クラーケンへの訴訟を受けてコメント
米暗号資産(仮想通貨)取引所コインベースのグローバル規制政策担当責任者を務めるスコット・ボーガス氏は2日、「同社が上場しているトークンは証券ではないと確信している」と述べた。BlockWorksが報じた。
ワシントンDCで開催されたデジタル資産関連のカンファレンスにおける発言だ。また、同席したクラーケンの政策担当責任者も、SECを牽制する発言を行っている。
ボーガス氏は、コインベースで取り扱っている仮想通貨には、証券の際に発生するような配当などはないことも理由の一つとした。さらに、もし仮に、取り扱っているすべての仮想通貨が証券とみなされた場合でも、コインベースはその状況をうまく切り抜けられると話す。
この発言の背景には、主に米証券取引委員会(SEC)が2月、仮想通貨取引所クラーケンによるステーキングサービスの提供は、米国の証券法違反にあたるとして訴訟を起こしたことがある。クラーケンが証券として事前に登録せずに、投資契約に相当するステーキングサービスを提供したと主張していた。
クラーケンは、SECと和解し、ステーキングサービスの提供を直ちに中止、約41億円(3,000万ドル)の民事罰や利益償還金などの支払いに同意している。
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ステーキングとは
ステーキングとは、一定量の仮想通貨を所定の期間、ネットワークに預け入れることで報酬が得られる仕組み。仮想通貨をロック(自由に動かせない状態)し、ブロック追加のデータ承認など、ネットワークの管理/維持に貢献する対価として、同じ通貨で報酬が提供される。
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クラーケンもSECを牽制
クラーケンのヨナンタン・ヤキム(Jonanthan Jachym)氏も2日、ボーガス氏と同席。SECとの和解については「ビジネス上の決断だった」と述べており、「クラーケンがSECと和解したことにより、米国で新しいルールが作られたわけではない」と強調した。
また、当局は仮想通貨取引に対する政策に取り組む際、現行の法律を仮想通貨に適合するよう調整する方法を考慮する必要があるとも続けた。今回クラーケンは、法廷闘争は行わなかった形だが、ヤキム氏は「業界がSECに対して訴訟を起こす意欲は高まっている」として、SECを牽制している。
クラーケンがSECから訴えられた際には、コインベースのブライアン・アームストロングCEOが、同社の提供するステーキングサービスは証券ではないと再度強調していた。「必要であれば法廷でこれを弁護する」とも述べている。
また、コインベースのポール・グレウォル最高法務責任者も10日に、公式ブログでコインベースが提供するステーキングサービスは証券に該当しないと主張していた。ハウィーテストの4要素「金銭の投資」「共同事業」「利益に対する合理的な期待」「他者の努力」を満たしていないと論じる格好だ。
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ハウィーテストとは
ハウィーテストとは、米国で特定の取引が「投資契約」という証券取引の定義の一つに該当するかどうかを判定するテスト。SECのW. J. Howey社に対する訴訟事件に由来する。これ自体には法的拘束力はないが、SECはこのテストをもとに複数のICO(トークン販売)に対して訴訟を起こした経緯がある。
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SECは、クラーケンに対する訴訟において、最大年利21%もの報酬をかかげながら、報酬源に関する情報開示が不十分だったことを重要な問題点としている。
仮想通貨コミュニティでは、クラーケンのサービス特有の問題があったのか、他の企業のステーキングサービスにも影響があるものなのかという議論が浮上した。
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