米ドルへのアクセス手段として需要
米暗号資産(仮想通貨)企業Paxosは13日、ラテンアメリカのデジタル資産市場と消費者の動向を取りまとめたレポートを発表した。
レポートの題目は南米の仮想通貨普及を促進する要因。ラテンアメリカでは、ECサイトを展開するメルカドリブレ(Mercado Libre)や新興銀行Nubankなどが、仮想通貨への対応を始めるなどデジタル資産の普及が拡大しつつある。
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ブロックチェーン分析企業「Chainalysis」は2019年から2021年にかけて、同地域における仮想通貨の使用量が1370%増加した説明。
レポートは、このような動きの理由を調査した内容で、仮想通貨の利用が増えている要因として、以下の3つを挙げた。
- インフレヘッジとして米ドルへのアクセス目的
- 簡単かつ安価なクロスボーダー送金
- 伝統的な銀行から、新たなサービスプロバイダーへの乗り換えを志向する動き
消費者主導の仮想通貨普及
Paxosは、ラテンアメリカでのデジタル資産の普及は、金融機関や規制当局ではなく、一般消費者が主導する形になっているのが特徴と指摘。
一方、その使われ方は様々で、個人投資家はより柔軟な投資機会として仮想通貨を認識していると説明。中産階級は、投資ポートフォリオの多様化に仮想通貨を使用していると考察した。
また、ベネズエラなど経済的な課題を抱える国ほど、仮想通貨導入に前向きな傾向が強いことが確認されたとした。
マスターカード社の調査では、ラテンアメリカ圏の消費者の半数が最低でも1回の仮想通貨送金を行い、うち33%はステーブルコインを使用して、日常的に買い物を行っていることが明らかになっていた。
ネット環境の整備が普及促進
ラテンアメリカでは、歴史的に中央集権的な金融機関や政府が支援する金融機関に対する市民の信頼度が低く、ブロックチェーンバンキングが有力なオプションとなっているとPaxosは説明。
このほかにも、金融アプリの普及や、デジタルウォレット、スマートフォン、ゲーム機などからインターネットに容易にアクセスできる環境が整い始めていることが、銀行口座を持たない人の参入障壁を下げつつあると指摘した。
金融システムへの接続性が高まったことで、決済、国際送金、投資、価値の保存といった領域で、仮想通貨やステーブルコインの利用率が増加していると論じている。
また同社は、海外で働き、本国に送金する出稼ぎ労働者がステーブルコインを使用されるケースが多いと指摘。、経済的に困窮した難民などの間でも、資金の移転用に仮想通貨が用いられていると報告した。
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規制の明確化が必要
一方で、大型の金融機関や銀行などの、仮想通貨領域への本格的な参入は、各国での規制や税制の明確化が必須であると、Paxosは説明。
資金洗浄対策やバランスシート上の仮想通貨の取り扱いが確定する必要があるものの、本格参入後は、大きな成長が期待されるとしている。
加えて、市場の安定のためには、ステーブルコインが成功することが重要であるとも予測した。
インターネット環境の整備が進んでいることや、現在の景気不況などを受け、仮想通貨の普及は今後も全体的に進むと結論付けた。
Paxosのマイケル・コセッタ収益責任者は、今回のレポートの内容について以下のようにコメントした。
社会経済、技術、規制、文化などのさまざまな力が結集することで、過去2年間で仮想通貨は、ラテンアメリカの主流の金融システムにより近づいたことを確認している。
仮想通貨市場が何百万人もの消費と貯蓄の力を高め、イノベーションの推進に貢献する可能性があることは、とても興味深いことだ。
大手クレジットカード企業も展開を開始
ラテンアメリカで現在、普及が進みつつあるのがクレジットカードを使った仮想通貨決済だ。
マスターカードは、8月に南米アルゼンチンで、大手あ仮想通貨取引所バイナンスと提携した「Binance Card」のパイロットプログラムを開始。
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同取引所のウォレットアカウントと連携し、従来のデビットカードと同じように支払いが行える仕組みとなっており、買い物や公共料金の支払いだけでなく、世界の9,000万以上のマスターカード対応のオンライン店舗でも利用可能だ。
また、スタートアップ企業Ripioは米決済大手Visaと提携し、ブラジルで仮想通貨プリペイドカードを提供中。28種類の仮想通貨での支払いが可能で、ビットコイン(BTC)で5%のキャッシュバックを得ることができる。Ripioは、年末までにブラジルで25万枚のカードの発行を見込んでいる。