仮想通貨に対する見解
米証券取引委員会(SEC)の新長官に指名されたGary Gensler氏は2日、米議会上院の公聴会で暗号資産(仮想通貨)に言及した。現地報道各社が報じた。
ビットコインやその他の仮想通貨は、決済や金融包摂に対して新たな考え方をもたらしたと評価する一方、投資家保護の観点から今までなかった課題も生んでいるとの見解を示している。
Gensler氏は以前、米商品先物取引委員会(CFTC)の会長を務めていた人物。米マサチューセッツ工科大学(MIT)でビットコイン(BTC)やブロックチェーンに関する授業を行うなど、仮想通貨に関する知識を持つことで知られている。
今回の公聴会ではMITの授業にも言及しながら仮想通貨に対する考え方を示し、「SECの長官に正式に就任した際はコミッショナーと協力し、技術革新と投資家保護を両立できるように取り組む」と語った。
公聴会での質問
公聴会では仮想通貨に関する言及も多かった。Gensler氏はSECの責任の範囲について、仮想通貨を政府がどのように分類するかによると説明。これまでと同様、有価証券であればSECの管轄になるし、コモディティ(商品)であればCFTCの担当になると述べた。その上で、仮想通貨も詐欺や価格操作が起きてはならないと不正対策へ注力する姿勢を強調した。
Gensler氏は今までと同様の論理に従って、仮想通貨が有価証券に該当するかを判断していく模様だ。一方で今まで規制が明確でなかった点については、「SECがルールを定め、規制を明確にすることが重要だ」としている。
ゲームストップ株騒動
公聴会では、大手掲示板サイト「Reddit」に集う個人投資家が、米ゲームソフト小売大手「ゲームストップ」の株価を急騰させた騒動に関する質問も多かったという。1月に個人投資家が集団でヘッジファンドが空売りしている銘柄を買い、株価を暴騰させた問題だ。
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この件についてはGensler氏は、取引に利用された人気の高いアプリついて詳しく調べると説明。「この騒動は、投資へのアクセスを拡大した新しい技術によって起きた問題だ」との認識を示している。SEC長官に就任した際は、潜在的な価格操作の可能性について調べ、ルールの変更が必要がどうかも調査していくと語った。
なおこの騒動については価格操作だけでなく、ヘッジファンドによる大量の空売りや取引アプリを提供するロビンフッドの経営なども論点として上がっているという。米国の金融業界は、トランプ前政権下で緩和された規制環境に対するバイデン政権の対応に注目している。
新長官就任への影響
ナスダック上場企業MicroStrategyや電気自動車(EV)メーカー「テスラ」のビットコイン購入、決済大手PayPalの業界参入などを受け、最近ではビットコインを初めとする仮想通貨への認識が変わってきている。
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この流れを受け、米国でもビットコインETF(上場投資信託)を申請する動きが広がってきた。相場操縦のリスクがあることやカストディ環境が十分に整備されていないなどの理由で、米国ではビットコインETFが承認された事例はまだない。
1日には米シカゴ・オプション取引所(Cboe)が、VanEckのビットコインETF申請に関する書類をSECへ提出した。この書類はETFが上場する上で必要な「ルールチェンジ」を実施するための申請資料に相当。今後、SECが申請プロセスに進むかの可否判断を行い、審査が決定すれば、最初の期限となる45日間の審査プロセス(ETFの可否判断)が開始される。
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ブルームバーグのETFリサーチアナリストJames Seyffart氏は1月、「Gensler氏がSECの長官になった場合、2021年中に米国でビットコインETFが承認されると考えている」とコメントした。
Sticking my neck out a bit — I think we'll see a U.S. Bitcoin ETF in 2021 if Gensler is confirmed to run the SEC. The guy is extremely knowledgeable on Blockchain/crypto. He even teaches a class at MIT on the topic. You can watch 24 of his lectures here:https://t.co/Cp0bRb1zWs pic.twitter.com/kNNW4EOpvr
— James Seyffart (@JSeyff) January 22, 2021