Sudoswapの躍進
分散型NFTマーケットプレイス「Sudoswap」は、ローンチ後1か月で取引量が13億円(1,000万ドル)を突破。8月11日の取引量がNFT市場全体の5.9%を占めるなど好調だ。
一方で、SudoswapはNFT(非代替性トークン)市場の慣習を覆し、クリエイターのロイヤリティ報酬を「0%」に設定したことで波紋を呼んでいる。
SudoswapではNFTコレクションの流動性プールを設置でき、在庫量に基づいて自動でレートを提供するAMM(自動マーケットメイカー)により自動売買が促進されていること。そして、最大手OpenSeaの手数料は5~7.5%(2.5%+ロイヤリティ)であるのに対し、Sudoswapはトータルフィーでさえ0.5%と低いという特徴がある。
NFTのロイヤリティとは、売買価格の一部が自動的にクリエイターに還元される仕組みのこと。スマートコントラクトではNFTの移転が購入か譲渡かを識別できないため、多くのマーケットプレイスレベルで自発的に設定されている。
イーサリアム(ETH)やソラナ(SOL)のトップNFTマーケットであるOpenSeaやMagic Edenなど、ロイヤリティを任意で設定できるものが主流となりつつあった。
ロイヤリティがゼロになるということはNFTのバイヤーにとってコスト低減につながる。しかし、NFTクリエイターにとっては収益減につながるため、クリエイターからは反対の声も多い。
アーティストでメディア「NFT Now」の創設者であるMatt Medved氏は、「ロイヤリティ0%はありえない。Web2のデタラメに戻るつもりはない」と指摘。NFTアーティストHaley氏 は、「非常に搾取的であり、初期のクリプトアーティストによって確立された文化や先例に反している」とし、「NFT市場の新しいサービスにも同様の仕組みを組み込む必要性」を強調した。
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NFTとロイヤリティ
そもそも、NFTにロイヤリティを付ける取り組みは、「EIP(イーサリアム改善提案)2981(20年9月)」で提起された「ソーシャル・コンセプト(共通意識)」である。初期の人気NFTコレクティブル「CryptoPunks」がデビューした2017年当時には存在しなかった。
“…enable universal support for royalty payments across all NFT marketplaces and ecosystem participants.” https://t.co/gtDpQ3kKnZ https://t.co/rJ5RwUyMXT
— 🖖 (@alexanderchopan) August 15, 2022
現在、一部のNFTマーケットプレイスでは、NFTの転売時に転売価格の一定割合でクリエイターや販売プラットフォームに自動的に手数料が支払われるよう、スマートコントラクトに組み込まれている。Yuga Labs社の人気NFTコレクション「Bored Ape Yacht Club」と「Meebits」は、ロイヤリティをそれぞれ2.5%と5%に設定している。
PFP(プロフィール画像)NFTが主流だった2021年と比べて、「ゲーム内アイテムのようなNFTにとってロイヤリティは取引の阻害要因になる」とThe BlockのリサーチャーEden Au氏は指摘。AMMはトレーダーが手数料を気にせずに、迅速に販売を促進する点で理にかなっているとした。
一部のNFTコレクターは、Sudoswapの動きがプラットフォーム間の競争を生み出し、NFT市場の手数料低下につながると期待する。NFTコレクターのChris Nichols氏はCoinPost提携メディアThe Blockに対し以下のように述べた。
手数料の低下は、個々のアーティストから一点物のアートを購入する人よりも、より大きなコレクションを取引する人々を魅了するのではないか。
しかし、クリエイターサイドからは、Sudoswapのようなロイヤリティフリー(無料)が業界標準になれば、最終的に一次市場での販売単価の高騰を招いたり詐欺が増えるなど、エンドユーザーに負担がかかるような影響が生じるとも危惧されている。ソラナのNFTプロジェクト「DeGods」のFrank創設者は以下のように述べた。
NFT royalties shouldn’t exist because it’s “the right thing to do”.
— Frankⓨ (33.3%) (@frankdegods) August 14, 2022
It is simply the best alignment of incentives between founders & holders (right now).
If you want to remove royalties, that’s fine. Just don’t be mad when mints become more expensive and more projects rug, lol.
ロイヤリティを撤廃したいのなら、それはそれで構わない。ただ、ミント(発行)がより高価になり、より多くの詐欺プロジェクトが生まれても文句を言う資格はない。
米司法省は6月30日、「Baller Ape Club」NFTに関連したスキームを通して、電信詐欺及び国際的なマネーロンダリングを行ったとして、運営者を起訴したと発表した。
NFTの完売後、突如ウェブサイトやTwitterアカウントを削除し、NFT投資プロジェクトを停止。いわゆる「ラグプル」という手口で投資家の資金を盗んだ容疑がかけられている。
ラグプルとは
英語で「Rug Pull」と表記される出口詐欺のこと。開発者が初期投資家を誘い込んでNFTを売りつけた後、プロジェクトを放棄したり、NFT販売で得た資金を持ち逃げする行為。DeFi(分散型金融)プロジェクトの開発者などの運営側が、密かに仮想通貨のプールから流動性を引き抜いて持ち逃げするなどの事例がある。
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