はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習-運用
CoinPostで今最も読まれています

通信速度を犠牲にせず、安全にインターネットを利用するには?|オーキッド(Orchid)寄稿

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

スプリットトンネルを解説

VPNを利用することで、インターネット利用時に、個人情報などが第三者から閲覧されないように保護できます。しかし、VPNの使用が通信速度を落とすことがあり、その対策のひとつが「スプリットトンネル」です。本記事では、スプリットトンネルとは何か、その仕組み、そしてインターネットを安全に利用するためのVPN設定方法を解説します。

スプリットトンネルとは

VPNは、安全かつ暗号化された「トンネル」のように機能しており、インターネットを構成している複雑な回線を介し、データを移動させています。VPNでは多くの利点が提供されていますが、実社会での交通渋滞のような混雑を、インターネット上で引き起こす大きな原因となることもあります。

VPNを利用する際、全てのデータ、つまり「トラフィック(交通量)」がこのトンネルを介してルーティングされています。VPNは、そのデータがどれだけ重要または機密であろうと、あるいはどこへ向かっていようと、全てのデータを平等に処理しています。

例えば、Google検索も、企業内ネットワーク間での安全なメール送受信やドキュメントのダウンロードも、全て同じプロセスを経て伝達されます。

VPNのデータ伝達能力に限界があることにより、トラフィックの混雑が引き起こされることがあります。大容量のトラフィック、特に組織レベルのトラフィックが日常的にVPNサーバーを介することにより、多量のまたは重要なデータが「詰まって」しまうことがあるのです。

リモートワークをしている人、もしくはインターネット接続に自宅または公共のブロードバンド・ネットワークを利用している人にとって、このような好ましくない経験は死活問題であり、生産性に加え、効率的なコミュニケーションが脅かされる可能性があります。

しかし、スプリットトンネルにより、スピードおよびプライバシー間でのジレンマを打開できます。スプリットトンネルを利用すると、トラフィックを適切なトンネルへと誘導することができ、ユーザーは遅い通信速度を我慢することなく、VPNの利点を享受できます。

スプリットトンネルの仕組み

VPNに接続していない場合、ユーザーは、自身がアクセスしようとしているサーバーに、直接接続しています。例えば、オープン・ネットワーク上でFacebook.comにアクセスする際には、Facebookのサーバーに直接、リクエストを送信しています。

また、ユーザーのIPアドレスや位置情報、クッキー、その他ユーザーが意図的に提出した情報(メールアドレス、ユーザーネームまたはパスワードなど)を含むデータも送信しています。

しかし、オープン・ネットワーク上でデータを送信する場合、第三者にそのデータを監視、記録または利用される可能性もあります。ここで登場するのが、VPNです。

VPNではトンネルを構築し、傍観者や傍受者となりうる人々からユーザーのデータを保護しています。VPNは、ユーザーのホームネットワークから発信されたデータと、そのデータの目的地の間を仲介するサーバーとして機能し、安全なトンネルを構築しています。

例えば、VPNを使用してウェブサイトへデータを送る場合、データは、まず最初に暗号化され、VPNサーバーへ送信された後に、目的地であるウェブサイトのサーバーへ届きます。

VPNユーザーが、どのデータに対してVPNトンネルを利用したいか、どのデータでは利用しないかを決定したい場合、スプリットトンネルが必要になります。スプリットトンネルを利用した場合、二つの経路が作成されることになります。

一つは、VPNを介してデータを送信するためのトンネル、もう一つはVPNを介さないデータ用のトンネルです。

スプリットトンネルの利点

スプリットトンネルを使うことの利点は複数ありますが、この記事では2つを紹介いたします。

VPNトラフィックの減少

スプリットトンネルとは、保護する必要のあるデータを優先するための手段です。これにより、インターネット上の混雑が緩和され、全体的なパフォーマンスが向上します。

VPNトラフィックが減少することにより、インターネットの速度が向上します。VPNは、オンライン上のデータ保護に有用なツールですが、速度が遅いため、全てのオンライン・アクティビティで利用するには困難なこともあります。

しかし、スプリットトンネルの利用により、ユーザーは、VPNを介して機密データをルーティングしながら、オープン・ネットワーク上で動画を視聴できます。この方法により、VPNがより効率的に作動するため、機密情報のアップロードが高速になります。

セキュアなLAN構築

スプリットトンネルにより、複数のネットワークへのアクセス、とりわけ複数のローカルエリアネットワーク(LAN)接続も可能になります。LANでは、自宅やオフィスのコンピューターとプリンターなど、一箇所にあるデバイス同士を接続しています。

しかし、VPNのせいでLANが構築できなくなるケースがあります。例えば、VPNにより、コンピューターと無線プリンターの接続が妨害され、プリンターを利用するにはVPN接続を解除しなければならない場合です。

スプリットトンネルを使うと、VPN接続を解除せずとも、容易にLANに接続できます。

スプリットトンネルの種類

スプリットトンネルには、主に3つの種類があります。

URLベース

URLベースのスプリットトンネルでは、ユーザーは、安全なVPNトンネルを介してからアクセスしたいウェブサイトを選択できます。VPNのメインコンソールから設定するか、ブラウザの拡張機能から設定するかは、利用しているVPNによります。

アプリベース

アプリベースのスプリットトンネルでは、ユーザーは、VPNトンネルを介してアクセスしたいアプリを選択できます。この方法は特に、モバイル端末で有益です。

逆スプリットトンネル

逆スプリットトンネルでは、デフォルトでVPNに接続されます。ユーザーが特別に設定したウェブサイトまたはアプリケーションのみ、VPNを通らずに、オープンネットワークを介してルーティングされます。

スプリットトンネルが必要な時

このような利点を享受できるスプリットトンネルですが、特に利用した方がいいケースとしては、以下の3つがあります。

リモートワーク

ポストコロナ時代では、自宅で仕事をすることが当たり前になっています。その結果、企業やその従業員は、より複雑なサイバーセキュリティを確保する必要が出てきました。

従業員のホームネットワークの脆弱性は、悪用される可能性があります。とはいえリモートワークで働く人々は、日々の作業を行うために、安定していて高速なインターネットに接続する必要もあります。

そのため、スプリットトンネルは、インターネットの速度を落とさずに、企業のデータを安全に保護するための重要なツールとなっています。

個人情報保護

基本的に簡単なブラウジングには自宅のインターネット環境を利用しているけれども、時折高度なサイバーセキュリティを要する個人に対しても、スプリットトンネルは、優良なソリューションを提供しています。簡単なウェブ上でのアクティビティはオープン・ネットワークを介して行う一方、重要な個人情報に関しては、VPN経路を介してルーティングできます。

ジオブロッキングされたコンテンツにアクセス

ある地域で利用不可能なコンテンツにアクセスしたいけれども、VPNを介して全てのオンライン・アクティビティをルーティングしたいわけではないユーザーに対して、スプリットトンネルでは、コネクションの速度を大幅に落とさずに、コンテンツへアクセスするための方法を提供しています。

スプリットトンネルのリスク

スプリットトンネルの利用にはリスクも伴っています。例えば企業などにおいては、従業員がスプリットトンネルを利用することにより、情報漏洩対策ソフトウェア、ファイヤーウォールおよびDNSなど、会社が意図的に設置した保護策が掻い潜られるかもしれません。

またスプリットトンネルにより、従業員は、彼らのアクティビティを記録するソフトウェアを回避したり、特定のコンテントをブロックしてしまう可能性があります。

スプリットトンネルにより、リモートワーク環境のセキュリティに関するリスクも増加します。例えば、従業員のホームネットワークの保護策が適切に講じられていない場合、ハッカーは、そのネットワーク内でオープンになっているチャンネルを通じて、その従業員のコンピューターをウイルスに感染させることができます。

セキュリティが侵害されたコンピューターを使用することにより、ハッカーは、安全なVPNチャンネルへのアクセスを獲得し、コマンド&コントロールセンターへ、有害なファイルを送ることもできます。このようにして、企業や組織のネットワーク全体がリスクに晒される可能性があります。

そのため、スプリットトンネルを避ける人もいます。全てのデータのセキュリティをより高度なレベルで維持したいユーザーは、データを全て安全なVPNトンネルを介して送信したいと思っていることでしょう。

これは「フルトンネル」と呼ばれています。フルトンネルは、スプリットトンネルよりも安全ですが、インターネット回線のスピードが遅くなる可能性が高いです。

スプリットトンネル利用の確認方法

自身のVPNがスプリットトンネルに対応しているかどうかを確認する方法は、いくつかあります。スプリットトンネルがネットワーク上で有効化されていることを確かめるためには、VPNの「設定」または「オプション」メニューを操作してみてください。

スプリットトンネルに関する設定の場所が分かったら、スプリットトンネルがオンになっていることを確認してください。

VPNのスプリットトンネルが適切に機能しているかどうかを調べたい場合にも、検証方法がいくつか存在しています。コマンドラインに慣れている方は、tracerouteコマンドを使用してみてください。

コマンドラインに馴染みがなければ、自身のIPアドレスを表示しているウェブサイトへアクセスしてみてください。VPNに接続していない状態で、ウェブサイトへアクセスし、IPアドレスをメモします。

そして、そのウェブサイトを、安全なVPNトンネルを介してアクセスしたいURLのリストに加えてください。スプリットトンネルが有効化されていることを確認し、VPNをオンにして、再度同じウェブサイトを訪れてみます。

スプリットトンネルが正しく機能していれば、異なるIPアドレスが表示されます。

関連:インターネットを安全に利用するためのVPN活用ガイド|オーキッド(Orchid)寄稿

関連:拡大するVPN市場、課題とブロックチェーン技術によるソリューション|Orchid、Brave

CoinPost App DL
厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
07/02 水曜日
13:45
トランプ大統領、イーロン・マスクに対する批判を再び展開、 『大きく美しい法案』巡る対立が再燃
「大きく美しい法案」をめぐり、トランプ大統領とイーロン・マスク氏の対立が再燃している。マスク氏の痛烈な法案批判に対し、トランプ氏は、マスク氏が率いる企業の政府補助金受給について政府効率化局(DOGE)で調査すべきと発言し、かつて盟友だった両氏の関係は緊迫感を増している。
13:20
アリゾナ州知事、押収仮想通貨の準備基金法案『HB2324』を拒否権行使
アリゾナのホブズ知事が犯罪捜査で押収した仮想通貨管理法案を拒否。地方自治体の協力阻害を懸念と声明。
11:45
パクソス、ステーブルコインUSDGを欧州全域でローンチ サークルとの競争激化
パクソスが米ドル建てステーブルコインUSDGをEU全域で発行開始した。MiCA規制に準拠している。合計30か国に展開しており、ステーブルコイン時価総額ランキングでは15位だ。
11:10
ナスダック上場DeFi Development Corp、1億ドル転換社債発行 ソラナ蓄積戦略を拡大
米初のソラナ準備金戦略企業DeFi Development Corpが1億ドル転換社債の私募発行を発表。調達資金でSOL購入継続、バリデータ運営による複利成長を目指す。
10:50
上場企業のビットコイン購入がETF上回る、2025年上半期24万超BTC取得で4倍以上増
2025年上半期に世界の上場企業が仮想通貨ビットコインを24万5510BTC購入しETF保有数の2倍超。前年同期比約5倍増でマイクロストラテジー戦略が拡散、企業準備金としての位置づけが確立された。
10:30
米SEC、仮想通貨ETFの上場基準を策定か 審査迅速化に期待
米証券取引委員会が、ビットコインなど仮想通貨ETF向けの汎用上場基準策定を検討していると伝えられる。19b-4様式省略により審査迅速化が期待される。
10:20
ETH1万ドル到達は『義務』と表明、イーサリアムに新組織誕生
仮想通貨イーサリアムに、イーサリアムコミュニティ財団という新たな組織が誕生。公式サイトで、イーサリアムの価格に特化した組織であると説明している。
07:55
NYSE上場DDCが760億円調達完了、ビットコイン準備金戦略を本格始動
アジア食品ブランド運営のDDC EnterpriseがNYSE上場企業として最大規模の仮想通貨専用資金調達を実施。Anson Fundsらから総額5億2800万ドルでビットコイン準備金構築へ。
07:25
XRP戦略推進へ、ナスダック上場のWebusが1億ドル調達合意
ナスダック上場のWebusがリップル・ストラテジー・ホールディングスと1億ドルの資金調達契約を締結。仮想通貨XRPを活用した事業戦略推進により株価が日中130%上昇も最終的には8%反落。
07:15
「ビットコインが25年に20万ドルへ到達するとの予測は維持」Bitwise
仮想通貨運用企業Bitwiseは、2025年の10の予測に対する中間評価を公開。ビットコインが20万ドルに到達するとの予測は維持することなどを記載した。
06:50
ストラテジーのビットコイン循環戦略、NAV超プレミアムを正当化か=TD Cowen分析
ストラテジーの株価は純資産価値(NAV)を大きく上回って推移。継続的な株式発行が1株あたりのBTC保有を押し上げる構造が、投資家の注目を集めている。アナリストはその持続性とリスクに着目している。
06:12
ビットコイン利確が加速 第3四半期は過去最弱の季節性=アナリスト分析
仮想通貨ビットコインの利確が進む一方、市場は方向感に欠ける展開。第3四半期は過去最弱の季節性もあり、アナリストは地政学リスクや米金融政策の不透明感に警戒を示している。
05:50
トランプ大統領の「大きく美しい法案」上院可決も、仮想通貨少額免税案は見送り
トランプ政権が推進する大型予算法案に、仮想通貨の少額免税や報酬課税見直しの修正案は含まれず。ルミス上院議員は今後の再提出を示唆し、業界団体もロビー活動を継続する構え。
05:37
米SEC、ビットコインやXRPに投資するグレースケールの仮想通貨ファンドETF化を承認
米証券取引委員会(SEC)は、グレースケールのバスケット型ファンドのETF転換を加速承認。構成資産の約8割をビットコインが占めており、今後の仮想通貨ETF全体に追い風となる可能性も。
07/01 火曜日
16:00
UXLINKが実現目指すWeb3の大衆化、CEOが語る成長戦略|WebXスポンサーインタビュー
5500万人のユーザーを擁するWeb3成長支援プラットフォーム「UXLINK」。WebX 2025への参加を控え、同社CEOが日本市場への期待を述べた。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧