国際決済の課題を解決へ
三菱UFJ信託銀行は、Web3企業のGincoとともに、ステーブルコインを活用して暗号資産(仮想通貨)企業向けに国際決済の仕組みを構築することがわかった。日経新聞が2日に報じた。
日本円建てと米ドル建てのステーブルコインを発行し、海外の事業者との仮想通貨のやりとりにおいて効率性を向上させたり、手数料を安価にしたりすることが目的。発行時期は2024年の予定だ。
発行にはプログマ(Progmat)の基盤を活用。ビットバンクやメルコインらが発行の検討に加わり、ほかにも国内外の仮想通貨交換業者に参加を呼びかけていくことを計画している。
プログマはもともとデジタル資産の基盤として三菱UFJ信託銀行が開発をしていたが、今年9月に分社化を正式発表。NTTデータやSBI PTSホールディングスら8社で株主間契約を締結した。
関連:三菱UFJ、国際で利用可能「国産ステーブルコイン」は2024年前半か
ステーブルコインとは
価格が常に安定するように設計された仮想通貨のこと。法定通貨または仮想通貨に価値が裏付けられていたり、アルゴリズム等で価格を安定させたりする様々なステーブルコインが開発されている。
▶️仮想通貨用語集
関連:初心者にもわかるステーブルコインとは|特徴やユースケースを解説
具体的な取り組み(11/7追記)
三菱UFJ信託銀行やGinco、プログマらは6日、今回の内容について正式にプレスリリースを発表した。
円建てのステーブルコインの名称は「XJPY」で、米ドル建ての方の名称が「XUSD」。これから協業して進めるのは、仮想通貨交換業者間の資金決済効率向上を目的とした「業界横断ステーブルコイン」の発行に向けた共同検討だと説明した。
今回の取り組みの背景にあるのは、仮想通貨企業における課題。現在、世界の仮想通貨市場における交換業者やリクイディティ・プロバイダー(LP)間における自己勘定取引の資金決済はステーブルコインでの取引が主流だが、日本の事業者を含む仮想通貨市場においては未だ銀行送金での資金決済が主流となっているという。
プログマの齊藤CEOの説明によると、例えば交換業者Xの顧客群で圧倒的に需要が勝っている場合、他の交換業者Yから仮想通貨を調達(自己勘定で購入)し、スプレッドを載せて自社の顧客に売却することで収益を得られるチャンスが生まれるという。
ただし、こういった場合XとYの需給にそこまで大きな差はないのがほとんど。こういう場合に海外のLPから自己勘定で仮想通貨を購入する必要があるという。
こういった企業間購入時の決済を日本企業が実施する場合に行われているのが銀行送金。その上、海外のLPはわざわざ日本に法人をつくって対応しているという。この決済に、24時間365日やりとりできるステーブルコインを導入しようというのが今回の取り組み。現状では、銀行の営業時間の制約も受けてしまう。
なお、上記画像にも書かれているCumberland Globalという企業が海外のLPである。
国内の動向
日本では今年6月に改正資金決済法が施行され、法定通貨を裏付けとするステーブルコインの発行が可能となった。その後、実際に発行に向けた取り組みが活発になっており、2024年以降に発行が相次ぐとみられている。
新しい法律では以下の2つのカテゴリーに分けられ、流通者には現行の仮想通貨交換業者と同じ資産保全要件が適用される。また、仮想通貨交換業者が発行を行う場合、交換業者とは別の認可が必要になる。
- 発行者:銀行、資金移動業者、特定信託会社
- 流通者:仲介者や取引所
関連:国内ステーブルコイン解禁の影響は?|WebXレポート&インタビュー
発行に向けた取り組み事例としては今年9月、三菱UFJ信託銀行が、Binance Japan(バイナンスジャパン)とプログマの協業による新たなステーブルコインの共同検討を開始することがわかった。
日本法に準拠したステーブルコインの発行・管理基盤である「Progmat Coin(プログマコイン)」を活用し、バイナンスのグローバルなエコシステムと日本市場との連携において核となる、新たなステーブルコインの発行に向けた共同検討を行うという。
関連:三菱UFJ信託銀行、バイナンスジャパンと協業で新たなステーブルコイン検討へ