イーサリアムの課題を分析
暗号資産(仮想通貨)投資企業CoinSharesは25日、イーサリアム(ETH)がどのように使われているかを分析したレポートを公開した。
イーサリアムはエコシステムが発展してきているが、ネットワークにおけるトランザクションに偏りが見られると指摘。今後の課題は、ユーザーに長期的な価値を提供できるような実用性を促進することであるとの見解を示している。
今回のレポートは25日に公開されたが、掲載されているグラフを見ると8月30日付近のデータを使用。また、レポートには、昨年の終わりから分析を開始したと書いている。
CoinSharesは、仮想通貨としてのイーサリアムの価値を高めているのは、主にトランザクションに対する需要だと指摘。現状は、ステーキングして利回りを得るために利用したり、通貨や担保として使ったりすることが価値を大きく高めているわけではないとした。
そして、エコシステムでは多様なアプリが利用されてはいるが、需要がデジタル資産の取引に偏っているとも指摘。特に、広く取引されるわけではない比較的マイナーな仮想通貨やNFT(非代替性トークン)の需要が高いと述べている。
その上で、最も取引手数料のマーケットシェアが高いのはDEX(分散型取引所)大手のユニスワップだと分析。そして、現在イーサリアムは投機による利用が多いのではないかとの見方を示している。
もう1つのユースケース
また、CoinSharesは、イーサリアムの基盤になっているユースケースとして「トークンの送信」も挙げ、長期に渡ってネットワーク活動の中心になっているとも説明した。
多様なトークンが送信される中で、使用される取引手数料の点から見ると、現在はイーサリアムとステーブルコインの移動が多く行われていると指摘。以下の画像は、2015年8月から今年8月までの期間において、どの資産の送信でどのくらい取引手数料が支払われたかを割合で示したグラフだ。
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レイヤー2との関係
他にもCoinSharesは、L2ネットワークとイーサリアムの関係にも言及。イーサリアムのエコシステムでは過去数年間、L2技術の開発によって拡張性を高めることが大きな目標になっており、これは全ての指標から大きく成功していることが示されていると評価した。
L2とは
「レイヤー2」の略で、「2層目」のネットワークのこと。全ての取引をメインチェーンで処理すると負荷が大きくなり、処理速度の低下やネットワーク手数料の高騰につながる。取引の一部をL2で行うことで、メインチェーンの負荷軽減や処理速度の向上を期待できる。
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一方で、L2のブロックチェーンがイーサリアムの主要なユースケースを奪うことにもなっているとし、仮想通貨イーサリアムの価値とエコシステム全体の関係が複雑化してきたと指摘している。
CoinSharesは、「EIP-4844」の実装でL2の取引手数料が下がったことでL2の魅力が高まっていると分析。そして、この実装は、イーサリアムの取引手数料の一部をバーン(償却)するために導入された「EIP-1559」と競合しているのではないかとの見方を示した。
なお、CoinSharesは今回課題を複数指摘したが、イーサリアムの未来にひどく懸念を示しているわけではない。レポートでは、イーサリアムのコミュニティは変化することにオープンで、新しい目標に向かってエコシステムを変えることに前向きであると説明している。
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