仮想通貨法案への懸念
暗号資産(仮想通貨)に関する法律が未整備のインドで、ようやく仮想通貨法案の審議が開始しそうだ。議会公報によると、「仮想通貨と公式デジタル通貨規制法案2021」が29日に召集された今期のインド議会に提出される予定だった。
しかし、23日に公開された法案の概要は「全ての民間仮想通貨の禁止」を示唆していたため、インドの取引所WazirXではビットコインが13%以上下落、テザー(USDT)も急落した。
仮想通貨業界や市場で混乱が生じたため、インドのNirmala Sitharaman財務大臣はいくつかの点について議会の質疑応答で明らかにした。
- 仮想通貨法案は2019年の草案やその他の提言に基づいている
- インド政府はビットコインを通貨として認める予定はない
- 政府はビットコインの取引データを収集していない
- 仮想通貨の広告は注意深く監視するが、現状では広告禁止までは検討していない
しかし、それ以上の詳細についてSitharaman大臣は、間も無く提出される法案を待つようにと回答した。
なお政府公報に記載された法案の概略は以下の通り。
この法案は、インド準備銀行が発行する公式のデジタル通貨の創設を促進する枠組みを作ることを目的としている。また、インドにおけるすべての民間暗号通貨を禁止を求めるものであるが、仮想通貨の基礎となる技術とその使用を促進するために、一定の例外を認める。
仮想通貨禁止は間違い?
一方、インドの元財務長官で2019年に同法案を起草したSubhash Garg氏は、民間仮想通貨の禁止は間違いだったとの考えを明らかにした。
現地のオンラインニュース「News18」のインタビューに答えたGarg氏は、まだ仮想通貨法案は閣議決定されていないため、実際に4~5週間という会期中に議会に提出されるかどうか「疑わしい」と切り出した。
仮想通貨は「人類にとって有益なツール」だが、通貨として認め、通貨の発行権を民間に許可すると、さまざまな問題が噴出するだろうと同氏は危惧している。そのため、インドでは民間企業による通貨発行を認めることはできないと主張。2019年の法案では、通貨の特性について焦点が当てられ、インド準備銀行(RBI)が発行するデジタル通貨(CBDC)の導入を提案することにつながったと述べた。
しかし、CBDCの導入に関しても非常に複雑な問題だとGarg氏は言う。巨大な人口を抱えるインドの「全国民がスマートフォンを持っているわけではない」中、どのようにしてデジタルウォレットを作成するのかと指摘。CBDC導入前に解決する問題は多く、議論を重ねる必要があると述べた。
仮想通貨の禁止に関しては、おそらく間違いだったとGarg氏は述べ、法案がまだ準備できていない中、そのような提案をすることは誤解を招く行為だとした。理想としては、政府がステークホールダーや仮想通貨投資家と議論をした上で、法案を作成することだと付け加えた。
さらに同氏は、仮想通貨は非常に大きな可能性を秘めた新しい技術であり、「誰も完全には理解していない」ため、何がインドにとって最善なのか広く議論を行うことが必要だと主張した。
資産として分類できるか
Garg氏は仮想通貨を資産として分類し、商品のように課税するというアプローチについては、「大きな間違い」だと次のように述べている。
仮想通貨は、暗号化された資産であり、暗号化されたサービスであり、経済全体である。。。このようなものを資産として扱うのは、あまりにも単純化しすぎている。
このような仮想通貨の多面性も、インドで仮想通貨法案の提案が困難を極める原因の一つとなっているのかもしれない。