ドイツ金融当局による警告
暗号資産(仮想通貨)の強気相場が継続する中、ドイツの連邦金融監督庁(BaFin、日本の金融庁に相当)は一般消費者に向け、仮想通貨投資のリスクについて注意を喚起した。
3月19日、BaFinは公式サイトで、消費者保護に関する情報として、「ビットコインやその他の仮想通貨はリスクと投機性が非常に高い」と個人投資家に警告。また、仮想通貨の価格上昇の勢いが増した今年1月にも、「仮想通貨の誇大広告」と題して、投資リスクについて次のような警告を発していた。
- ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、XRP、ビットコインキャッシュ(BCH)、ライトコイン(LTC)などの最近の価格上昇に目をくらまされないように
- 現物取引だけでなく、差金決済取引などのデリバティブ金融商品も高リスクである
- 消費者が大きな損失を被り、場合によっては全ての資金を失う可能性もある
- 投資判断の際は、激しい価格変動と低い流動性から生じるリスクを考慮することが必要
BaFinはICO(トークン販売)についても、過去に警告を発していた経緯がある。
欧州監督当局も警告
BaFinの警告の中でも触れられているが、欧州の金融監督当局も消費者に仮想通貨の投資リスクに関して注意を促している。
3月17日、欧州銀行監督機構(EBA)、欧州保険・年金監督局(EIOPA)、欧州証券市場監督機構(ESMA)は、一部の仮想通貨は非常にリスクの高い投機的なものであると指摘し、「消費者は全ての資産を失う可能性も含め、このような金融商品の購入と保有のリスクに注意を払うことが必須である」と警告した。
また、仮想通貨には様々な形態があるが、その大部分はEU域内では未規制であるため、規制された金融サービスに付随するような保証等の保護措置を受けることはできないと説明。欧州委員会は2020年9月に、仮想通貨市場に関する規制案を提出。しかし、まだEU法として成立していないことから、同規制案で提案されている消費者保護の恩恵は受けることができないと付け加えた。
ドイツの金融業界の動き
一方、ドイツ金融業界では、個人投資家に対する金融当局からの注意喚起と対照的な動きがみられる。
先月、金融大手のドイツ銀行(Deutsche Bank)が、カストディとブローカー事業で仮想通貨分野に本格参入する計画があることが報じられた。また、同行はビットコインによる決済に焦点を当てたレポートを発表。時価総額100兆円に達したビットコインは、「重要な資産として無視できない規模」になっているとの見解を示した。
関連:「ビットコインは無視できない規模に」=ドイツ銀行レポート
また、老舗銀行「Donner&Reuschel」も、仮想通貨の売買及びカストディサービスの提供を開始するとみられており、仮想通貨の投資環境が充実していく動きが止まる気配は無いようだ。
このように、金融機関が仮想通貨事業に参入する背景には、好調な相場や市場拡大の影響もあるが、同時に、ドイツのこれまでの仮想通貨規制に対する取り組みも功を奏しているようだ。
ドイツの仮想通貨規制
規則を重んじる傾向の強いドイツは、欧州の中でも、いち早く、仮想通貨に対する規制の明確化を図ってきた。
BaFinは、2020年3月、ビットコインをはじめとする仮想通貨を「金融商品」とみなすガイドラインを発表。仮想通貨を「中央銀行や公共団体によって発行されず、法定通貨に該当しないもので、デジタル価値を有するもの」と定義し、「価値の交換において、仲介手段として電子的に送金、保存が可能な」機能を持つものであるとした。
また、同年1月に施行されたマネーロンダリング防止法制定に伴う銀行法の改正により、銀行が仮想通貨の保管や管理サービスを提供することが可能になった。新たに金融サービスと定義された仮想通貨のカストディサービス提供には、BaFinが監督当局となり、ライセンスの取得が義務付けられた。
そして同年12月には、ブロックチェーン導入推進の一環として、全ての証券のデジタル化を合法化する法律も成立した。
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BaFinは、消費者に対する注意の中で、仮想通貨関連の金融サービス事業を行う企業に関しては、同機関の許可が必要となっていることに言及。しかし、この規制の枠内では、消費者の損失が生じた場合、保護措置も一切ないことを強調している。