はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習 WebX
CoinPostで今最も読まれています

TRON以外にも入札はあった | BitTorrentの巨額買収からNEOが手を引いた理由とは

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

TRONとNEOの共通点
両社は「処理がより迅速で、スケールするブロックチェーンの構築」によりイーサリアムに対抗する狙いを持っていた。どちらも中国に本社を置く企業で、時価総額も1,700億円前後と似通っている。その2社が、BitTorrentの買収に名乗りを上げた。
TRONの狙いとは
BitTorrentの「脱中央集権化したウェブ」というアーキテクチャ構想は、今日のトークンブームの先駆けとも言えるものである。TRONがBitTorrentでの役割を早急に明確にすることが待ち望まれる。
BitTorrentとは
ブラム・コーエンが開発した、P2P技術を用いたファイル転送用プロトコル、およびその通信を行うソフトウェア。2003年に初版が公開された。現在ではフリー/オープンソースソフトウェアのほか、様々な音楽/映画/商用アプリケーションがBitTorrent経由で配信されている。一方で膨大なネットワークトラフィックを占有することが問題視されることもある。

▶️CoinPost:仮想通貨用語集

TRONとNEOの入札競争

先に、ブロックチェーンプラットフォームTRONの創業者Justin Sun(ジャスティン・サン)氏が、分散ファイル共有サービスのBitTorrentを買収したことが話題になりましたが、実はTRONは唯一の入札者でも、最高額入札者でもなかったことが判明しました。

複数入札ということは、TRONの他にもBitTorrentの買収に興味を示す企業があったということです。

その競合相手は、中国の仮想通貨/ブロックチェーンプロジェクトのNEOでした。

NEOは、関連ベンチャーキャピタルのNGC (NEO Global Capital)を通じて、TRONよりも高額の入札を行っていました。

NEOの投資部門トップの朱威宇(Weiyu Zhu)氏の発言、および複数の内部文書によると、NEO/NGCの入札額は1億7,000万ドル(約189.5億円)で、TRON側の入札額1億2,000万ドル(約133.8億円)を500万ドル(約55.7億円)上回っています。

しかし、最終的に入札に勝ったのはTRONでした。

共通点の多い両社

TRONによるBitTorrent買収が大きく報じられたのは、2018年6月のことでした。

仮想通貨関連企業が著名な関連企業を買収する初の事例として話題となりました。

観測筋からは、TRONが買収を行う狙いの1つに、BitTorrentの膨大なユーザー基盤にあるのではないかとも見られていました。

もちろん仮想通貨関連企業としての本命は、世界第2位の規模を誇るイーサリアムブロックチェーンへの対抗。

そしてその手法は、処理がより迅速で、スケールするブロックチェーンの構築です。

この点で、TRONとNEOはライバルとして同じベクトルを持っていました。

2018年7月にTRONは、そのネットワーク立ち上げの主旨として「インターネットの脱中央集権化」を掲げました。

4月および7月には、サンが(イーサリアムよりもトロンのほうが)「はるかにましだ」といったツイートを行って物議を醸したこともありました。

TRON is 80 times faster than Ethereum. With 14 years of experience, @BitTorrent is providing a world-class service to 100 million users in 138 countries. Add the two together and you get the largest and most advanced peer-to-peer network in the world! #TRONBT $TRX

出典元:Twitter
一方の、「中国版イーサリアム」を自認するNEOは、スマートコントラクト、デジタル認証、デジタル資産といった分野に注力しています。

時価総額でも、NEOの16億ドル(約1,784億円)に対し、NEOは15億ドル(約1,672億円)と、両社はかなり似たところにあり、どちらも本社を中国に置いているという共通点があります。

ということは、どちらも当局の資本規制を受けなければなりません。

こうした、似たところの多い企業ですが、BitTorrentへの入札で提示した額には、一定の隔たりがありました。

入札に応じる側のBitTorrentは、NEOが1億7,000万ドルとTRONを500万ドル上回る金額を提示したにも関わらず、「当社にとっても株主にとっても大きな魅力とは言えない」としてNEOの提案を退け、最終的にTRONを選んだのです。

入札争い

入札に向けて、先に動いたのはTRON側でした。

TRONは2017年12月、サンがベンチャーキャピタルDCMのDavid Chao(デヴィッド・チャオ)氏に接近します。

DCMは、BitTorrentの最大手の出資者でした。

しかしこの時点では、サンとしてはBitTorrentを丸ごと買収する意向ではなかったと見られます。

むしろ、DCMの優先株の99%を取得することで、同社の経営権を得ることが狙いでした。

優先株の買収額は、最終的に1株あたり1.85ドル(約206円)、総額900万ドル(約10億円)から1,000万ドル(約11.1億円)の提案をサンは行ったと見られます。

こうして一度は合意しかけた交渉ですが、チャオが「それでは普通株主にメリットが出ない」として優先株に加え、普通株も購入することをサンに対して強く求めました。

NEO側の買収交渉

このような状況の中、2018年1月末頃、約1ヶ月遅れでNEO側が買収交渉に乗り出します。

NEOがTRONと違ったのは、当初からBitTorrentの単独株主を目指したことです。

優先株に1億1,500万ドル(約128.2億円)、普通株に5,500万ドル(約61.3億円)、計1億7,000万ドル(約189.5億円)での買収を申し出ました。

そこには、BitTorrentの技術を下敷きに、脱中央集権化したファイルストレージシステムから、脱中央集権化したウェブやブロックチェーンの構築を、という狙いがあったものと見られます。

米国当局と世論の影響

2018年2月中旬に状況が変わります。

NEOサイドが買収条項を修正、「半年以内に買収が完了しない場合には買収を無効とする」旨の、それまであった条項を削除したのです。

これがBitTorrentとDCMには、NEOの態度変更、不利な条件に映りました。

NEOによる修正案が提示された翌日、BitTorrentとDCMは(より高額な)入札額に関わらず、NEOの提案はTRONと比べて「好ましいものとはいえない」という判断を下しました。

前出のNEOの投資部門トップの朱氏は、これに関し、NEOは対米外国投資委員会(CFIUS)の対応を懸念していたのだと説明します。

米国ではちょうど、HuaweiやZTEといった中国系企業による通信事業者取得に向けた動きが、米国知財保護の観点から政治的な議論を呼んでいた時期に当たります。加えて、BitTorrentのチーフ開発者Bram Cohen(ブラム・コーエン)氏がベンチャー企業Chiaの立ち上げに携わっていました。

Chiaの競合となり得る企業に、BitTorrentをあえて譲渡する理由が、彼にはありませんでした。

そして2月14日、聖バレンタインの日とその翌日にかけて、BitTorrentとDCMはTRON側の総額1億2,000万ドル(約133.8億円)の買収提案に合意しました。

内訳は、優先株9,000万ドル(約100.3億円)、普通株3,000万ドル(約33.4億円)というものです。最終的な買収額は、これに運転資本等の調整加算が行われ、1億5,000万ドル(約167.2億円)となりました。

改めてTRONの狙いを振り返る

BitTorrentは、現在までTRONの新しい役割を具体的には明らかにしていません。

観測筋は、TRON側の買収当初の目的は膨大なユーザー基盤の取得とBitTorrentの正統の後継者としての地位を得ることにあったと見ています。

とはいえ、現在に至るまでNEOは著作権侵害に悩まされ、また、リポジトリへの属性コードの埋め込みもうまくいっていません。

経営母体の変更に不安を感じ、BitTorrentを去った従業員もいます。

サンは、買収の最終提案を行う前に取りやめたものの、それまで半ば強制的なやり方で、コーエンを含むBitTorrentの元従業員や普通株の主要株主に対し、同社に戻るように働きかけてきました。

BitTorrentのビジネスモデルに関しては、結果的に身売りへとつながったわけですが、「脱中央集権化したウェブ」というアーキテクチャ構想は、今日のトークンブームの先駆けとも言えるものです。

コーエンは、他の多くのテクノロジーの発明者がそうであったように、2017年に自社を去りました。そうして立ち上げたのがChiaであり、BitTorrentもChiaの株主に名を連ねています。

これまでのところ、TRON側はNEO側が懸念したような形では、CFIUSと衝突していません。

そして中国当局は、自国企業が欧米企業を買収することについて歓迎の姿勢を示しています――もっとも、当局の支援が得られたからといって、その先には中国にありがちな、うんざりするような諸手続きが待っていることに変わりはないわけですが。

CoinPostの関連記事

TRON(トロン)創設者Sun氏、BitTorrentの買収に意欲的
TRONはマイクロトレントを運営するBitTorrentの買収に意欲的な姿勢を見せています。しかし、訴訟などの問題も発生し、すんなりと買収という訳にはいかなさそうです。もし、買収が成功すればTRONにとっては大きな前進となりそうです。
LINE子会社の仮想通貨取引所にTRON上場:2000万円相当のエアードロップ実施
LINE社の仮想通貨取引所にTRON上場 LINEのシンガポール子会社が運営する仮想通貨取引...
CoinPost App DL
厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
12/31 水曜日
14:00
ブラックロックの2026年投資展望 AI投資が米株式市場を牽引、ステーブルコインは金融の架け橋に
ブラックロックの2026年投資展望レポートでは、AI関連投資が米国株式市場を牽引し、生産性向上で171兆円の経済効果が見込まれると分析した。また、38兆円規模に成長したステーブルコイン市場について決済システムへの統合が進み、トークン化された金融システムへの第一歩となると見ている。
12:00
2026年末のビットコイン価格はどうなる?有識者7人に予想を聞いた
ビットコイン2026年末価格予想を暗号資産(仮想通貨)業界の著名人7人が回答した。平均は12.3万ドルで約40%の上昇見込み。FRB政策、機関投資家参入、半減期アノマリー崩壊など注目ポイントを分析。強気派と慎重派の見解を比較し、相場の行方を占う。
11:00
仮想通貨TOP20と国内発トークン、25年の騰落率は
ドナルド・トランプ氏の米大統領就任やビットコインの最高値更新があった2025年。本記事では同年の時価総額上位銘柄と国内発プロジェクトのトークンの年間騰落率をまとめている。
10:00
激動の2025年 仮想通貨の時価総額トップ20、過去8年間における順位変動は
2025年はビットコインが12万ドルを突破した。仮想通貨に肯定的な米トランプ政権が始動した1年を終えるにあたり過去8年間において仮想通貨の時価総額の順位がどのように変動してきたかを振り返る。
12/30 火曜日
14:00
米カリフォルニア州の超富裕層への「5%資産税」に業界猛反発 仮想通貨起業家流出の懸念も
米カリフォルニア州で純資産10億ドル超の富裕層に5%課税する提案が行われ、Kraken創業者やBitwise CEOをはじめとする仮想通貨・テック業界リーダーが強く反発し、警告を発した。株式、不動産、仮想通貨などを対象とし、未実現の含み益にも課税される点が問題視されている。
14:00
コインベース・ベンチャーズが注目する2026年の仮想通貨4大トレンドとは
米最大手コインベースの投資部門コインベース・ベンチャーズが2026年に積極投資する4分野を発表した。RWA永久先物、専門取引所、次世代DeFi、AIとロボット技術など、次のブレイクアウトが期待される仮想通貨領域について紹介。
12:32
ビットマイン、イーサリアム買い増し 独自のステーキング・インフラも準備中 
ビットマインの仮想通貨イーサリアム保有量が411万枚に到達した。年末の価格下落を好機と捉え買い増しを行っている。2026年には独自ステーキング基盤も公開予定だ。
10:00
2025年の仮想通貨市場を重要ニュースから振り返る
2025年は仮想通貨を支持するドナルド・トランプ氏が米大統領に就任し、相場は米国の動向から大きな影響を受けた。本記事では、ビットコインの最高値更新など1年間の重要ニュースを振り返る。
09:50
仮想通貨投資商品、先週700億円超の純流出 XRP・ソラナは好調維持=CoinShares
仮想通貨投資商品から先週700億円超が流出した。CoinSharesは投資家心理がまだ完全に回復していないと分析した。一方で資産別ではXRPとソラナへの流入は好調だった。
12/29 月曜日
14:23
ビットコインは持続的上昇局面に?4年サイクル論争と機関投資家の影響力
Bitwise CIOマット・ホーガン氏が「ビットコインの4年サイクルは終焉し、持続的上昇局面に入った」と主張した。ハーバード大学など大手機関がBTCを保有し、個人投資家から機関への資産移転が進行。ボラティリティ低下の理由と、「階段を上りエレベーターで降りる」値動きパターンを専門家2人が詳しく解説。
13:35
AIや仮想通貨のショッピング活用進む Z世代が牽引か=Visaレポート
決済大手ビザの調査で、ショッピングにAIツールや仮想通貨を利用する消費者が増加していることが判明。特にZ世代が牽引していた。ステーブルコイン送金への関心も高まっている。
09:44
スベルバンク銀、ロシア初の仮想通貨担保ローン発行
ロシア最大の銀行スベルバンクが同国初の仮想通貨担保ローンを発行した。ビットコインマイニング企業に融資し、デジタル資産担保の仕組みを検証している。
12/28 日曜日
14:00
今週の主要仮想通貨材料まとめ、MTGOXハッキング容疑者関連のBTC送金やearnXRPローンチなど
前週比で振り返る仮想通貨市場の最新動向。ビットコインやイーサリアム、XRP、ソラナといった主要銘柄の騰落率や注目材料を一挙紹介。市場トレンドと関連ニュースを詳しく解説する。
11:30
ビットコイン年末相場、値頃感から買い戻し期待も|bitbankアナリスト寄稿
今週のビットコインは方向感に欠け1400万円周辺で推移。26日のオプションカット通過後の動向が注目される。底入れには12月高値9.4万ドルの回復が条件だが、割安感から買い戻されやすいとbitbankアナリストが分析。
11:00
週刊仮想通貨ニュース|Bybitの日本居住者向けサービス終了発表に高い関心
今週は、大手仮想通貨取引所Bybitの日本居住者向けサービス終了の発表、仮想通貨市場の調整局面、日銀の植田和男総裁の講演に関する記事が関心を集めた。
通貨データ
グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧