ロシアのために資金を流していた疑い
ウクライナ検察庁は12日、暗号資産(仮想通貨)の店頭取引(OTC)事業者を摘発し、現金、不動産、銀塊を押収したと発表した。
公式発表によると、この仮想通貨ブローカーは、ロシアのために違法に資金を流していた疑いが持たれている。具体的にはロシア市民のために現金や非現金資産を仮想通貨に変換していたとされる。
この事業者は、ルガンスクとドネツクでも同様のサービスを提供していたという。ロシア防衛相は3日、ウクライナ東ドンバス地域(ルガンスクとドネツク)を制圧したと発表。この地域では、親露派武装勢力「ルガンスク人民共和国」が存在している。
OTC取引とは
売り手と買い手が1対1で行う取引を指す。「OTC」は「Over The Counter」の略。証券会社や銀行などで「店頭カウンター越し」に取引を行ったり、取引所を介さずに売買を行うことを指す。「店頭取引」や「相対取引」とも呼ばれる。仮想通貨に限らず、株式などの売買にも利用される用語。無料通話やチャットサービスを利用して取引を行うことも可能で、市場と関係なく当事者間で価格や数量を決められる等のメリットがあるが、詐欺の被害に遭うなどリスクも伴う。
▶️仮想通貨用語集
ウクライナ検察庁は、事業者から、約2.3億円(約5,000万フリヴニャ)以上の現金、銀830キログラム、土地6区画、アパート3棟を押収した。押収された財産の総額は約4.6億円(330万ドル)以上の価値があるとしている。
仮想通貨や、仮想通貨ウォレットの没収については言及がなかった。現金のほとんどはユーロ建てだったという。
仮想通貨による制裁回避の可能性
ロシアのウクライナ侵攻後、米国や欧州を始めとする各国が、同国への経済制裁措置を展開している。その中、ロシアが仮想通貨を制裁の抜け道として使うのではないかという懸念が浮上していた。
米イエレン財務長官など、ロシアが仮想通貨を使って大々的に制裁回避することは不可能であるとする見解もあるが、各国が仮想通貨も制裁対象に追加している。EUは4月、ロシア制裁で仮想通貨ウォレットへの送金や、高価格の仮想通貨サービスを禁じることを通知。G7も3月に仮想通貨を対象とする制裁を発表している。
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今月には、米国が日本政府に、仮想通貨取引所やマイニング事業者がロシアとの関係を断つよう圧力強化することを要請したことが報じられた。
ロシアでは、中央銀行が仮想通貨に批判的な見方を示す一方で、政府は仮想通貨を禁止するよりも、適切に規制していくことを唱えており、どちらかといえば仮想通貨に前向きな姿勢を示してきた。
最近では、ロシア下院の金融市場委員会のAnatoly Aksakov委員長が7日、モスクワ証券取引所(MOEX)内に仮想通貨取引市場を設置することを肯定する発言を行ったところだ。
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仮想通貨で資金調達するウクライナ
ウクライナも、ロシアの同国侵攻以来、仮想通貨による資金調達を積極的に行っている。
ウクライナのAlex Bornyakovデジタル改革省副大臣は6月、同国に以前寄付された著名NFTコレクションCryptoPunksの1つを売却し、約1,330万円の売上を得たと発表した。
ウクライナ政府と、ウクライナの民間団体は、2月以来、人道支援や戦争努力のための支援金として、計180億円以上の仮想通貨寄付金を受けている。
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