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StarkNetとは|zkロールアップのレイヤー2として注目を集める理由、開発計画を解説

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StarkNetとは

StarkNetは、イーサリアムのレイヤー2スケーリングソリューションの一種です。レイヤー2でトランザクション処理と状態保存を行い、レイヤー1に最小限の要約データだけを送信する「ZK-Rollups」技術に分類されます。

この技術は、高いセキュリティを維持しながらトランザクションのコスト(手数料)を削減し、スケーラビリティを高めるものです。

StarkNetの代表的な要素には、STARK証明、Cairoプログラミング言語、そしてアカウント抽象化のサポートがあります。これらにより、多様なアプリケーションとユースケースが可能となります。

加えて、EVM(イーサリアム仮想マシン)との互換性を備えたソリューションも構築されており、開発者にとってイーサリアムの豊富なリソースを活かしながら、創造的な構築に取り組めます。

StarkNetは2021年11月にAlpha版がリリースされ、2022年2月にはイーサリアムのメインネットで正式にローンチされました。現在までに多くの開発者が集まり、活発なエコシステムが形成されています。

Electric Capital

出典:Electric Capital(23年7月出版)

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Starkware社と「STARK証明」

特にStarkNetは、ZK-Rollups(ロールアップ)の中でも「STARK証明」を活用しています。STARKs(Zero-Knowledge Scalable Transparent ARguments of Knowledge)は、StarkNetの開発企業であるStarkWare社の共同設立者、Yinon Horesh氏とMichael Riabzev氏が2018年に公表した技術です。

STARKsは、ブロックチェーンに記録するデータ量を削減し、手数料を低く抑えつつ取引速度を向上させます。数学的にブロックチェーンの信頼性と一貫性を保つため、シークエンサーによる検証を必要とするOptimisticロールアップより不正耐性が高く、送金の処理時間が短い等の利点があります。

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StarkWare社は、当初スケーリング・エンジン「StarkEx」を通じて、その技術を分散型仮想通貨取引事業者に提供してきました。しかし、今やその技術は「StarkNet」プラットフォームによって、広範なdApps(分散型アプリ)開発者も利用可能になっています。

注目すべきは、このStarkWareの技術がすでに実際の運用環境での耐久性と信頼性が確認されている点です。StarkExは、Sorare、ImmutableX、dYdXといった、イーサリアム上でユーザーに支持されるL2(Layer 2)アプリケーションで実際に使用されています。

2023年7月現在で、StarkExは累計取引で約1兆ドルを決済し、5億件以上のトランザクション(tx)を計上。強固な信頼性を証明しています。スループット(データ処理速度)の面ではイーサリアムL2の中で初めて100 TPSを突破し、パフォーマンスが示されています。

StarkWare社は22年6月のシリーズDで、約1兆円(80億ドル)の企業評価額で約127億円(1億ドル)の資金を調達しました。累積の調達額は約410億円(2.83億ドル)に上ります。競合と比べて、調達額に対して企業評価額が高いことも注目に値します。

Ethereum Daily

出典:Ethereum Daily

主要な投資家には、セコイア・キャピタル、パラダイム、イーサリアムの共同創設者であるヴィタリック・ブテリンも含まれています。また、イーサリアム財団はStarkWareとそのSTARK技術に1,200万ドルの助成金を提供しています。

ゼロ知識証明

ここで、StarkNetの根幹技術であるゼロ知識証明について簡単にご説明します。この技術は、証明者が「自身の主張は真実である」以外の情報を検証者に開示することなく、その主張が「真実である」と証明する暗号メカニズムです。

ゼロ知識証明は、イーサリアムのようなパブリックチェーンの透過的な環境で、プライバシーを保護しながらデータの正当性を保証する手段として注目を集めています。

ゼロ知識証明にはいくつかの種類がありますが、主なものとして「SNARKs」と「STARKs」が存在します。SNARKsは、立ち上げ時の立会い者を信頼する必要があります。このフェーズで不正な操作をされると、システムに脆弱性が生まれる可能性があります。

一方で、STARKsはそのような信頼されたセットアップフェーズを必要としません。そのため、より透明性が高く、安全性も確保されます。

ゼロ知識証明はその応用範囲とセキュリティ面で非常に注目されており、特にStarkNetにおいてはSTARKsの採用により、高度なセキュリティとデータの正確性を両立させています。

開発言語「Cairo」、ゲームでの活用

イーサリアムで使われるスマートコントラクト言語である「Solidity」は、ZK証明技術に対応していません。このため、証明の作成や検証を行うには、Circomのような別の言語を併用する必要があります。

そのため、StarkNetは「Cairo」というプログラミング言語を採用しています。Cairoは一つのコードベースで証明の作成と検証が可能な設計になっており、STARK証明の生成にも特化しています。多彩なライブラリが用意されているため、ゲーム、AI、ソーシャルメディア、支払いアプリケーションといった多くの用途で活用されています。

特にStarkNetは、取引費用やスケーラビリティ、セキュリティに優れ、後述する「アカウント抽象化」をサポートしており、ゲームやAI関連と相性が良いことから、他と差別化を図るためにエコシステムの中でも重要視されています。

ゲーム開発者向けのフレームワーク「Dojo」は、Cairoで提供されています。Dojoは、UnityやUnreal Engineと同様に、物理計算やグラフィック、ゲームメカニクスなどのライブラリとツールセットを提供しており、ゲームの開発の手間と複雑さを大幅に削減します。

アカウント抽象化をサポート

StarkNetでは、「アカウント抽象化」という機能をネイティブサポートしています。これは、従来のウォレットとは異なる、「スマートコントラクトウォレット」という概念を可能にします。

StarkNetエコシステムで代表的なプロダクト「Braavosウォレット」では、StarkNetの「アカウント抽象化」機能を中心に据え、Braavosウォレットは最高水準のセキュリティと利便性を提供しています。

例えば、iphoneのセキュリティサブシステムを使用して、ハードウェアキーを生成し、ユーザーの生体認証(顔認証や指紋認証)でトランザクションに署名できます。

スマートフォンの紛失、故障、または盗まれた場合に、シードフレーズから生成されるキーを用いてハードウェアキー(ハードウェア署名システム)を削除することができます。このリクエストには4日間の遅延があり、これによってシードフレーズがハックされた場合でも資産を安全な場所に移動させる時間が確保されます。

また、スマートコントラクトウォレットは、セッションキーを用いて一定時間または一定数のトランザクションに対する承認を与えることができます。これは、プレイ中に多くのトランザクションが発生するゲームに相性の良い機能です。他にも、複数の操作を一度に行ったり、ゲーム内通貨の不正使用を防ぐために、日次での引き出し上限を設ける等、多様なユースケースが想定されます。

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EVM互換「Kakarot」、アプリチェーン「StarkNet Stack」

現在、StarkNetはイーサリアムの仮想マシン(EVM)とは互換性がありません。しかし、新しい実行環境「Kakarot」が導入されることで、この問題が解消される予定です。これにより、Metamaskなどの仮想通貨ウォレットを使用して、StarkNet上の分散アプリケーション(dApps)に簡単に接続できるようになります。

関連:ブテリン氏も出資へ zkEVMプロジェクト「Kakarot」がプレシードの資金調達を完了

市場調査サイトL2beatによると、StarkNetの総バリューロック(TVL)は、9月1日時点で1.4億ドルと、イーサリアムL2で6位を記録しています。Kakarotの導入により、この数字は今後大幅に上昇すると見られています。

Cairo自体も進化を遂げており、2023年中にはCairo 0からCairo 1.0への完全移行が予定されています。このアップグレードにより、データ転送速度(ループット)、応答時間(レイテンシー)、トランザクションコストが改善されるでしょう。

さらに将来的には、Layer 3のZK EVM「Madra」の導入や、アプリケーション専用のブロックチェーンを構築する「StarkNet Stack」も提供される予定です。これにより、StarkNetはL2レイヤーとして更に強化され、アプリチェーンがL3としても機能するようになる計画です。

分散化に向けたロードマップ

最も急速に成長している開発者コミュニティを持つ StarkNet は、複数の独立したチームによって構築された、フルノード、シーケンサー、実行エンジンを含む最も分散化された主要なインフラストラクチャを備えています。この多様性がネットワークの堅牢性を高めています。

さらに、2024年には、現在のStarkware主体の運用と意思決定のプロセスが分散化される予定です。この動きは「Regenesis」と呼ばれる大型アップグレードによって実行されます。RegenesisはStarkNetのロードマップにおいて、集権的な運営からの脱却を意味する重要なマイルストーンとされています。

関連:イーサリアムL2「Starknet」、2023年のロードマップを発表

このアップグレードが完了すれば、StarkNetの運用は完全に分散化されます。また、このタイミングでStarkNetのネイティブトークンの流通開始が予想され、初期ユーザーに対するエアドロップ(無料トークン配布)も期待されます。

StarkWare社は、2022年11月にStarkNetのネイティブトークン「STRK」をメインネット上で発行。総発行量の50.1%(約50.1億STRK)はStarkNet財団が管理する形で配分されています。9%は2022年7月以前にイーサリアムからStarkNetへETHを移動したユーザーに対するコスト還元として設定されており、8.1%が未設定とされています。これはコミュニティの意見を反映する形で決定される予定です。

なお、トークンセールやエアドロップに関する具体的な情報はまだ公表されていないため、これを関連付けた詐欺には十分注意が必要です。

関連:イーサリアムL2「StarkNet」、トークン(STRK)がメインネット公開

STRKトークンの初回アンロック延期

StarkWareは10月2日、ネイティブトークンStarkNet(STRK)の初回アンロックについて5か月先送りしたことを公表。当初予定は2023年11月29日だったが、2024年4月15日まで延期する。

STRKトークンの総供給量は100億だが、現在はまだ取引可能ではない。初回アンロックの数量は公表されていなかった。

プロジェクトが海外仮想通貨メディアThe Blockに寄せたコメントによると、「技術の構築に集中しており、ロードマップは必要に応じて更新され、これにはロックアップの更新も含まれる」とのこと。

初回のアンロックが遅れることは、次のアンロックも遅れることを必ずしも意味しないという。2つのトークンアンロックが常にリンクしているわけではないと、事情を知る匿名情報源は語っている。

初回アンロック分のトークンは、StarkWareのコアコントリビュータ、StarkWareエコシステムの初期サポーター、およびStarkWareの従業員に帰属し、一般ユーザーには配布は予定されていない。

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