メタバース関連の商標申請、却下相次ぐ
中国の知的財産当局は、多くのメタバース関連商標申請を却下している。サウスチャイナモーニングポスト(SCMP)などが報道した。
中国語でメタバースを示す「元宇宙(yuan yuzhou)」という言葉を含む様々な商標出願が、国家知的財産局により登録を却下されている。
却下されたものには、大手企業の申請も含まれていた。例えば、ビデオゲーム大手NetEase、ストリーミングビデオプロバイダーiQiyi、ソーシャルコマースプラットフォームXiaohongshuも登録を承認されなかった。
一方、アリババグループ、テンセントなどの申請は、現在まだ審査中であると伝えられている。
中国では、最近メタバース事業への商標出願が殺到しており、これを受けて当局が審査を厳しくしているという見方も示されているところだ。
SCMPは関係筋の話として「中国政府は、既存の商標を利用しようとする不正な申請を防いだり、消費者を保護するために、戦略的な審査方針を取っている」と報じた。
また、現在、メタバースという概念は、過剰に高く評価されている恐れもあることから、「中国政府は経済効果とのバランスを取ろうとしている」という意見もある。
テクノロジーリサーチ企業PatSnapのChen Gaojie氏は、中国政府は企業が「本物の技術力をもってメタバース分野に参入することを奨励しているのだろう」との見解を示した。
メタバースとは
インターネット上に構築された、多人数参加型の3次元仮想現実世界のこと。アバターを使い、様々な楽しみ方ができる。例えば、『The Sandbox』というゲーム内のメタバースでは、ボクセルアート制作ツールやゲーム制作ツールが提供されており、ユーザーはそのなかで自作のゲームや施設を作ることができる。
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メタバースの業界団体設立
中国でも、メタバースへの関心は高まっている。
21年11月、中国ではメタバースに関する初の業界団体として「元宇宙産業委員会」が立ち上げられた。中国移動通信聯合会(CMCA)の傘下に設立された格好だ。CMCAには、チャイナ・テレコム、チャイナ・モバイルなどの大手モバイル通信企業や、ファーウェイなど大手通信機器プロバイダーなどが参加している。
「元宇宙産業委員会」は、「メタバース産業の研究、メタバース概念の普及、業界内の協力推進」を行っていくという。
まだ始動したばかりで、各企業の具体的な動きは乏しいが、一例として、チャイナ・モバイルのデジタルコンテンツ子会社Miguは21年11月、メタバース事業のロードマップを発表した。
超高精細映像、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)など、様々なソフトウェア・ハードウェア環境を構築して、人々が交流し自己実現できるような、新しい方法を開拓していくとしている。
Miguは、AR企業のNrealと提携し、軽くて薄い消費者向けARメガネも開発した。
メタバースは、NFT(非代替性トークン)など暗号資産(仮想通貨)関連セクターとも親和性があると言われている。しかし、中国で仮想通貨は取り締まりを受けているため、中国のメタバースは、仮想通貨が承認されている国とは異なる面を持つことになりそうだ。
中国ではNFTプラットフォームも立ち上げられているところだが、仮想通貨ではなく人民元で決済する仕組みになっている。
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