DCGの巨額債務
米国の暗号資産(仮想通貨)取引所であるGeminiは19日、米コングロマリットDigital Currency Group (DCG)のデフォルトを回避するため、DCGに対して債務返済の保留期間を提供するかどうか検討することを発表した。
Geminiは利回りサービス「Gemini Earn」の一部としてユーザーから預かった資金125億円(9億ドル)を、DCG子会社で融資事業を営むGenesis Capitalに貸し付けている。
検討についてGeminiは、DCGが再編計画や債務の再構築に対して真摯に協議に参加し、合意形成を図る意思を持っているかどうかが重要になると指摘。仮にDCGが積極的に協議に参加せず、合意が難しい状況である場合、他の当事者は独自の計画を提案し、対応策を模索する可能性があるとした。
具体的な対応策としては、再編計画の策定、猶予期間の設定、貸出条件の再交渉などが考えられる。
Geminiはさらに、Earnプログラムを通じて顧客から預かった23万2000人分の資金、合計1500億円(11億ドル)をGenesisで運用しているが、現在はその出金が凍結されている状況だ。これらの仮想通貨の返還を求めるため、Genesis Capitalに対して5月22日にも訴訟を起こすと加えた。
今年1月にGenesis Capitalが破産保護を申請した後、その債権者とDCGは協議を続けている。DCGはGenesis Capitalに対して約870億円(6億3,000万ドル)の債務を抱えており、返済期限はこの5月の11日前後に訪れていた。
DCGがGenesisに対する債務内訳は1月時点に「約600億円(約4.5億ドル)と4,550 BTC(当時100億円相当)」。BTCの値上がりと共に債務も膨らむ構造だ。DCGはこれらの資金を2022年中に自社株の買い戻しや仮想通貨の投資、さらに公開市場でのGBTC購入に使ったと明らかにしていた。
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DCGの戦略
DCGは5月9日、Genesisとの間の未払い社内債務の再融資について、成長資金を提供する資本提供者と協議を開始したと発表した。5月1日から30日間の調停期間を設けたとしており、事実上、債務返済期限を延長した格好だ。この策は、DCGが自社の財務体質を改善し、Genesisへの負債を整理するための資金を確保する試みと見られる。
Geminiの動きは、DCGとの協議やDCGの再編計画に対する慎重な構えを示している可能性がある。5月初旬、GeminiはGenesisの破産資産への6億3,000万ドルの債務返済が適切に行われなければ、DCGはデフォルトのリスクに直面すると指摘していた。
仮にDCGの再編や資金調達が計画通り進まない場合、DCGの保有するGBTCなどの資産の強制売却に直面する可能性がある。また、Geminiやその他の債権者に対して重大な財務的影響が出る可能性がある。
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DCGとは
大手仮想通貨コングロマリット企業。6つの子会社を持ち、200以上のブロックチェーン関連スタートアップと50以上の仮想通貨ファンド、プロジェクトに投資している。主な子会社には、投資会社グレースケール、ビットコインマイニング企業Foundry、ジェネシス・グローバル・キャピタル、仮想通貨メディアCoinDeskなどがある。
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