2021年初めからビットコイン(BTC)の高騰が続き、バブル再来の呼び声が高い暗号資産(仮想通貨)市場。多くの機関投資家や大手企業が新たに市場参入を果たし、ビットコインは最高価格を断続的に更新、大きな注目を集めました。
実際、2021年中盤から新規参入した方やこれから仮想通貨を始めようと考える方は増加しました。しかし、「どのようなタイミングで仮想通貨は高騰・暴落するの?」、「どのようなトレンドを追っていけば良いの?」など、市場変化の要因について疑問を抱く方も多いでしょう。
本記事では、過去の事例を元に仮想通貨が高騰・暴落した要因やこれから注目しておきたいトレンド、それらの情報収集の方法について包括的に解説します。これから市場について学習していくために、市場が変化する要因の本質について本記事で理解を深めましょう。
- 目次
1.仮想通貨の市場・トレンドの見極め方とは
投資判断を下す上で、まず注目したいのは市場分析です。
何に起因して仮想通貨市場は変化してきたのか。仮想通貨の取引量や需給関係の変化の根底には、どんな事象があるのかを見極めることです。つまり、過去の市場分析が重要になってきます。
ただ、それだけでは不十分でしょう。毎日、凄まじいスピードで発展し続ける仮想通貨市場では、現在のトレンドを追い続けることが不可欠です。
仮想通貨市場で一人取り残されないために、本記事にて、過去の仮想通貨の高騰・暴落要因に加え、現在多くの投資家に注目されているトレンドについて学習しましょう。
2.過去に注目された仮想通貨の高騰・暴落理由
過去、仮想通貨が高騰・暴落した要因は、大きく分けて「伝統金融市場のリスクオフ(新型コロナウイルス、テーパリング)」、「各国政府の規制と法案」、「機関投資家・大手企業の参入」の3つです。一見、理解し難い内容かも知れませんが、市場変化の本質を見極めるにはとても重要ですので、本章で理解を深めましょう。
2‐1 各国政府の仮想通貨規制と法案
分散型コミュニティ(中央管理者がいない)が前提の仮想通貨市場ですが、現実世界に我々(投資家)や企業が存在する以上、仮想通貨市場と各国政府の政策を完全に切り離すことはできません。
政府としては、市場の中立性をかき乱す動向や国策推進の妨げになる取り組みに規制をかけ、投資家や企業の行動を管理できる範囲に制限したいのです。その結果、仮想通貨市場は一時的に停滞、後退してきました。一方で、仮想通貨に対する前向きな法案可決は、投資家の強気心理を奮い立たせ多くの新規参入者を増やし、仮想通貨市場の成長を後押してきました。
本項では、その中でも多くの注目を受け仮想通貨暴落を促した「米政府のリップル社提訴」と「中国政府のマイニング規制」について解説。その後、仮想通貨市場に激震を走らせた、「エルサルバドルのビットコイン法可決」と「ビットコインETFの法案可決」の2つに触れていきます。
2-1-1 仮想通貨市場を停滞・後退させた要因
20年12月、米証券取引委員会(SEC)は仮想通貨XRPを発行・運営する米リップル社及びGarlinghouse CEO、共同創設者のChris Larsen氏を「証券法違反」で提訴。この報道を受け、大手取引所による関連銘柄XRPの上場廃止や取り扱い見合わせが頻発し、XRPは提訴前の価格から数日で半値以下まで暴落しました。
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21年5月、中国政府は「2060年のカーボンニュートラル(脱酸素)」の国策推進や、ビットコインを利用した犯罪組織による資金調達とマネーロンダリング(資金洗浄)への懸念から、ビットコインのマイニング及び取引に関する規制を強めました。これに伴い、市場は悲観的な見方をされ弱気相場に拍車がかかりました。当時のビットコイン価格は31,000ドル~40,000ドルを推移。
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2-1-2 仮想通貨市場の成長を後押しした要因
まずは、21年6月に中央アメリカに位置するエルサルバドル共和国が議会で可決したビットコイン法について。ビットコイン法では法定通貨の1つとしてビットコインを採用するとして、仮想通貨業界を大きく賑わせました。前代未聞の法案可決に歴史的転換点となったとの見方もあり、当時下落傾向にあったビットコインの相場では、一時6,500ドル(約70万円)の大幅反発がありました。
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さらに、21年9月にはエルサルバドル政府が200BTC(当時レート:11億円相当)の購入があり、その後で追加に200BTC買い増すと発表。この報道は投資家の投資意欲を掻き立て、上昇傾向にあった相場を後押しました。
加えて、米国の証券市場に先物ベースのビットコインETFが上場したことは、資金力のある機関投資家を新たなに仮想通貨市場へ招き入れるきっかけに。21年10月のビットコイン価格は、21年4月の過去最高値だった64,000ドルを更新し、一時67,000ドル付近まで上昇しました。
前述のように、各国政府の規制や法案可決は仮想通貨市場を大きく変化させる起爆剤となり得るのです。
2‐2 機関投資家・大手企業の参入
各国政府の動向以外にも、巨額の資金を動かす機関投資家や大手企業の業界参入、仮想通貨をポートフォリオに組み込む姿勢は、市場変化の大きな要因となります。昨今、米国ではインフレーションが懸念されており、そのリスク回避の策として、デジタルゴールドとしての性質を持つビットコインへ資産分配する傾向が見られます。その結果、仮想通貨全体の価格が上昇したのです。
2-2-1 テスラ社のビットコイン保有
その中でも市場を大きく賑わせたのは、21年2月にSECの資料にて判明した、米電気自動車(EV)大手のテスラ社が約1,600億円のビットコイン保有。情報元がSECだったため、多くの投資家がその信憑性を疑うことなくビットコイン買いに走り、ビットコインの価格は約20分で前日比+10%以上急騰しました。その後、21年3月にはテスラ社がビットコイン決済対応を発表し、前月からの強気を相場に拍車をかけたのです。
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一方で、21年4月にテスラ社は自社保有のビットコインの一部(約300億円)を売却と発表し、市場にはネガティブな材料が残りました。加えて、テスラ社のCEO Elon Musk氏が、ビットコインに関連するクリーンエネルギー使用率の高さを懸念し、21年5月にビットコイン決済の中止を発表。ビットコインの価格は、一時的に前日比-7%ほど暴落しました。
2-2-2 FacebookとSoftbankの業界参入
企業の参入による市場変化はビットコイン市場に止まらず、アルトコイン市場でも大きな盛り上がりを見せることがあります。その一つが、21年10月に大きな注目を集めたFacebook社による社名変更。新しい社名「Meta」はFacebook社のNFT業界、メタバース事業への参入を示唆し、イーサリアム(ETH)を始めとするメタバース関連銘柄が物色されました。特に、メタバース関連銘柄であるDecentraland(Mana)、The Sandbox(Sand)の価格が前日比+20%以上も急騰。
さらにその数日後に、国内大手企業のSoftbankが「The Sandbox」内で大規模な資金調達を主導し、Sandの価格は前日比で+30%以上の上昇を見せました。機関投資家や大手企業の仮想通貨市場の参入は、投資家の注目を集め、仮想通貨の高騰・暴落に拍車をかけ得ることは確かです。
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2-3.伝統金融市場のリスクオフ
昨今、新型コロナウイルスの影響により世界中で様々な経済対策が実施。中でも、基軸通貨のドルを要するアメリカでは、ゼロ金利政策や量的緩和政策の決議し、縮小した経済不況を打開する動きが見られました。
しかし、政策金利の引き下げに加え、量的金融緩和による債権や住宅ローン担保証券(MBS)の買い入れが影響し、インフレ率は目標水準の2%を大きく上回る結果に。そこで、米FRBは高いインフレ率を抑えるためにテーパリング(量的緩和の縮小)、つまり金融資産の買い入れ額を順次減らしていく方針を醸しています。
一般的に、米FRBのような中央銀行が金融資産の買い入れを減らした場合、金融機関の資産は減り、結果として金融機関の金利が上昇します。そのような状況下(金融引き締め)では、市場全体がリスクオフ状態となり、株式や仮想通貨のようなリスク資産の価格が減少するのです。
株式市場や暗号資産(仮想通貨)市場は20年3月以降、大規模金融緩和を伴う官製相場の恩恵を強く享受して上昇してきた経緯があり、テーパリングによる金融引き締めの影響も懸念されました。
直近では、伝統金融市場で新型コロナウイルス(オミクロン株)への懸念や早期テーパリングに影響され米株が安値切り下げ。米株式市場に連られ仮想通貨市場も下落するなど、伝統金融市場との相関性が高まっています。
3.仮想通貨を高騰に導くトレンド
前項では、過去の仮想通貨が高騰・暴落した要因について、実例を用いて解説してきました。本項では、それらの要因をもう少し細分化し、現在仮想通貨業界の中ではどのようなトレンドが注目されているのか説明します。
3‐1 ビットコインETF
ビットコインETFとは、ビットコインの価格指数に連動した上場投資信託。21年2月にカナダで北米初のビットコインETFが承認され、翌月にはブラジルでも証券取引委員会により承認されました。米国でもSECに承認を求める動きが何度か見られましたが、どのETFもSECによる厳しい審査を通過することはできませんでした。しかし、21年10月に米国でも先物ベースのビットコインETFが承認され、仮想通貨市場を成長させる材料に。
ここまで注目される理由は、「ビットコインETFが投資家の裾野を広げる」からです。前述のように、ビットコインETFは機関投資家参入の呼び水になり、中・長期的な資金流入や流動性向上の期待に繋がります。
また、ETFは投資信託として扱われ、国によっては税制面での優遇が受けられます。つまり、ビットコインETFは、今まで納税面を気にして投資に踏み切れていなかった個人投資家層をも掻き立てる好材料なのです。
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3‐2 NFT
NFTとはNon-Fungible Token(非代替性トークン)の略称であり、代替不可能かつ固有の価値を持つデジタルトークン。NFTの性質上、財産の保護に適しており複数産業での活用が期待されています。
21年ではNFTアートを筆頭に仮想通貨市場に新風を巻き起こしましたが、NFTが秘める潜在能力はまだ計り知れません。事実、NFTアートとは別軸で人気を集めつつあるブロックチェーンゲームの多くは、まだ開発段階でありリリースに至っていないゲームがほとんどです。
現在、機関投資家やベンチャーキャピタルから資金調達段階で、21年終わりから22年始めに徐々にリリースが始まるでしょう。ゲームの盛り上がり次第では、関連銘柄が高騰するきっかけとなっています。
4.仮想通貨の暴落に繋がる懸念材料
しかし、仮想通貨市場の全体像を見るには高騰要因だけでなく、暴落要因も十分に理解しておく必要があります。
根底にある問題は、「規制による投資家の市場撤退、流動性の低下」という点です。そもそも、仮想通貨を始め伝統金融商品の多くは、その商品に対する需要と供給のバランスによって価格が変動します。商品を買いたいと思う投資家(需要)が増えれば増えるほど価格は上昇し、その投資家が減る、または売りたい投資家(供給)が増えれば価格は下落するのです。
上記の市場原理を踏まえた上で、本項では仮想通貨市場でネガティブ材料と判断される要因について解説します。
4‐1 規制強化
過去の実例を元に、リップル社訴訟問題によるXRPの暴落や中国当局による仮想通貨規制など、各国政府の規制が暴落要因になり得ると前述しました。では、なぜ政府の規制がそれほどまでに市場へ影響をもたらすのでしょうか。
上記の市場原理は、仮想通貨市場でも相違ありません。その代表例がXRP暴落です。前述したように、リップル社の騒動に伴い、多くの取引所がXRPの上場廃止や取り扱い中止を発表。XRPの将来性への不安は増幅し、XRPから手を引く投資家は後を絶ちませんでした。それが発端となり、XRPの需要は大きく低下し価格が暴落する結果に。
また、上記はリップル社への規制ですが、各国政府の仮想通貨取引所へ対する規制も注視しなければいけません。取引所の規制が投資家の仮想通貨取引、新規参入(需要増加)の妨げになるのは明白です。特に、米国、中国、日本など、大きな金融市場を持つ国の規制は、仮想通貨市場でネガティブに働くことは大いに考えられます。
4‐2 ハッキング被害
昨今、各取引所のセキュリティ強化により減りつつありますが、暴落を引き起こす可能性を秘めているのが「ハッキング被害」です。多くの投資家は、仮想通貨取引所に法定通貨や仮想通貨を預けて取引を行っています。
そのため、ハッキング被害の情報がメディアにより露呈すると、取引所へのセキュリティ不安から資産を引き上げる投資家が増加。仮想通貨を法定通貨に換金する過程で売り注文が殺到し、仮想通貨の価格が暴落する恐れがあります。
5.仮想通貨の高騰・暴落の兆しを探すには
仮想通貨投資では、上記で確認した高騰・暴落の要因をどれほど早く察知できるかが明暗を分けます。本項では、その情報を収集するための手段に適した3つの方法を解説するので、今後の投資に役立てましょう。
5‐1 ニュースメディアを確認
まずは、当メディア「CoinPost」のようなニュースメディアを日常的にチェックすることです。CoinPostでは日々の仮想通貨市場に関する情報(各国政府の取り組み、プロジェクト情報、機関投資家の動向など)を厳選、迅速に情報提供しています。
また、速報やその他重要ニュースをスマホにプッシュ通知する機能や、主要コインの大型アップデート情報など仮想通貨相場に影響を与え得る重要ファンダ情報を確認できる経済指標の仮想通貨版「クリプト指標カレンダー」など、投資家が利用する投資家が優位に立てる機能を実装しいてます。
どのように情報取集すれば良いか分からない方は、CoinPostが提供するニュースや「クリプト指標カレンダー」を確認し市場の動向を読み解く練習から始めましょう。
CoinPostはIOS・Android版のアプリも提供。お手元のスマートフォンで簡単にニュースを確認できます。日・週・月ベースのマーケットレポートも公開しているため、自身で立てた仮説と照らし合わせ、市場の勉強に活かしてください。
5‐2 SNSでの情報を確認
SNSでは公開されたニュースへの反応や各プロジェクトの進捗情報、要人発言などを確認できます。機関投資家だけでなく個人投資家の相場に対する見解を知ることができ、自身の仮説を立てる際の足がかりとなるでしょう。
ニュースメディアのように情報がまとまっておらず様々な情報を追うのが大変な反面、リアルタイムでプロジェクトの進捗・セールス情報や各著名人の発言などをキャッチできるメリットがあります。主に、Twitter、Facebook辺りがよく利用されています。
5‐3 プロジェクト内容(White Paper)をチェック
アルトコインへの投資を考えている場合、企業が提供するプロジェクトの詳細(White Paper)を確認するのも一つの手段です。White Paperでは、そのプロジェクトが何を目的としているか、どのようなチェーン上に設計されているか、独自発行のトークン分配率などが記載されています。
プロジェクトの信憑性を確認できるだけでなく、そのプロジェクトの将来性などを判断する材料となるでしょう。しかし、海外プロジェクトの多くは英語でWhite Paperを公開しているため、ある程度の英語力が必要です。
6.仮想通貨の市場チェックは定期的に(まとめ)
仮想通貨市場の高騰・暴落の要因は、大きく分けて「各国政府の法案可決と規制」、「機関投資家・大手企業の動向」の2つです。これら2つは、投資家の期待を掻き立てることもあれば、不安を増幅させる心配もあります。投資家の仮想通貨に対する需要変化は、市場での流動性に大きな変化を与え、結果として価格変化を巻き起こすのです。
投資家として少しでも利益を出す、または少しでも無駄な損失を減らすためには、投資家心理の本質を理解すること。その糸口として、日頃のニュースメディアとSNSで散見される情報を追い続け、重要か否か取捨選択する必要があります。
本記事が投資家になる皆さんの道標となれば幸いです。
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