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一般社団法人DeFi協会、Web3.0の成長戦略に関する提言を公表

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

日本における現状と課題を指摘

一般社団法人DeFi協会のWeb3.0部会は2日、「Web3.0の成長戦略に関する提言」を発表した。日本のDeFi(分散型金融)分野の課題として法人課税・カストディ規制・LPS法を指摘し、資本の海外流出が止まらない状況に警戒感を示した。

DeFi(分散型金融)とは

「Decentralized Finance」の略。DeFiで行われる金融サービスには、ステーブルコインの発行や通貨の貸出、仮想通貨取引所などがある。イーサリアムのブロックチェーンを利用しているプラットフォームが多い。

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日本における3つの課題

DeFi協会はWeb3.0における重要市場としてDeFiを挙げた。

ユーザーが自身のプレイに応じて暗号資産(仮想通貨)の報酬を獲得できるP2E(Play to Earn)という概念を生み出したGameFi(ゲームとDeFiの融合)や、昨年から大きな関心を集めているNFT(非代替性トークン)とDeFiを融合したNFT-Fiを例に、DeFiは「全てのWeb3.0産業に溶け込み新たな巨大市場を作り出す可能性を秘めている」とした。

また、DeFiの現状として、分散化を目的としたガバナンストークンだけでなく、単にDeFiアプリケーションに組み込まれるゲーム内通貨やNFT担保型トークンなどがあり、トークンの在り方が多様化しているとコメント。しかし現在、日本のDeFi分野には以下のような課題があると述べ、国内企業がWeb3.0領域に参入できないと指摘した。

  • 期末時価評価損益課税
  • カストディ規制
  • LPS法

トークンへの課税

現在の日本では、期末時価評価損益課税によって、法人が期末まで仮想通貨を保有していた場合、期末時(事業年度終了時)の時価が取得時の価格より高い場合、評価益が計上され所得に加えられることで知られている。

同協会は、保有目的別に状況・問題点を整理し、各論点を列挙。主に、「取り扱いが不明となっているものへの情報の明示」と、「課税対象から外す暗号資産の定義」を要求しており、対象をガバナンストークンから自社発行トークン全般に拡大することを提言している。

出典:一般社団法人DeFi協会

ただ、複数の保有目的がある場合や、現時点で存在しない保有目的が現れる可能性があるなど、特殊ケースがあるとし、柔軟な規制の必要性も示唆している。

カストディ規制

カストディ規制とは、2020年5月1日の改正資金決済法の施行により追加された「暗号資産カストディ業務」のことで、暗号資産交換業者に対して、「他人のために暗号資産の管理をすること(当該管理を業として行うことにつき法律に特別のきていのある場合を除く)」を義務化したもの。(資金決済法第二条第七項より)

同協会は、この規制により、設立直後のベンチャー企業にとって、「暗号資産交換業登録は困難」であるとし、「カストディ業務を運営することは実質的に不可能」になったと指摘。

さらに、「秘密鍵の紛失は暗号資産(ユーティリティトークンやステーブルコインなど)およびNFTなどの紛失と同義」であるため、暗号資産だけでなく秘密鍵の管理もカストディ業務の対象となっているとし、「NFTもカストディ規制の影響を受ける」と問題視している。

よりユーザーフレンドリーなサービスを提供するために、DAppsユーザーが暗号資産やNFTを管理するための秘密鍵を紛失しないよう、サービス側で管理できるようにする必要性があると提言している。

LPS法

LPS(投資事業有限責任組合)とは、未公開ベンチャー企業が発行する有価証券への投資のために、VC(ベンチャーキャピタル)を中心とした金融機関等が組成する投資事業組合。LPS法は、その組成における規則を定義しているものだ。

同協会は、LPS法第三条七項により、日本の投資事業有限組合に関して、「投資対象は限定されている」と指摘。ICO(イニシャル・コイン・オファリング)などを始めとする暗号資産(仮想通貨)を活用した資金調達に参加できない状況があると説明した。

また、投資家の有限責任を担保する必要性から、「民法上の組合を選択することも困難」だと見解を示した。

そのため、日本でのWeb3.0事業の投資事業組合は、匿名組合か、海外での組成を強いられる状況となっており、日本のベンチャーキャピタルがトークンへの出資をできるようにする必要性があると提言している。

出典:一般社団法人DeFi協会

世界の状況

DeFi協会は、Web3.0に関心と投資資金が集まっている現在の状況を挙げ、FTX Ventures, Coinbase Ventures, a16zなどを例に、「業界に特化したベンチャーキャピタル」が多数組成されていると紹介。

250社を超える企業に投資をしている米大手暗号資産(仮想通貨)取引所CoinbaseのVC部門(Coinbase Ventures)が、同社の2021年についてまとめたレポートを基に、投資の多くが「トークンへの出資」で、最も多くの投資シェアを占めるカテゴリーはDeFi分野であると述べた。

関連:米コインベース「2021年の仮想通貨市場はベンチャーキャピタルにとっても記録的」

また、海外では大型の資金調達が続々と実現されており、DeFi領域においては、GameFiやNFT-Fiが急速な成長を見せている現状を指摘。投資家と事業者の両サイドにおいて、海外で完結しており、日本はその中に入ることができていない状況が続いているとした。

出典:一般社団法人DeFi協会

資本の海外流出

DeFi協会は、このような3つの課題によって、「日本ではWeb3.0事業にベンチャーキャピタルが投資できないだけでなく、起業家が事業を立ち上げにくい状況」になっていることに加えて、海外への敷居が下がったことや、既存社会に不満を抱く若い人材が多く活躍する社会を背景に、「資本(特にヒト、カネ)の海外流出が止まらない状況に」なっていると警鐘。

シンガポール、UAE(ドバイ)、スイスなど、いずれも仮想通貨税制が起業家を優遇する国々へと移転していると指摘。実際に、日本人起業家によって誕生したいずれのプロジェクト(ASTAR、InsureDAO、UXDプロトコル、JobTribesなど)も、日本に拠点を置かず、海外でのローンチや海外への移転が行われている。

この人材流出問題は、自民党の平将明議員によって、2月上旬の衆議院内閣委員会でも取り上げられていた。

関連:「人材流出が著しい」NFT特別担当の平将明議員、ガバナンストークンへの課税の見直しを要望

同議員は、デジタル社会推進本部の「NFT特別担当」を担っており、NFT、さらにはブロックチェーンを国家戦略に取り入れることを目標に活動している。

課税の問題を1番の問題として述べており、「ブロックチェーン界隈のスタートアップや技術者は日本で創業できず、シンガポールなどの国に行かざるを得ず、ものすごい勢いで優秀な人材、有望なスタートアップが日本から流出している状況」だとして、特にガバナンストークンに対する課税の見直しを訴えている。

また、この問題の当事者として、日本発のパブリックブロックチェーン「Astar Network(ASTR)」を開発するStake Technologies株式会社のCEOである渡辺創太氏も自身の見解を示していた。

関連:「なぜ、日本の仮想通貨税制問題で人材の海外流出が起こるのか?」Astar Network 渡辺CEOが意見

渡辺氏は、現行制度において、「特に法人が保有する仮想通貨の期末課税が問題である」と指摘。Astar Networkも本来は、日本でローンチしたかったが、税制がボトルネックとなり「やむを得ず海外で発行する」形となったという。

この見解には数々の有識者が反応を示しており、外務大臣や防衛大臣などの経験がる自民党の河野太郎広報本部長も「党内で税制改正に向けた議論が始まっている」とコメントしており、税制の改善に大きな関心が集まっている。

先日、CoinPost編集部が平議員へ行ったインタビューでは、これまでの経緯や自身の見解に加えて、党内での今後の動きや、国民に出来る事が詳しく説明されている。

関連:「NFTを国の成長戦略に」自民党デジタル社会推進本部・平将明議員インタビュー

DeFi協会とは

一般社団法人DeFi協会は、DeFiにおけるコミュニティの一部として、分散型組織として活動することを目指している団体。21年9月には、組織の分散化に向けた取り組みの一環として、「ガバナンスフォーラム」の仕組みや「バリデータ会員」の試みなどを発表した。

関連:一般社団法人DeFi協会、正会員(企業・団体、個人)の入会受付を開始

DeFi協会の設立目的および活動内容は、「ナレッジ(知識・知見)の共有」「ビジネスマッチング」「政策提言」の3つ。同協会は、世界に先駆けて暗号資産(仮想通貨)分野の規制整備が行われた日本だが、その後に登場したユースケースに対応できていない状況に危機感を持っており、業界関係者を中心に、これらの問題を解決する狙いがある。

出典:一般社団法人DeFi協会

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