ビットコイン、20年3月以来の大幅下落
2月第4週の暗号資産(仮想通貨)市場。週明け一時は600万円目前まで上昇していたビットコイン(BTC)は23日に100万円幅の急落を見せ、アルト市場も全面安となった。ビットコインは50万ドルラインを回復しきれていない状況だ。
時価総額2位のイーサリアム(ETH)も先週のATH(過去最高値)から反落。28日時点では15万円代を推移している。
26日には米債券(ボンド)市場で10年物債利回りに注目が集まり、一部では仮想通貨市場と株式市場の相関性が高まりつつある傾向が指摘されていた。米国の株式指数の代表格であるS&P500とビットコイン価格は昨年末から連動している見方も強まりつつある。
Equity / Crypto correlation is on the rise this week with all eyes on the bond market pic.twitter.com/rrkAZHeQcV
— skew (@skewdotcom) February 26, 2021
先週のビットコイン関連での主なニュースは以下の通り。
- テザー社とNYAGが「和解」
- コインベース上場書類を米SECに提出
- マイクロストラテジー追加購入
テザー社と米ニューヨーク司法当局が「和解」
23日夜には係争中だった大手仮想通貨取引所Bitfinexと米ニューヨーク司法当局(NYAG)が和解。BitfinexとTether社側は不正を認めなかったものの、1850万ドル(19.4億円)を支払うことで2年半以上も続いていた裁判が終了した。
変動率の高い仮想通貨と比べ、価格が米ドルなどに裏付けされているテザーは流動性の高い資産として重宝されており、CoinMarketCapのデータによれば28日時点でテザー(USDT)の過去24時間の出来高は940億ドル(約10兆円)を記録している。
関連:テザー裁判、和解へ
コインベース上場書類を米SECに提出
また25日には米国の大手仮想通貨取引所コインベースが米証券取引委員会(SEC)に証券登録届出書(Form S-1)を提出したことが判明。ナスダックへのDPO(直接上場)を目指して提出された書類にはコインベースの業績や、クライアントの投資家の内訳のほか、コインベースが自社のバランスシート内で仮想通貨を保有していることもわかり、注目を集めた。
一服気味の現物相場への影響は限定的かもしれなかったが、20年の売上高が12億ドル(約1200億円)以上を記録したことから、金融業界からも仮想通貨業界のポテンシャルが着目される事例となり得る。
関連:米コインベース、ナスダックに上場へ 証券登録届出書が公開──時価総額10兆円規模の可能性も
マイクロストラテジー追加購入
また24日には昨夏からビットコインを企業資産として大体的に買い増ししている米マイクロストラテジー社が約1000億円相当のビットコインを追加購入したことが報道された。新たに19452BTCを23985ドル(254万円)の平均取得額で購入することで、同社の保有するBTCは総計90531BTCとなった。
関連:マイクロストラテジー社、1000億円相当のビットコイン追加購入
前週(2月第3週)の週次レポート:先週の高騰アルトと次週の注目ポイント・データから見るビットコイン市場は?|CoinPost週次レポート
時価総額TOP20銘柄(前週比)
関連:2015〜2020年、仮想通貨「時価総額TOP20」の顔ぶれと変化
2月第4週の仮想通貨市場ではビットコインが週の始めに100万円以上急落した影響で上位銘柄でもカルダノ(ADA)など一部銘柄を除き、全面安となった。
大型アップデート「Mary」を来週2日に控えるカルダノ(ADA)は27日に18年1月以来、3年ぶりに過去最高値を更新するなど、週間の騰落率では33%を記録。先週好調だったバイナンスコイン(BNB)やテザー(USDT)を抑え、時価総額3位に浮上した。
関連:仮想通貨カルダノ(ADA)時価総額3位に浮上、3つの背景
またユニスワップ(UNI)やCrypto.comコイン(CRO)も騰勢を強めた。Crypto.comコイン(CRO)は22日、700億CROの大規模なトークンバーンの実施とメインネットのローンチ(3月25日)を発表。メインネットローンチ後は分散化の精神に基づき、名称もCrypto.comコインからCrypto.orgコインに変更される。
発表直後、CROは1時間で約60%も暴騰、週間では12%の上昇を見せた。
関連:Crypto.com、大規模バーンとメインネットのローンチ日を発表
ビットコインのオンチェーンデータ
ビットコイン市場を追う上で異なる視点を提供する指標を掲載。
CMEのビットコイン先物取引のOI(未決済建玉)
米シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の提供するビットコイン先物のOI(未決済建玉)は継続して先月の19.6億ドル(約2000億円)から30%以上も上昇している模様だ。今月のOIは執筆時点で25.3億ドル(約2700億円)となっている(データ:コインポスト提携メディアThe Block)
また仮想通貨データ分析を行うbybtのデータによれば、仮想通貨取引所の提供するビットコイン先物なども含めたOIは、ビットコインの急落に伴い減少したことが伺える。
米グレースケール社の仮想通貨購入
今週の購入枚数
BTC:+267BTC(累計で約655,730BTC)
ETH:+15405ETH(累計で約317万ETH)
仮想通貨市場の全面安も影響して、グレースケール社の資産運用額(AUM)は先週比で80億ドル(約8500億円)も減少した。
月間ベースで見ると、グレースケールの投資信託には、それぞれ総額370億円相当のビットコイン(7540BTC)とイーサリアム(239972ETH)相当額が流入している。(価格は28日時点を参考)
グレースケール社は、新たにアルトコイン銘柄23種類の仮想通貨投資信託を検討している。同社CEOのMichael Sonnenshein氏は全ての銘柄は提供されるとは限らないとしつつ、「より多様なプロダクトを提供する責任がある」と述べている。
関連:米グレースケール、23銘柄の新規仮想通貨投資信託を検討
グレースケール投信の価格乖離が初のマイナスに
注目ポイントは、グレースケール社の提供するビットコイン投資信託(GBTC)の現物価格とのプレミアム(価格乖離)がマイナス域に達した点だ。
GBTC secondary closed at a discount to NAV pic.twitter.com/R792RQi5M1
— skew (@skewdotcom) February 26, 2021
米仮想通貨投資大手のグレースケール社の提供する仮想通貨投資信託商品は、証券口座のニーズや税制の優遇などを踏また需要が高かった事でも知られる商品で、現物価格にプラスに乖離するプレミアムがあることで知られていた。代表的な投信のGBTC(ビットコイン投資信託)では過去には30%以上の価格乖離があったこともあるほどだ。(例:現物100万円相当:GBTC130万円相当)
機関・適格投資家のみを対象に私募が発行されるGBTCでは、適格投資家らがビットコイン又は米ドルをグレースケール社に資金投資する対価として1シェアあたり約0.001BTCに相当する投資信託が配布される仕組みを取っている。
投資信託は半年間ロックアップされるが、その後、流通市場で販売することも可能となる。この際に発生するプレミアム分を狙ったGBTCの購入目的は、機関・適格投資家資金の流入を後押ししていたが、マイナス域に転じたことで、GBTCへの需要を減少する要因になる可能性がある。
これまでは1シェアあたり約0.001BTCに相当する投資信託の価格と現物価格の乖離がプラス(≒プレミアム)だったが、今回初めてマイナスに転じて事実上のディスカウントとなった格好だ。
中国の仮想通貨事業に精通するDovey Wan氏はGBTCの価格乖離のマイナスについて、グレースケール社以外でもビットコインETPなど仮想通貨やビットコイン関連した金融商品が普及してきた影響だと考察。BTCを直接保有せずに、市場にエクスポージャーを持つ機会が増えてきている点が、需要低下の一因と分析している。
GBTC premium is expected to go down to flat given 1) more unlocks so higher circ mcap 2) more substitutes are available to have BTC price exposure
— Dovey “Rug The Fiat” Wan🪐🦖 (@DoveyWan) February 26, 2021
Its premium is contributed by US retail, another degree to evaluate retail sentiment with the funding rate for degen sentiment
今月、北米のカナダではビットコインETFが相次いで承認されており、トロント証券取引所に上場したPurpose Bitcoin ETF(BTCC)は取引開始1週目で約10000BTCを運用している。Wan氏と同様、他の専門家もこのように仮想通貨の現物価格に連動する金融商品の台頭が、これまでグレースケールに集まった需要を減少させているとの見方を取っている。
BTC市場への影響
グレースケール社はビットコインの最大供給量の2100万枚の3%に相当する約65万BTCを保有している為、現物市場への影響は予々考察されてきた。
仮想通貨アナリストのBen Lilly氏は、グレースケール社の投資信託がロップアップ期間から解禁される時期が現物市場にプラスの影響を与えていると指摘する、「グレースケール効果」(Grayscale Effect)を提唱してきた。
Lilly氏によればビットコイン価格が、マスク氏のツイートやテスラ社のBTC購入の報道後から先週まで上昇継続できた要因の一つがグレースケールのアンロック期間が関係しているという。
半年前(20年8月)のグレースケール社の四半期レポートなどを参考にLilly氏は2月にはアンロックされたGBTCが多かったと指摘する。昨年9月のビットコイン保有数の増加量によれば3月にアンロックされるGBTCの枚数は少ない為、短期的にはマイナス要因となり得るものの、4月以降は再びアンロックされるGBTCが増加するとLilly氏は考察した。
グレースケールの価格乖離(≒ディスカウント)の影響は未だ未知数な部分が多いが、アンロック数は念頭に置く指標の一つとして経過を伺ってもいいだろう。
関連:ビットコイン投資信託ルールから読む仮想通貨市場の警戒ポイント
マイナーポジション指数(MPI)
Moskovski Capital社CEOのLex Moskovski氏は27日、過去2ヶ月間売りに走っていた採掘業者(マイナー)が一転して保有していると指摘。昨年12月末から売りが強まっていたマイナーのネットポジション(買いと売りの差≒実際のポジション)がプラスになったと説明した。
これまで採掘業者からは売り圧力が平均より強まっていたが、Moskovski氏は今回ネットポジションがプラスに転じたことは相場にとって好材料だと述べた。
Miners have stopped selling and started accumulating #Bitcoin
— Lex Moskovski (@mskvsk) February 27, 2021
Yesterday was the first day since Dec, 27 when Miners Position change turned positive.
Miners were selling their bitcoins for two months.
Bullish. pic.twitter.com/S89iBcz4k3
ビットコインのマイナーの動向を察知する上で有用な指標であマイナー・ポジション指数(MPI)も26日時点の数値は平均より高い売り圧を示す「2.0」のラインを超えている。
イーサリアムのオンチェーンデータ
ETH2.0ステーキング
デポジット額:331万ETH(前週比 317万ETH)
ステーキング率:2.89%(前週比 2.67%)
イーサリアムのガス代
平均取引手数料:158Gwei(前週:183Gwei)
イーサリアムのガス代は22日、一時500Gweiまで高騰。その後26日時点では平均取引手数料は前週より低い158Gweiまで低下した。
CoinMetricsのLucas Nuzzi氏はビットコインとイーサリアムの取引手数料の相関性が今月に入り、再び高まっている傾向を指摘している。
過去6ヶ月間、双方のネットワークを利用したユーザーはBTCとETHを両方保有しているとの見方ができると持論を展開した。
BTC and ETH average transaction fees have never been this correlated.
— Lucas Nuzzi (@LucasNuzzi) February 26, 2021
One interpretation is that most users that have interacted with these networks in the past ~6 months own both assets 🤔 pic.twitter.com/FKGftBIEpZ
DeFi(分散型金融)
昨夏から右肩上がりだったDeFiプロトコルへの預入額を示す総ロック額(Total Value Locked)はビットコインとイーサリアムの下落に連動するように減少。先週の過去最高値だった420.9億ドル(約4.4兆円)から10%以上も下がった。
DeFiプロトコルへ預入れされた仮想通貨資産の総ロック額(TVL)
TVL:366.7億ドル(約3.9兆円):(前週比-12.9%)
関連:DeFi(分散型金融)とは? 特徴と仕組みを初心者にもわかりやすく解説
クリプト指標
日程 | 指標 |
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2021年3月2日 |
カルダノ「Mary」メインネットローンチ |
2021年3月2日 |
米SEC長官次期候補GaryGensler氏の指名承認公聴会(米国時間) |
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