盤も公開予定だ。
10:00
2025年の仮想通貨市場を重要ニュースから振り返る
2025年は仮想通貨を支持するドナルド・トランプ氏が米大統領に就任し、相場は米国の動向から大きな影響を受けた。本記事では、ビットコインの最高値更新など1年間の重要ニュースを振り返る。
09:50
仮想通貨投資商品、先週700億円超の純流出 XRP・ソラナは好調維持=CoinShares
仮想通貨投資商品から先週700億円超が流出した。CoinSharesは投資家心理がまだ完全に回復していないと分析した。一方で資産別ではXRPとソラナへの流入は好調だった。
12/29 月曜日
14:23
ビットコインは持続的上昇局面に?4年サイクル論争と機関投資家の影響力
Bitwise CIOマット・ホーガン氏が「ビットコインの4年サイクルは終焉し、持続的上昇局面に入った」と主張した。ハーバード大学など大手機関がBTCを保有し、個人投資家から機関への資産移転が進行。ボラティリティ低下の理由と、「階段を上りエレベーターで降りる」値動きパターンを専門家2人が詳しく解説。
13:35
AIや仮想通貨のショッピング活用進む Z世代が牽引か=Visaレポート
決済大手ビザの調査で、ショッピングにAIツールや仮想通貨を利用する消費者が増加していることが判明。特にZ世代が牽引していた。ステーブルコイン送金への関心も高まっている。
09:44
スベルバンク銀、ロシア初の仮想通貨担保ローン発行
ロシア最大の銀行スベルバンクが同国初の仮想通貨担保ローンを発行した。ビットコインマイニング企業に融資し、デジタル資産担保の仕組みを検証している。
12/28 日曜日
14:00
今週の主要仮想通貨材料まとめ、MTGOXハッキング容疑者関連のBTC送金やearnXRPローンチなど
前週比で振り返る仮想通貨市場の最新動向。ビットコインやイーサリアム、XRP、ソラナといった主要銘柄の騰落率や注目材料を一挙紹介。市場トレンドと関連ニュースを詳しく解説する。
11:30
ビットコイン年末相場、値頃感から買い戻し期待も|bitbankアナリスト寄稿
今週のビットコインは方向感に欠け1400万円周辺で推移。26日のオプションカット通過後の動向が注目される。底入れには12月高値9.4万ドルの回復が条件だが、割安感から買い戻されやすいとbitbankアナリストが分析。
11:00
週刊仮想通貨ニュース|Bybitの日本居住者向けサービス終了発表に高い関心
今週は、大手仮想通貨取引所Bybitの日本居住者向けサービス終了の発表、仮想通貨市場の調整局面、日銀の植田和男総裁の講演に関する記事が関心を集めた。
通貨データ
グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧