- 米FINRAの承認待ち企業が40社超え
- アメリカで証券仲介ブローカー業務を営むには、FINRAへ登録・認定される必要があるが、40にも上る仮想通貨企業の可否判断が滞っていたことが判明した。規制の壁が立ちはだかるか。
米FINRAの承認待ち企業が40社超え
米仮想通貨メディアCoinDeskの報道によると、40にも上る仮想通貨企業が何ヶ月にもわたり、米金融取引業規制機構(FINRA)からのブローカー・ディーラーの承認を待っているという。
FINRAの承認を1年以上待っているスタートアップも多く、中には14ヶ月以上、申請が進展のないまま滞っているという企業も何社か存在すると情報筋は伝えている。
FINRAはアメリカ政府の公的機関ではなく、投資家の保護や不正行為の摘発、証券取引の透明化などを目的として設立された非営利の自主規制団体であるが、アメリカで証券仲介ブローカー業務を営むには、FINRAへ登録し、認定を受けなくてはならない。
また、民営ではあるが、株式、社債、証券先物、およびオプションの取引を規制し、規則に違反するブローカーおよび証券会社に対し罰金を科したり、業務を禁止する権限を持っている。なお、FINRAは米政府機関であるSEC(証券取引委員会)の監督下にある。
注目される仮想通貨ETFの承認をはじめ、どのトークンを証券と定義するかなど、SECが仮想通貨規制に与える影響は大きいため、関係者の中ではFINRAがSECの要請に応じて証券業務ライセンスの承認を留保しているのではないかという意見も散見されるようだ。
また、SECからの要請ではないが、FINRAは証券法の下で仮想通貨がどのような扱いになるのか、SECが明確なガイドラインを提示するのを待っていると考えるグループもあるという。
一方、承認の遅れは、仮想通貨という新しい資産クラスをどう扱うかという問題に起因しており、規制当局が故意に承認を遅らせているという指摘は誤りであるとする専門家もある。
このような状況に対し、FINRAのメディア担当責任者、Ray Pellecchia氏は次のように答えている。
デジタル資産ビジネスへの参入を企画中の企業からの会員申請は、新しい複雑な問題を提起しており、我々はそのような問題に対処している過程にある。
いずれにせよ、アメリカ国内で規制に準拠したブロックチェーン製品・トークンを開発し販売することは、一筋縄ではいかない様子がうかがえる。
スタートアップがブローカー・ディーラー免許の取得を目指す理由
規制に準拠した仮想通貨商品の数が限られている中、アメリカではトークン化された証券という形で、国内の顧客に仮想通貨を提供することができるようにするため、まずブローカー・ディーラーとして登録するという方法を選ぶスタートアップが多く存在する。
そのようなスタートアップが最終的に目指すのが、販売するトークンの取引やカストディサービスを提供することであっても、カストディ業務や代替取引システム(ATS)運営に従事する申請を行う前に、まずブローカー・ディーラーとして登録されていることが必要となる。
そして、その登録承認を行うのがFINRAであるため、ある意味、FINRAがカストディアンとなるためのゲートキーパー的な役割も果たしていることになる。なお、FINRAはATSの監督は行うものの、その承認はSECが担っている。
しかし、最初のブローカー・ディーラーの登録の段階で、多くのスタートアップに待ったがかかった状態となっているのだ。
あるスタートアップの弁護士は、FINRAとSECの間で中ぶらりんの状態に置かれているこのような状況を、非常に苛立たしく感じると述べている。米国の規制に準じた事業を行なおうと努力する企業を、規制側が妨げる形になっているからだ。
さらに、同弁護士はSECは仮想通貨の市場操作や不正行為に対する懸念を頻繁に表明しているが、法に準拠し、事態を改善しようとするプレイヤーを参入させないのは如何なものかとも語っている。
このような状況では、米国内で業界に参入す規制のハードルの高さに辟易したスタートアップが、より好意的な規制環境の国外に流出してしまう可能性も高い。
FINRAのガイドラインでは、通常、申請を承認するかどうかの決断に6ヶ月の期限を与えているが、申請内容によってFINRAは、この期間を長期延長することが可能だという。証券関連弁護士の一人は、この期間が18ヶ月を超えても驚かないと述べている。
仮想通貨業界の発展に伴い、ブローカー・ディーラー申請に加え、ETF、ATS、Regulation A+(SECのクラウドファンディング控除)など、規制当局が対応すべき申請件数は増加する一方だ。SECによる規制の明確化を望む声は、ますます高まっている。