ヴィタリック氏が仮想通貨業界に抱く懸念
暗号資産(仮想通貨)イーサリアム(ETH)の共同創設者ヴィタリック・ブテリン氏は、18日の米TIME誌で表紙を飾り、仮想通貨の開発や今後について話した。その中で、現在危惧していることについても明かしている。
Ethereum has changed the world–but not necessarily in ways that its creator, @VitalikButerin, agrees with. My TIME cover story on one of the most fascinating — and arguably important — people on earth: https://t.co/ro0TQvDmLn pic.twitter.com/e1iWjurIDI
— Andrew Chow (@andrewrchow) March 18, 2022
社会的意義を重視
ヴィタリック氏はまず、仮想通貨が投機的なものよりも、社会的意義のあるプロジェクトに活用されることを望んでいる。
例えば、NFT(非代替性トークン)の台頭は、それに活用されることの多いイーサリアムブロックチェーンに資金が流入することにもつながっている。一方で同時に、ネットワーク上の取引が混雑し、ガス代(手数料)の高騰も引き起こした。
ブテリン氏はこれについて「手数料が高いままでは、デリバティブ商品やギャンブル的なものが、クールなプロジェクトを排除してしまう」と述べている。特に、高額取引されるBored Ape Yacht Club(BAYC)等の人気NFTが、賭博のようなものになることを危惧する形だ。
NFTとは
「Non-Fungible Token」の略称で、代替不可能で固有の価値を持つデジタルトークンのこと。ブロックチェーンゲームの「デジタルアイテム」交換などに用いられるのみならず、高額アート作品の所有権証明や、中古販売では実現の難しかった「二次流通市場」における権利者(クリエイター)への画期的な還元手段としても注目を集める。
▶️仮想通貨用語集
記事によると、ブテリン氏はむしろ、イーサリアムが、より公平な投票システム、都市計画、ユニバーサル・ベーシック・インカム、公共事業プロジェクトなど、様々な社会政治的実験に活用されることを期待しているという。
ブテリン氏は以前より、イーサリアム開発の社会的意義を問い続けている。金融以外のユーティリティこそが、「汎用ブロックチェーンのビジョンの中で最も興味深い分野」であると述べており、分散型ソーシャルメディアやログインサービスなどに活用するアイデアも示してきた。
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また、DeFiプロジェクトの運営投票についても、トークンを沢山保有している者ほど、投じることができる票の数が多くなってしまうという課題を指摘。
代替案として、一人につき一票を割り当てたり、エコシステムでイベントに参加したり、役立つ仕事を行った者に、投票権を与える仕組みも提案している。
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仮想通貨の透明性や分散性を支持
ブテリン氏は、イーサリアムが「開放性(オープンネス)、透明性、自由」に役立つものになることを以前より強調。今回のインタビューでも、仮想通貨が逆に独裁的なものに使われることについても懸念を表明した。
例えば、米国では共和党議員の中に仮想通貨支持派が多い状況であり、ブテリン氏は「仮想通貨が右寄りのものになりかけている兆候があるのは確か」で「もしそうなれば、仮想通貨は多くの可能性を犠牲にすることになるだろう」と述べている。仮想通貨が分散型であることを望み、政府が反対意見を取り締まるために、その技術を使うことも危惧しているという。
さらに、仮想通貨セクターについて「良い意味でクレイジーな面」と「悪い意味でクレイジーな面」が存在していると語った。
悪い面は、莫大な資金がハッキング支援などのために動きかねないことであり、良い面は、技術的な仕事、研究開発、公共の福祉につながることだと言及。その上で、より多くの良い面が引き出されるように努力する必要があると述べた。