重要性を増すステーブルコインの役割
欧州中央銀行(ECB)は11日、暗号資産(仮想通貨)に関する金融リスクと政策の影響を分析した報告書を発表。気候変動、分散化金融(DeFi)とステーブルコインの三つの分野に分け、それぞれを深く掘り下げた。本稿ではステーブルコインに関するECBの認識に焦点を当てる。
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— European Central Bank (@ecb) July 11, 2022
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ECBは、DeFiの急成長に伴い、ステーブルコインが、仮想通貨エコシステムの中で重要な役割を担うようになったと指摘。報告書では、ステーブルコインの役割として次の二つを挙げた。
- 法廷通貨と仮想通貨のリンクとして機能しつつ、取引所(CEX及びDEX)における仮想通貨取引を円滑化
- DeFi市場への流動性を供給(自動マーケットメーカー取引と貸付)
中央集権型の場合、ステーブルコインの取引量(四半期平均)は昨年、米ニューヨーク証券取引所の米国株式(430兆円≒3兆1200億ユーロ)にほぼ匹敵する規模に成長したと指摘。中でも最大の時価総額を誇るテザー(USDT)は今年3月時点で、全ての取引プラットフォームにおける全取引の65%を占めた。
DeFi領域では、今年5月にDEXの全流動性の45%をステーブルコインが占める一方で、担保型ステーブルコイン(USDTやUSDCなど)より、DAIなどのアルゴリズム型ステーブルコインが大きな割合を占め、崩壊前のテラUSD(UST: 現在はUSCT)は一時75%を供給していたという。
ステーブルコインとは
価格が常に安定している暗号資産を指す。BTCやETH、XRPなど従来の仮想通貨とは異なり、米ドルなどに価値(1ドル)を保つことが目的だ。米ドルの裏付けによる担保型のステーブルコイン(USDT・USDC)や、DAIやUSTといったアルゴリズム型のステーブルコインもある。
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支払い手段としてのステーブルコイン
ECBは、実体経済において決済手段としてのステーブルコインは、実用性が不十分であると主張している。
まず、欧州では包括的な仮想通貨規制法案(MiCA)の採用を待っている状況にあり、規制の不確実性から、決済サービスプロバイダ(PSP)がステーブルコイン市場に積極的ではなく、関連サービスも限定的であることが挙げられた。
また、ステーブルコインの平均的取引速度は、既存のPOSや電子商取引のような瞬時決済には及ばないことや、取引コストが大幅に変動する可能性などから、従来の決済システムと比較して明確な優位性はないと、ECBは結論づけた。
さらに、最大規模のステーブルコインUSDTの場合、償還は週1回か営業日のみの提供となっており、法廷通貨との換金の可能性が制限されていると指摘。現在、透明性に関する要件、返金、過剰な手数料からの保護、詐欺の補償などの消費者保護措置は、ステーブルコインには適用されていないと批判した。
金融安定性へ及ぼす影響
ECBは、ステーブルコインが金融安定性に及ぼすリスク要因を以下のように特定した。
- 準備資産の構成に関する透明性の低さ
- ディペッグにつながる安定化メカニズムの失敗
- 信頼の失墜に伴う大規模な償還要求
ECBはテラUSDの崩壊が仮想通貨エコシステムに衝撃的な影響を与えたことに言及。仮想通貨市場の流動性に重要な役割を果たしているステーブルコインが、暴落・破綻した場合、仮想通貨市場に大きな波紋を広げることになると警告した。
さらに、今後ステーブルコインの採用が広まることで、金融安定化に対するリスクが他の金融システムにまで伝播する恐れがあるとした。
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ステーブルコインの規制
ECBは、「ステーブルコインが金融安定と決済システムの円滑な機能に対するリスクとなる前に、適切な規制、監督、監視を実施する必要がある」と主張。既存のステーブルコインは早急に規制の範囲に含め、新たなステーブルコインに関しては、規制の枠組みを確立する必要があるとした。
欧州レベルでは、急成長するステーブルコイン市場を考慮し、ステーブルコイン関連規制をMiCAの規制案に「早急に」導入する必要があると主張。また、クロスボーダーの特性を持つステーブルコインに対し、国際レベルでは「一貫性があり、きめ細かく、堅牢な規制アプローチにより、世界的に公平な競争環境を確保することが重要だ」と強調した。
その一つのステップとして、G20の国際金融監督機関である金融安定理事会(FSB)によるガイダンスの提供に言及。FSBのような国際機関が、関連する基準の設定を担うことができると主張した。
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