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ビットコイン一時2万ドル割れ、複数の悪材料が下押し圧力に 米雇用統計への警戒感も

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

マクロ経済と金融市場

9日の米NY株式市場では、ダウは前日比543ドル(1.66%)安、ナスダックは237ドル(2.05%)安で取引を終えた。

直近の指標で想定よりもインフレ高止まりが確認されているとして、パウエル議長は7日の議会証言で市場を牽制。これにより、今月22日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5%の利上げ幅拡大予想が強まり、リスクオフに傾いた。

本日22時半に米雇用統計が迫りポジション調整の売りが入ったほか、14日にはCPI(米消費者物価指数)、22日にFOMCを控える中、投資家心理が再び悪化しつつある。

関連:米株市場3日続落、仮想通貨市場にも悪材料|10日金融短観

関連:仮想通貨投資家にもオススメの株式投資、日米の代表的な仮想通貨銘柄「10選」

仮想通貨市況

暗号資産(仮想通貨)市場では、ビットコインは前日比7.6%安の20,130ドル。

BTC/USD日足

21,500ドルのサポートライン(下値支持線)を割り込むと先物ロングのロスカットを巻き込みながら下げ足を強め、一時1BTC=20,000ドルの心理的節目を下回り19,780ドルまで下落した。アルトコインも全面安となり、デリバティブ市場では2.5億ドル相当の大規模ロスカット(強制清算)が確認された。

coingalss

株や仮想通貨といったリスク資産下落の主因となっているマクロ経済の逆風に加え、ここへ来て悪材料が相次いでいる。

暗号資産関連サービスを提供する米シルバーゲート・キャピタルは今月8日、銀行事業の閉鎖を発表した。これに先駆け、コインベースやパクソスらがシルバーゲート銀行との取引停止を発表。株価暴落の一員となった。

関連:仮想通貨サービス提供の米シルバーゲート・キャピタル、銀行事業の清算を発表

1. 規制強化の影響

米ニューヨーク州の司法当局は9日、仮想通貨取引所KuCoinを提訴した。

関連:米NY当局、仮想通貨取引所KuCoinを提訴 イーサリアムは有価証券と主張

昨年5月に崩壊したアルゴリズム型ステーブルコインUST(TerraUSD)およびLUNAのみならず、イーサリアム(ETH)について有価証券性を指摘したことが投資家心理悪化を招いた。

KuCoinが運用するレンディング(貸仮想通貨)やステーキングサービスも「未登録有価証券の販売」に相当すると主張。米証券取引委員会(SEC)や米商品先物取引委員会(CFTC)に未登録であることも問題視した。

裁判で「イーサリアムは有価証券である」との判決が出たものではなく、現時点では規制当局側の主張にとどまるが、SEC(証券取引委員会)の見解と一致しており、仮想通貨取引所が提訴されたことから懸念が強まった。

イーサリアムはこれまで、商品先物取引委員会(CFTC)を含む米規制当局によってコモディティ(商品)として扱われてきたが、昨年The Merge(ザ・マージ)で合意形成アルゴリズムがPoW(プルーフ・オブ・ワーク)からPoS(プルーフ・オブ・ステーク)に変更された。

米SECゲンスラー委員長はこの点について、「ステーキング可能な仮想通貨と、ステーキングサービスを提供する取引所などの仲介業者は投資契約の定義に当てはまり、証券法の対象となる可能性が高い」と主張している。

SECは9日、仮想通貨取引所クラーケンを「証券法違反」で提訴。罰金の支払いと米国顧客に対するステーキングサービスの提供停止を求めた。

関連:米SEC「クラーケンの仮想通貨ステーキングサービスは証券法違反」

昨年、大手ベンチャーキャピタルのThree Arrows Capital(3AC)や融資企業Celsius Network、大手仮想通貨取引所FTXが相次いで破綻した問題を受け、米国を中心に仮想通貨業界への風当たりは一段と厳しさを増している。

2. 米政府関係機関の巨額送金

また、米政府関係機関による巨額送金も警戒感を募らせた。

ブロックチェーンセキュリティ企業PeckShieldが、8日2時のアラートで検知したオンチェーンデータによれば、10億8000万ドル(1500億円)相当の約50,000BTCが米政府の法執行機関ウォレットから送金され、その内10,000BTCが米大手取引所コインベースに送られたと見られる。

今回送金されたのは、21年11月〜22年3月にかけて新たに押収された51,351BTCの一部とみられる。

米法執行機関の連邦保安官局(USMS)は15年11月、違法薬物の売買などが行われていたダークウェブ「シルクロード」を巡り、押収したビットコインの内44,341BTCをオークション形式で売却していた。

3. 米国の課税強化

米バイデン政権は9日に発表した「予算教書」によれば、巨額の財政赤字を3兆ドル規模で削減するため、法人税率引き上げや高額所得者のキャピタルゲイン課税を提案した。

バイデン大統領は就任前の選挙公約として、インフラ投資などの大型財政支出のほか、財源捻出のため超富裕層への課税強化を掲げていた。投資利益に対するキャピタルゲイン税率を現行の20%から39.6%まで倍増させるというものだ。

仮想通貨についても、含み損の同一銘柄を損切り後に買い戻す年末の節税目的売買(ウォッシュ・セール)に関して、控除非対象とするとする案を掲げた。株式や債券では禁じているが、適用範囲を広げることを検討する。

類似した取引として、ウォッシュ・トレード(仮装自己売買)は、フロアプライスの吊り上げ行為につながりかねないとしてNFT(非代替性トークン)市場でも問題視されている。株式市場では権利移転を目的とせず特定の金融商品の自己売買を繰り返す行為は「金融商品取引法」などで規制されている。

関連:米バイデン政権の予算教書 仮想通貨課税に関する変更提案

マイニング(採掘)事業の電気代に対する最大30%の課税も掲げており、実現すれば米テキサス州などの大手マイナーに大きな影響を及ぼす可能性がある。

下院では共和党が多数派を占めるため法案可決は難しいとの見方が大勢であるが、法人や富裕層への課税強化方針は、実現すれば株価の下落につながりかねないとして警戒する向きもある。

アルトコイン市場

取引所トークンのフォビトークン(HT)が、一時前日比90%以上急落する場面があった。

仮想通貨TRON創業者でHuobi Globalの筆頭株主であるジャスティン・サン氏は、「一部の大口保有者が誤って売却した可能性があり、ロスカット(強制清算)を引き起こした。ウォレット、バックエンドのシステムともに重大なインシデントは発生していない」「価格も戻りつつある」などと弁明に追われた。

急落後は大規模な買い戻しが入り、10日12時時点では、前日比20%安となっている。

HT/USD

仮想通貨データプロバイダーのkaikoのリサーチアナリストによれば、急落前に200万ドル(約2.7億円)以上の大量売却がオンチェーンデータから確認された。

18年1月に発行されたHTは、イーサリアムのERC-20規格で発行されたHuobi Globalのネイティブトークン。取引所内売買における手数料割引などに使われる。

22年10月には、創業者のレオン・リー氏が全保有株式を香港拠点の資産管理会社「About Capital Management’s M&A Funds」に売却。ジャスティン・サン氏がHuobiの顧問に就任した経緯がある。

FTX破綻の影響で、最大手取引所バイナンスを筆頭に大手取引所のプルーフ・オブ・リザーブ(PoR)による保有資産開示が活性化する中、23年1月には「約30億ドルとするHuobiの準備金の内、43%がフォビトークン(HT)が占めている可能性がある」と指摘する調査会社CryptoQuantのレポートが公開され、利用者や投資家の懸念が強まっていた。

FTXの姉妹投資会社アラメダ・リサーチでは、保有資産や負債の内、独自トークンFTTの占める割合が高いことが財務諸表のリークで露呈したほか、その後顧客の預かり資産流用など数々の問題が明るみとなり、業界を揺るがす経営破綻へとつながった。

関連:HuobiからマーケットメイカーPionexが撤退、HTトークンは前月比30%安

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