仮想通貨の没収を確実にする法改正
法務省は、マネーロンダリング(資金洗浄)などに使われた暗号資産(仮想通貨)の没収を確実にするため、組織犯罪処罰法を改正する方針を示している。読売新聞が報道した。
現在、同法では没収できる資産として「不動産・動産・金銭債権」が挙げられている。動産は、土地や建物といった不動産以外の現金・商品・家財などのことであり、金銭債権は預金や売掛金、貸金などを指す。
仮想通貨は現在、これらの分類のいずれとも明確に解釈できない状況にある。
そこで法改正することにより、ビットコイン(BTC)などの仮想通貨も確実に没収対象とできるようにすることが狙いだ。
法務省は、2022年度中にも、法制審議会で議論を行った上で、法改正の具体的な内容を浮かび上がらせていく方針である。「秘密鍵」など仮想通貨特有の仕組みにどのように対応していくかも検討していく予定だという。
法制審議会とは
日本の法務省に設置された審議会等の一つ。法務大臣の諮問に応じて、民事法、刑事法その他に関する事項を調査して答申する。社会経済の時代的な変化にふさわしい法律のあり方についても審議してきた。
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改正資金決済法
マネーロンダリング対策に関しては、3日に可決・成立した仮想通貨に関する改正資金決済法にも盛り込まれていたところだ。
この法案は、仮想通貨やステーブルコインの発行を銀行や資金移動業者、信託会社に限定するというものである。ステーブルコイン規制、マネーロンダリングの共同監視ルール構築、高額電子ギフト券の送付なども含めたマネロン取り締まりが主な目的だ。
仲介業者にも、以前より厳格なマネーロンダリング防止策が求められることになる。
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疑わしい取引の届出件数は増加傾向
警視庁が3月に発表した、2021年における「犯罪収益移転防止に関する年次報告書」によると、金融機関からマネロンなど犯罪関与が疑われるとして届出が行われた取引の件数は過去最多の50万件以上を記録した。
このうち、業態別では「銀行等」が最多の73.6%を占めており、貸金業者(6.6%)、クレジットカード事業者(6.5%)と続く。暗号資産交換業者の届出件数は全体の2.5%であった。
警視庁はこの増加傾向について、「社会全体のコンプライアンス意識の向上」や「反社会的勢力や不正な資金移動に対する監視態勢の強化」を背景の一つとして挙げている。
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なお、世界的にマネーロンダリングを防止する動きとしては、国際的な規制機関である金融活動作業部会(FATF)が定めたトラベルルールが存在している。
仮想通貨事業者間で、送金の依頼人と受取人に関する一定の情報を共有するものだ。日本でも3月頃より、取引所が順次導入を進めた。
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トラベルルールとは
金融活動作業部会(FATF)が定めたマネーロンダリングの防止等を目的としたルール。VASP(仮想資産サービス提供業者)に対し、VASP間の取引における顧客情報の確認、共有において厳格な基準を設ける。
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