はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習-運用
CoinPostで今最も読まれています

高額取引されるイーサリアム・ネーム・サービス(ENS)とは 歴代トップセールスや利用用途を徹底解説

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

今年に躍進したENS

2022年は、金融マーケット及び暗号資産(仮想通貨)市場に逆風が吹いている。ベアマーケット(弱気相場)が長期化している中、イーサリアムのウォレットアドレスを簡略化する「ENSネーム」の売れ行きは好調だ。

分析サイトDuneによると、ENSネームの新規登録件数は9月に437,000件、前月の301,000件から57%増加した。22年10月10日時点にENSユーザー数は56万を超えており、ENSネームの累計登録数に関しては260万件で、5月以来2倍以上に増加している。

公式ツイッターによると、ENSのDAO(分散型自律組織)が受け取る販売収益に関しては、22年9月に累計8億円(550万ドル)となり、前月比で17%増加している。

NFT(非代替性トークン)電子市場OpenSeaでENSは、過去30日間の取引量が約13億円(950万ドル)となり、イーサリアムベースのNFTコレクションとして5位にランクイン。PFP(プロフィール画像)コレクションが立ち並ぶマーケットで異彩を放っている。

9月27日には、暗号資産(仮想通貨)取引所コインチェックが運営するNFTマーケットプレイス「Coincheck NFT(β版)」でENSネームの取扱いが開始したばかり。

Web3(分散型ウェブ)の文脈においても、ENSは分散型ID(アイデンティティ)の役割を担うと期待される。

この記事ではイーサリアム・ネーム・サービス(ENS)の仕組みや使い方、企業の導入事例について解説する。

目次
  1. ENSとは
  2. ENSネームのトップセールス
  3. ENSの取得コスト
  4. ENSの仕組み
  5. 採用拡大
    4-1.Web3とENS
  6. ガバナンストークン

ENSとは

イーサリアム・ネーム・サービス(ENS)は、「0x」で始める英数字の長い羅列であるイーサリアムアドレスを簡素化し、より覚えやすく簡単な文字列を仮想通貨のアドレスとして利用できるようにするためのサービス。

「coinpost.eth」のように一見して識別可能にすることで”誤送金”を防ぎやすくなるメリットもあり、ユーザーがより簡単に資金を送受信できるだけでなく、コミュニティのユーザーネームとしても普及している。「.eth」以外にも、「.xyz、 .kred、 .luxe、 .app、 .io」に対応する。

ENSはWeb3(ウェブスリー)におけるDNS(ドメインネームシステム)とされ、IPアドレスではなくユーザーのイーサリアムアドレスに対応する。

例えば、Ethereumの共同創設者Vitalik Buterin氏のENSネーム「vitalik.eth」は、彼のイーサリアムアドレス「0xd8….45」に紐づいている。

ENS自体はNFT発行用のトークン規格ERC-721に準拠するため、NFTと同様にアドレス間で送受信したり、OpenSeaなどのNFTマーケットで転売することも可能。

そのため、インターネットのドメイン同様にchanel.eth、nike.eth、hermes.ethなどといった、有名ブランドの名称や固有名詞などを、将来的に高値で売却することを期待して買い占める投機的な動きも拡大した。仮想通貨業界の多くの著名人が個人用にENSネームを使用するだけでなく、ENSネームを取得する企業も登場している。

21年8月には、米大手ビール銘柄の「バドワイザー」が、ENSネーム「beer.eth」を約30ETH(約1,100万円)で購入して注目を集めた。

関連:米大手ビールのバドワイザー公式、30ETH相当のNFTを購入

ENSネームのトップセールス

NFTコレクション別に歴代トップの落札額をチェックできるNonFungibleによると、ENSネームの最高額は「paradigm.eth」。2021年10月に2.1億円(420ETH、当時149万ドル)で落札された。

出典:nonfungible.com

この取引は当時、米コインベースなどに出資する大手VCParadigmによるものと指摘されたが、同VCはこれを否定している。

 

ENSネームの歴代セールス2位は9月22日に当時350ETH(当時6,700万円)相当で落札された「pjfi.eth」だ。販売者はその数日前にこのENSネームをわずか0.12ETH、約23,000円で購入したことが分かっている。

より文字数が少なく、よりバリエーションが少ない数字(ナンバー)は、希少性が高く、高価で取引される傾向がある。歴代第3位は「000.eth」で、2022年7月3日に約300ETHで販売された。000.ethは通算で6名のウォレットを渡り歩いており、1番最初の取引は2019年11月9日に52ドルで成立している。

特に「123.eth」や「456.eth」のような3桁台は、高単価で取引される傾向がある。執筆時点、OpenSeaに掲載されている3桁のENSネームで最も安いものは約700万円(36 ETH)で販売されている。

背後では、3桁または4桁のENSネームの所有者のオンラインソーシャルクラブ「999 Club」や「10k Club」のブームがある。22年夏には、1,000以上の投資家(アドレス)が100番以上のネームを買い占める熱狂が確認された。

関連:人気NFTのサブドメイン需要か、10,000番以下のENSアドレスの登録数が急増

これに派生して0~99まで2文字+絵文字のENSネームを持つ「Ethmoji 99 Club」や、シングル絵文字+.ethの「Ethmojis」などが人気カテゴリーとなっている。

ENSの取得コスト

ENSネームを保有するには、レンタル料を支払うことになる。費用はENSネームの文字数(3文字、6文字など)と期間により算出される。先ほどのvitalik.ethは2034年まで取得されていた。

文字数が少ないほど利用可能な組み合わせが限られるため、3文字のENSネームが最も高価になっている。年間コストと文字数に応じた基本価格は以下の通り。

  • 3文字の.eth名:年間640ドル(ETH払い)
  • 4文字の.eth名: 年間160ドル
  • 5文字以上の.eth名: 年間5ドル

出典:ENS公式サイト

また、ENSはイーサリアム・ブロックチェーンをベースとするため、ネームの取得やNFTの送付時に、オンチェーン手数料(ガス代)をETHで支払う必要がある。例えば、「cpwriter.eth」の取得時にかかるコストは、7.34ドル分のETH+トランザクション発行時のガス代(ETH)となる。

ENSの仕組み

ENSを構成するメインシステムは、「レジストリ(registry)」と、「リゾルバ(resolver)」と呼ばれる2つのスマートコントラクト。レジストリが、全ENSネームと所有者(ウォレットアドレス)、対応するリゾルバ等を記録する。また、ネーム購入者がサブドメインを発行する際に使用される。

リゾルバは、名前をアドレスに変換する実際の処理を行う。ENSネームを元にウォレットアドレスの情報を検索することを「ネーム・レゾリューション(name resolution:名前の解決)」と言う。

出典:ENS公式サイト

ENSでの名前解決は2段階プロセスで行われる。最初に、レジストリにENSネームを担当するリゾルバを問い合わせ、次に、そのリゾルバにアドレスを要求する。

アプリケーションがENSアドレス「alice.metamask.eth」を解決したい場合、まずレジストリに対応するリゾルバを問い合わせ、次にリゾルバーに問い合わせ、「0x890AB…」の解を得ることになる。

ENSの採用拡大

2017年5月のローンチ以来、ENSはブロックチェーンドメインの標準(スタンダード)として広く利用され、様々なdApps(分散型アプリ)に採用されている。

Metamaskなど主要なウォレットはENSネームを使った送受信に対応しており、長いアドレスの代わりにENSネームを指定して、NFTを含む様々なトークンを送受信することができる。

ENSリゾルバーはレイヤー2「L2(Optimism、Arbitrum、Starkware、ZKSyncなど)」やEVM(イーサリアム仮想マシン)互換チェーンからも通信可能になっており、22年1月時点に17以上のEVMチェーンでENSネームを表示可能になっている。

DeFi(分散型金融)レンディング大手Aaveなど、ENSをサポートしているdAppであれば、どのチェーンで接続しても、自分のプライマリ(第一)ENSネームが表示されるようになっている。下図はポリゴン(MATIC)版AaveでENSネームが表示されている場面だ。

出典:ENS公式Medium

さらにENSは21年8月に「.eth」だけでなく、DNSで取得している従来のWebドメイン( .com等)を統合。既にDNSを所有している組織や人は、ENSでもドメインを使用できるようになった。下図は右上のアドレス表示欄に「.com」ドメインが表示されている。

出典:ENS公式Medium

DNSに対してデータ作成元の認証やデータの完全性を確認できるようにする「DNSSEC」を、ENSの「DNSレジスター」にインプットすると、ETHアドレスで所有するENSネームのサブドメイン(例:_ens.yourdomain.tld)にDNS名を登録できる。ENSネームを元にウォレットアドレスの情報を検索する「ネーム・レゾリューション」が可能になり。要求に対して、ENSの「DNSSECオラクル」がオフチェーン接続を処理する。

米国の仮想通貨取引所コインベースはブラウザ拡張版「Coinbase wallet」でENSに対応しているだけでなく、独自ドメイン「cd.id」をENSにインポートしている。取引所ユーザーは好きなIDを指定して「Username123.cd.id」のようなサブドメインを無料で取得できるようにしている。

関連:ウェブブラウザ版「Coinbase Wallet」、読みやすいウォレットアドレスを無料提供

Web3とENS

ENSは、今後到来するWeb3(分散型ウェブ)社会において、あらゆる中央集権型組織から切り離されたアイデンティティを表す「分散型ID(DID)」の役割を担うと期待されている。

既に、多くのWeb3ユーザーがENSネームをコミュニティのユーザーネームとして使用している。22年1月には、ツイッターがプロフィールアイコンをNFT画像に変更できる機能を実験的に導入したため、ENSネームを使用することもできるようになった。

関連:ツイッター、NFTをプロフ画像に表示する機能を提供

イーサリアムコミュニティの枠組みを超え、幅広い分散型ID(DID)として相互運用性を実現するために、既存のENS名をラップする分散型エージェント「Veramo」との取り組みも進行している。

一方、10月にはAaveの分散型ソーシャルメディア「Lens Protocol」がENSと提携。ENSリゾルバーを使って、Lensの各種データを照会できるようにした。

Lens Protocolは、分散型のソーシャルメディアネットワーク構築ソリューション。Lens Protocol上でユーザーは、音楽やゲームのSNSプラットフォームなどを構築することができる。

LensはまさしくENSをWeb3基盤のDNSとして利用していくようだ。ユーザーネーム、プロフィール写真、カバー画像、アドレスなど「.xyz」ベースのLensデータが、ENSレジスターと適合するようになっている。「Lensのようなデータストアは安全で信頼できる検索手段を必要としており、この分野ではENSほど優れたパートナーはいない」とLensは述べている。

ガバナンストークン

イーサリアム・ネーム・サービス(ENS)は2017年の設立以来、分散型自律組織(DAO)で運営してきた。21年11月にプロジェクトはDAOガバナンスの分散化に向けて、ガバナンストークンENSを配布した。

発行量1億ENSのうち、半分はコミュニティ育成用に配分され、4分の1はENSの開発貢献者に、残りは、2021年10月31日までにENSネーム(.eth)を契約したユーザーにエアドロップ(無料配布)された。

同時期にENSはコミュニティ代表者を募集。選ばれた代表者は個人の投票に代わり、コミュニティの意思決定に貢献していく。ENSのDAOデリゲート(代表者)として選ばれた米コインベースは、ENS DAOで初めての投票を開催した。

関連:米コインベース、Ethereum Name ServiceのDAO提案に投票

ENSトークンの保有者は、関連プロジェクトの資金配分やDAOディレクターの任命などについても投票できる。ケイマン諸島で法人化されたENS FoundationがDAOの管理下に置かれ、現実世界でDAOを代表する。

CoinPost App DL
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
03/07 金曜日
10:35
ブラジル企業メリウズ、ビットコイン財務戦略開始 6億円相当のBTC購入
ブラジルのフィンテック企業メリウズが財務資産としてビットコインを購入した。保有現金の最大10%をビットコインに投資可能としており、今後の拡大も検討している。
09:45
ワールドコイン、新機能「ワールドチャット」をローンチ
OpenAI共同創設者サム・アルトマン氏のワールドコインが新機能のワールドチャットをベータ版としてリリース。テキストメッセージのやりとりに加え、仮想通貨の送受金もできる。
08:30
ビットコイン小幅な値動き、ホワイトハウス仮想通貨サミットを控えた市場の動向|仮想NISHI
仮想通貨サミットを控える中、仮想通貨ビットコインは小幅な値動きにとどまった。米株式市場は関税政策を巡る不透明感や米景気減速への懸念から下落したものの、ビットコインは24時間前と比較してほぼ変動が見られなかった。
07:30
SUI、トランプ一族のワールド・リバティの準備金採用で価格急騰
仮想通貨スイのチームは、トランプ大統領が関与するDeFiプロジェクト「ワールド・リバティ・フィナンシャル」と協業する。マクロ・ストラテジーにSuiブロックチェーン上の資産が加わる計画だという。
07:15
トランプ大統領、ビットコイン準備金設立の大統領令に署名 サックス特命官が報告
ブルームバーグやSolid Intelなどの情報源によると、トランプ大統領は明日、ビットコイン準備金を設立する大統領令を検討し、発表する可能性が浮上した。
06:35
ソラナ共同創業者、米国仮想通貨準備金構想に懐疑的見解
ソラナ・ラボ共同創業者ヤコベンコ氏がトランプの仮想通貨準備金構想に懐疑的見解を表明。「準備金なし」か「州単位の管理」を提案。アルトコインXRP、SOL、ADAの価値保存機能への疑問と政府介入の懸念が広がる。
06:05
米仮想通貨特命官サックス氏、過去10年間「米政府のビットコイン売却で2.5兆円損失」と批判
ホワイトハウスの仮想通貨サミット直前、デビッド・サックス特命官が米政府のこれまでの19.5万BTCの売却を批判した。
05:45
テキサス州上院、ビットコイン戦略準備金法案を可決 下院審査へ進む
テキサス州上院がビットコイン戦略準備金法案を25対5で可決。下院審査と知事の署名を経て法制化へ。ニューハンプシャー州やユタ州など他州も仮想通貨の公的資金導入に向けた法整備を進める。
03/06 木曜日
17:40
自民党が制度改正案公開、暗号資産・分離課税への道筋
自民党web3WGが暗号資産を金商法内の独自アセットクラスとして位置付ける制度改正案を公表。現行の雑所得課税(最大55%)から金融所得課税(20%)への移行を目指し、投資家保護と市場発展を両立。6月に方向性公表へ。
13:55
DeFi経済でソラナ優位の時代に突入か、フランクリン・テンプルトンがイーサリアムと比較分析
米大手資産運用企業フランクリン・テンプルトンは最新レポートで、ソラナのDeFiプロトコルがイーサリアムを上回る取引量を記録と指摘。DeFi経済でソラナ仮想マシン優位の時代が到来する可能性があると述べた。
13:10
Canary Capital、仮想通貨Axelarの現物ETFをSECに申請 価格14%上昇
Canary Capitalが仮想通貨Axelar(AXL)の現物ETFを米証券取引委員会に申請した。AXLは69のブロックチェーンを接続する相互運用性プラットフォームで。その成長と将来性に期待している。
10:45
「トランプの仮想通貨準備金構想はゲームチェンジャー」Bitwise分析
Bitwiseのマット・ホーガン氏がトランプ大統領の仮想通貨準備金構想を分析。市場の反応や今後の展望、他国への影響などの重要ポイントを解説している。
09:30
コインベース、米国でのデジタル証券(ST)事業に高い関心
仮想通貨取引所コインベースは、デジタル証券(ST)事業に高い関心を示している。背景には米トランプ政権による規制緩和への期待感がある。
09:20
カルダノ共同創設者ホスキンソン氏、ホワイトハウス仮想通貨サミットへの招待を否定
トランプ大統領がADAを米国仮想通貨準備金に含むと発表したにも関わらず、カルダノ共同創設者チャールズ・ホスキンソン氏はホワイトハウス仮想通貨サミットに招待されていないことが報道された。情報源によると氏のVIPディナー参加の主張も事実と異なる可能性。
08:05
ビットコイン9万ドル回復、仮想通貨準備金法案への期待高まる|仮想NISHI
仮想通貨市場は続伸しビットコインは9万ドルを回復した。ラトニック米商務長官が、トランプ大統領が今週、ビットコイン準備金法案の計画を含む仮想通貨政策の大幅な転換を発表する予定であると発言したことが主な要因と考えられる。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧