アマゾンの大規模リストラ
eコマース最大手アマゾンが18,000人以上の人員削減を計画していることが5日に明らかになった。
Andy Jassy最高経営責任者(CEO)が社内向けに公表した声明によると、リストラの対象となるのはブランドのカスタムページを作成できる「Amazonストア」と人事部門。1月18日以降に影響を受けるスタッフに直接通達する予定。一部情報がリークされたため、現時点での公表に至ったという。
18,000人の人員削減は、アマゾンの全世界の従業員数(約30万人)の6%に相当する。倉庫スタッフを含む150万人の約1.2%だ。
22年11月にもアマゾンは、デバイス部門を皮切りに1万人規模の人員削減を計画していることが報じられていた。執筆時点で同社の株価(AMZN)は前日比2.37%安、前年比では50%ほど低下している。
景気後退の兆候とも
2020年以降、新型コロナウィルスの感染拡大後の経済回復期に人員不足が加速したことで、ハイテク企業は雇用を強化してきた。しかし、成長が鈍化した2022年にハイテク企業は相次いで方針を転換。データサイトLayoffs.fyiによると、過去1年でこの産業は15万人以上を解雇したトップカテゴリーとなっている。
アマゾンもまた、22年2月に技術職などの基本給の上限を2倍以上となる年間4,000万円程に引き上げるなど人材獲得に努めてきた。しかし、Jassy氏は今月5日の社内向け声明で、「不透明な経済状況を考えると(年間計画は)より難しくなっている。我々は、ここ数年で急速に雇用を増やしてきた」と認めている。
米メタ(旧フェイスブック)社は22年末に全従業員の13%に当たる1万1,000人の削減を発表。最高経営責任者のマーク・ザッカーバーグ氏は、「パンデミック(新型コロナウィルスの世界的大流行)が続くとの予想は間違いだった」と述べた。IT大手マイクロソフトも10月に1,000人の従業員を解雇した。
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巨大テック企業のリストラを経てもなお、ハイテク企業による人員削減のトレンドは23年を通して継続すると見られている。グーグル親会社アルファベットはレイオフを含むコスト削減を示唆している。クラウド型ビジネスアプリを提供するセールスフォースのマーク・ベニオフ会長は2日、「人を雇いすぎた」として約8,000人の従業員のうち10%の人員削減計画を発表した。
こうした動きは、リーマン・ショックにより金融危機が広がり、世界経済が景気後退に陥った2008年〜2009年と類似しているとの指摘がある。エグゼクティブサーチ会社スタントンチェイスの幹部はロイター通信に対して、「IT大手は、2008年から2009年に経験したようなサイクルに巻き込まれないように、自社を守ろうとしている」と見解を述べた。
成長鈍化の背景には、継続的なインフレ拡大がある。12月の米CPIは前年比7.0%上昇しており、企業や消費者に支出削減を促してきた。
米連邦準備制度理事会(FRB)はインフレ退治を目的に過去1年間に政策金利を引き上げてきた。しかし、緊縮的な金融政策が行き過ぎるとリセッション(景気後退)リスクが懸念される。そうなると、FRBが景気を上向かせるための金融緩和政策にシフトするタイミングに市場の関心が高まる。
リーマン・ショック後の2008年12月に米連邦準備制度理事会(FRB)は政策金利をゼロ近くに誘導するゼロ金利政策を導入、2015年12月まで継続した。この間、米国市場は金融緩和やカネ余りを背景に上昇する「金融相場」に突入。米国10年国債利回りが低水準(2.0%前後)を推移する一方、株価は大きく上昇した。