意味深ツイートから一転
大手暗号資産(仮想通貨)取引所FTXの前CEOだったサム・バンクマン=フリード氏は16日、破産前時点でアラメダの保有資産は負債を上回っていたと発言。最終的な目標は「顧客を大切にすること」など、数日ぶりに破綻騒動について言及した格好だ。
バンクマン=フリード氏(通称、SBF)は先週末12日にCEO職を暫定的にジョン・レイ氏に譲ったばかり。今週14日からは得意のスレッド形式でのツイートを時間差で投稿したり過去のツイートを削除するなど、不可解な言動が目立つ。
2日間に渡り、スレッドは繋げ合わせると「WHAT HAPPENED」(何が起こったのか)になる言葉遊びを披露。FTXや関連企業アラメダ・リサーチの現状について以下のように釈明した。
11) I'll get to what happened. But for now, let's talk about where we are today.
— SBF (@SBF_FTX) November 15, 2022
何が起こったかは、いずれ話す。今は、現在の状況について話そう。
私の知る限りでは、間違いの可能性もあるが11月7日以降の時点では、 マーク・トゥ・マーケット(M2M)でアラメダの保有資産は負債を上回っていた。
…私の唯一の目標は、顧客に対して正しく対応することだ。そのために、私はできる限りを尽くしている。規制当局と直接対面し、チームと連携し顧客のためにできることをしている。
その先に、投資家もいるが、まずは顧客から。
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追記
その後、SBFは日本時間16日正午前後に再び投稿。数週間前まで、FTXは一日辺り100億ドル(1.4兆円)規模の取引量と数十億ドル(数千億円)規模の振替を処理していたが、「気付いた以上に」レバリッジ過多となっていた結果、バンクランと相場の急落が流動性危機につながったと説明した。
この状況を改善する為には「資金を調達して、顧客を完全(資金返済)にして再スタートすることを挑戦するしかない」と言及。失敗が重なっているが、「どこかにたどり着けるかもしれないと思う自分もいる」と胸中を語った。
なお、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の報道では、バンクマン=フリード氏が先週末にかけて80億ドルの負債を返却する為に投資家から資金調達を試みていたという。現時点では、資金調達に成功していないものと想定されており、資金提供の代わりに何をオファーしていたかは不明。
一方で、同氏はすでに先週CEOの座を面目上は明け渡している為、情報が錯綜する状況が続いている。
NYT記事への反論に応答か
CEO職を退いてから数日コメントや声明を控えていたSBFだが、米時間14日にはニューヨーク・タイムズとの独占インタビューに対応。最近ではリラックスする為にオンラインゲームをプレイしていた事などを語っていた。
一方で、同記事内では顧客資産を不正利用した点を認めた反面、訴訟や詐欺などのフレーズが含まれなかった点が業界内で反感を買った。
ブロックチェーン業界の初期に設立された仮想通貨取引所クラーケンの共同創設者Jesse Powell氏は「主流メディアは破綻したポンジの正当化に貢献した説明責任を果たす必要がある」と批判。現在でも、状況を軽視し、FTXの競合である自身やコインベースについては「誹謗中傷的なゴシップ記事」を書いたとして、FTXを助長したと指摘した。
The MSM needs to take accountability for its role in contributing to the legitimization and high status of this insolvent ponzi. Without the media's backing and the endless puff pieces, victims would not have been so trusting with their savings. Even now, they downplay the story. https://t.co/Y10OzaSwEl
— Jesse Powell (@jespow) November 15, 2022
また、個人のプライバシーを重視する「匿名通貨」の一種であるジーキャッシュ(ZEC)の創設者であるZooko Wilcox氏は以下のようにコメントした。
ニューヨーク・タイムズ側の共謀だ。
NYTは権威ある、影響力のある新聞にて、窃盗と詐欺で無数の人々の人生を台無しにした(SBF氏)の悪行を粉飾し、法の網を逃れることを助長した。私は、これが単なるミスであることを疑う。
Disgusting complicity on the part of the New York Times. He has ruined countless people's lives by theft and fraud, and NYT is now helping him to delay or evade justice by whitewashing him in their prestigious, influential newspaper. I doubt this is just a mistake on their part. https://t.co/tNQ1tPCAEF
— zooko❤ⓩ🛡🦓🦓🦓 (@zooko) November 15, 2022
他にも、著名アナリストのAlex Kruger氏も同記事が詐欺や犯罪、ハッキング、サーバーの消去、市場操縦などに関する言及が皆無だった点を非難。SBFは「本来ならポンジ・スキームで服役した金融詐欺師のバーニー・マドフ氏の後継者」と批判している。
このような批判に回答する格好で今回の釈明に至った可能性が考えられる。
ハッキング犯は現在も逃亡中
なお、FTX破綻後に発生したハッキングの犯人は執筆時点では、現在も資金を保有。不正アクセスした仮想通貨は全てイーサリアム(ETH)に換金しており、保有総量は400億円相当の22万ETHにのぼる。これはネットワーク全体でも35位の規模だ。
The FTX exploiter, who has been dumping all other drained assets for ETH, is now one of the largest holders in the world, with 228,523 ETH ($284.82m) currently in their wallet.
— Dylan LeClair 🟠 (@DylanLeClair_) November 15, 2022
Everyone should keep an extremely close eye on what happens next… pic.twitter.com/SAP3UkyVaa
FTXやアラメダ破綻までの経緯やこれまでの動向は以下の記事で詳しく解説している。
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