2022年の統括
米大手暗号資産(仮想通貨)投資企業Galaxy Digital社は25日、2022年末のマイニング産業の分析レポートを発行した。
資金調達手段の限られた多くのマイナーがサバイバル(生存戦略)モードに陥っているとされ、2024年のビットコイン(BTC)半減期まではその状態が継続すると見られている。
Galaxy Digitalによれば、2021年以降多くのマイナーが運用コストや設備投資費用の調達手段を融資に頼る「誤った配分戦略」を実行してきた。2022年のビットコインマイニング機器(ASIC)担保ローンの新規発行額は660億円(5.1億ドル)に及んだ。2021年の発行総額こそ25%上回ったが、これらはすべて上半期に組成されたものだ。
弱気相場が進行した22年第3四半期に融資会社による新規融資ペースが鈍化し、マイナーが蓄積・温存していた採掘済みビットコインの売却を余儀なくされたことが、BTC価格の年間75%もの下落の背景にあるという。
公表データによると、米国で上場している採掘企業だけで、2022年におよそ58,773 BTC(2021年は3,500 BTC)を売却。その36%が2022年第2四半期に発生した。
また、22年にこれらの上場採掘企業で360億円(2.77億ドル)ものローンが不履行に陥り、11.59EH以上のハッシュパワーを生むASICを貸金業者に売却した。加えて計8つの採掘施設(538メガワット相当)を323億円(2.498億ドル)で売却。
この流れはASIC機材の価格低下を引き起こし、前述した新規融資数の鈍化につながっている。
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2023年の展望
一方、既に不採算マイナーの財務BTCの売却活動が概ね完了していることから、Galaxy Digitalは2023年に同規模のBTC価格の下落は起きそうにないとの見解を示している。
2022年末時点に、上場している採掘会社のビットコイン保有量は33,290 BTCあるが、大規模なBTC保有マイナーはすでにバランスシートを強化しており、急を要する現金需要は発生しないとされる。
しかし、非上場マイナーにとって、依然として資本市場へのアクセスは低下しているのが現状だ。採掘マシン製造大手BitMainのジハン・ウー氏が設立した救済ファンドを含む「ディストレストファンド」に供給された1,400億円(11億ドル)の資本が生命線となっている。そのため、日々生産されたBTCの多くは即売却される可能性が高い。
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30日間でBTCネットワーク上のマイナーは平均27,000BTCを生産している。仮に運用コストを賄うために全て売却されても、市場全体の現物BTC取引量の方が大きいため価格に影響しないとGalaxy Digitalは指摘する。
実際に、ネットワークの約28%シェアを占める上場採掘企業は過去3カ月間で1カ月あたり平均5,739 BTCを売却。これを逆算してネットワーク全体で毎月約20,496 BTCが売却されていると想定されている。
また、ビットコイン・マイニング(採掘)事業者の2つの産業構造が課題に直面しており、今後改善する必要があると指摘。
一つはBTC採掘マシンを担保に受け入れる融資会社のサービス形態だ。借り手は市場の状況に応じて毎月の支払額が変動するなど柔軟性を求めており、貸し手は弱気相場でより確実に担保を清算可能とする特約(コベナンツ)を強化する必要がある。
もう一つはサービスを固定費で提供してきたマイニングホスティングサービスの価格形態の見直し。最大手の2社、米Core Scientificと米Compute Northは41年ぶりの高水準となった電力価格の影響を受けたことで不採算に陥り、どちらも米連邦破産法11条の適用を申請した。
Galaxy Digitalはまた、ビットコインマイニングプールの収益性を改善する別の手段として、ライトニングネットワークのチャネル運営から最大5%の年間回り(APY)を得られる可能性を指摘している。
こうした市場環境を考慮して、Galaxy Digitalは、2024年の半減期に向けてマイナーが大きく設備投資することはできないとの見方をしている。23年のネットワークハッシュレートは23%増の325EH/sに留まり、ビットコイン価格の上昇範囲は比較的平坦なものになると予測している。
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