Binance Japanとは
世界最大級の暗号資産(仮想通貨)取引所であるBinanceが、日本市場への本格進出を表明した。これは、Binanceの国際的な戦略の一部であり、この動きが仮想通貨業界における日本の役割を大きく左右する可能性がある。
新たに立ち上げ予定の「Binance Japan(仮称)」の計画が徐々に明らかになるにつれて、投資家と市場関係者の関心も高まっている。この記事では、世界中で注目を集めるBinanceの存在感と、彼らの日本進出の具体的な計画について分析する。さらに、どの仮想通貨が取引対象となるのか、投資家が何を期待しているのか、そしてBinance Japanの日本市場への影響とその利点、欠点についても深堀りしていく。
サクラエクスチェンジビットコインを買収
Binance Japan(バイナンスジャパン)は、世界最大級の暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンスの日本支社となる。新たなサービス「Binance JAPAN(仮称)」について、2023年6月以降の開始を目指している。
過去にバイナンスが日本市場に進出しようとした際には、2018年3月に金融庁から日本在住の顧客へのサービス提供停止を促す警告を受け、一旦は撤退を余儀なくされた。しかし、その後、バイナンスは株式会社サクラエクスチェンジビットコイン(SEBC)を買収し、日本の暗号資産交換事業者として正式なライセンスを手に入れた格好だ。
SEBCは、2022年11月に、バイナンスのCEOであるチャンポン・ジャオが率いる関連企業、Binance(AP)Holdings Limitedへの全株式譲渡と、新経営体制への移行を発表した。その新経営体制の下、代表取締役には、過去にKrakenの日本法人代表を務めた経験を持つ千野剛司氏が就任した。2023年6月16日現在の株式会社サクラエクスチェンジビットコインの会社概要は以下の通りとなっている。
■株式会社サクラエクスチェンジビットコインについて
会社名:株式会社サクラエクスチェンジビットコイン
事業内容:暗号資産取次業
登録番号:暗号資産交換業者(登録番号 関東財務局長 第00031号)
設立年月:2017年5月
本社:東京都港区六本木5-2-1 ほうらいやビル302号
代表者:代表取締役 千野 剛司
グローバル展開を進めるバイナンスの魅力とは?
バイナンス(グローバル版)は、2017年7月に香港で立ち上げられ、仮想通貨取引所Binance.comとして正式に運営を開始した。その後、日本やマルタ、バミューダ等の各地に拠点を移す過程を経て、完全リモートワーク体制に移行している。2022年の年末には、従業員数が7,500人を超え、100カ国以上の国籍を持つスタッフが働いているという。
近年、規制当局や政策策定者との連携を深めつつ、バイナンスはこれまでEU、アフリカ、オーストラリア等で、各国の規制に対応したプラットフォームを次々と立ち上げている。
圧倒的な取引量と多様な取引銘柄
バイナンス発行の2022年の年間報告「END OF YEAR REPORT 2022」によると、同年末の時点でBinance.comの登録ユーザー数は約1億2800万人に達している。この数値は、アメリカの大手プレーヤーであるCoinbaseの約1億800万人を上回るものだ。そして、現物取引やデリバティブ取引を含むプラットフォームの日次平均取引量は、650億ドル(約9兆円)に上るという。
市場研究会社Arcane Researchの報告によると、22年末時点に世界中のビットコインの現物取引(Bitwise集計データ)のうち約92%がBinance.comを通じて行われている。これは、バイナンスが22年6月にビットコイン現物取引手数料をゼロに引き下げたこと、同年11月に競合他社であるFTXが破綻した影響も大いに関わっていると思われる。
Binance.comでは取り扱う仮想通貨が357種類に上り、USDC、USDT、TUSDといった複数のステーブルコインを積極的にリストするなどで、取引可能なペア数は1,407まで増加している。これは、トレンドの移り変わりが激しいアルトコイン(ビットコイン以外の仮想通貨=Alternative coins)の取引需要を一手に引き受けてきた結果だと言えるだろう。
充実のデリバティブ取引
バイナンスは2019年にBinance Futuresという名称で先物市場を開設し、さらにオプション取引までの拡大を果たした。デリバティブ取引は、資産の将来の価格に投機したいトレーダーやリスクヘッジを求めるトレーダーにとって魅力的な選択肢となっている。
Binance Futuresは世界でも特に流動性が高い仮想通貨先物取引所としてその名を馳せており、常時多数の買い手と売り手が存在することで、適正価格にて素早く、しかも手軽にポジションの出入りが可能となっている。
また、Binance Futuresは手数料を業界内で最低水準に設定しており、これによりトレーダーは取引コストを大幅に削減できる。基本の手数料は、メイカーとテイカーでそれぞれ0.0120%および0.0300%と設定されている。例えばBitMEX(メイカー0.02%、テイカー0.075%)やOKX Futures(メイカー0.02%、テイカー0.05%)などの他の主要な仮想通貨デリバティブ取引所の手数料よりも低い。
IEO等、多様なサービス
バイナンスが生み出している好循環、すなわちユーザーの獲得と取引量の増加は、そのサービス展開の多様性が一因となっているだろう。
2019年1月、バイナンスは新たなプラットフォーム「Launchpad」を打ち出し、業界における先駆けとしてIEO(Initial Exchange Offering)を導入した。IEOとは、新規トークンを取引所が仲介し、これを投資家へ売り出す一種の資金調達手段だ。Launchpadによって販売されたこれらのトークンは、販売後すぐにバイナンスで取引可能となる。その結果、投資家は即時に流動性を享受できる。
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過去には、Polygon(MATIC)、The Sandbox(SAND)、Axie Infinity(AXS)、STEPN(GMT)などの有望なプロジェクトがバイナンスのLaunchpadを利用してきた。特筆すべきは、SANDとGMTは上場時の投資収益率(ROI)をそれぞれ7.9倍、14倍という驚異的な数字に引き上げたことだ。「バイナンスの大量のユーザーが優れたプロジェクトを引きつける力となり、それが結果的に新規トークン販売の抽選倍率を高めている。これらの要素が、同社のこれまでの実績の背景にあると考えられる。
ユーザビリティ、CZのリーダーシップ
定性的なバイナンスの魅力の一つとして、スマートフォンアプリを始めとする取引インターフェースの高い使い勝手が挙げられる。QRコードを活用した素早く手間のないログイン機能や、個々のユーザーに合わせたホームページのカスタマイズ、さらにはニーズに応じて切り替え可能なライト版とプロ版など、これらの機能がトレーダーにとって欠かせないツールとして機能している。
もう一つの特徴は、バイナンスの創業者でありCEOであるチャンポン・ジャオ(通称「CZ」)氏のリーダーシップの存在である。FTXの崩壊以降、中央管理型取引所への信用疑惑が広がる一方、CZが指揮を執るバイナンスは、顧客の資産保有状況を公開するといった手法を採用し、企業の透明性を確保するために前向きな取り組みを展開している。
バイナンスは慈善事業も積極的に展開しており、ウクライナや香港への寄付を行うほか、2018年の西日本豪雨や、2020年の新型コロナウイルス感染症の流行を受けて日本全国の医療機関を支援するチャリティー活動を企画するなど日本にも関係している。こうした一貫した行動は、CZを仮想通貨業界で最も影響力のある人物の一人に押し上げ、市場参加者からの信頼と評価を高めていると言える。
バイナンス日本進出の概要
バイナンスは5月26日、日本の法規制を遵守するために立ち上げる日本居住者向けの新規プラットフォーム「Binance JAPAN(仮称)」の開設予定を、23年夏にする予定であると発表した。詳細な開設時期については、数ヶ月以内に明らかにするとのことだ。
新プラットフォームに関心が集まる中、特に注目されるのが取扱う銘柄についてだ。バイナンスからは、「新プラットフォームでの現物取引が可能な予定の銘柄は約30種類」との情報が出ている。時価総額5兆円を超え市場4位(6月17日現在)のバイナンスのネイティブトークン「BNB」が新たに日本市場に上場するのかどうか、業界からの注目が集まっている。
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取扱い銘柄の予想
国内の暗号資産の取扱い審査プロセスは近年効率化が進んでおり、4月末時点で審査待ちの案件はわずか2件。22年3月には国内で取り扱われている暗号資産の数が50種類に満たない状況だったが、23年5月時点では91種類にまで拡大している。
日本初上場の暗号資産について、以前は3か月~2年かかっていたが、現在は1か月まで短縮できていることを考えれば、Binance JAPANの開設に合わせたBNBの日本市場での上場可能性も残されていると言えるだろう。
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さらに、2022年に話題となった「Move to Earn」アプリのSTEPNの独自トークン(GMT)もバイナンスのローンチパッドから生まれたもので、日本でも公式ミートアップを開催している。アシックスや攻殻機動隊との提携など、既に日本との深い繋がりを持つこのプロジェクトについて、バイナンスでのGMTの日本初上場も期待したいところだ。
日本進出のメリットとデメリット
メリット
バイナンスの日本進出がもたらす利点の一つは、グローバルなプラットフォームが国内に進出することで、日本のユーザーや取引量が国内に回帰する可能性があることだ。これにより税収の増加、国内の資金が循環することにより、日本のトレーディング環境の改善や、国産プロジェクトのエコシステムの拡充も見込まれる。
また、バイナンスというグローバル水準のプラットフォームが業界にとっての黒船となり、取引サービスとして全体のイノベーションが底上げにつながるかもしれない。バイナンスの特徴である、銘柄数の拡充、ユーザビリティに優れた機能の提供、各種キャンペーンなどで活気づくことで、国内取引所間のサービスの競争を促す可能性が期待される。
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これらの動きが組み合わさることで、結果的に日本やアジア全体のweb3業界が活性化し、国際的な競争力を持つことが期待される。一方、バイデン政権下の米国は仮想通貨とブロックチェーン技術に対する厳格な規制を強調しており、web3の開発に対して否定的な影響を与えている。
これと対照的に、日本では自由民主党のWeb3.0推進チームが政策策定を主導し、Web3の推進を明確に表明している。さらに、香港は規制環境の整備を通じて、世界的な仮想通貨中心地としての地位を確立しようと積極的な取り組みを始めている。
デメリット
バイナンスが日本市場に参入する際にはデメリットも存在する。その一つは、現在グローバル版を利用している日本在住ユーザーがこれを利用できなくなるという事態だ。これにより、多種多様な取引通貨と大規模な取引量を誇るバイナンスの強みを十分に活かせなくなる可能性がある。
日本の法規制により、2023年11月30日以降、日本在住ユーザーによるバイナンスグローバル版の利用が制約される予定だ。ユーザーが新たに日本版プラットフォームへと移行するための本人確認(KYC)の期間は、同年8月1日から11月30日までと定められている。
さらに、バイナンス日本版の取り扱い通貨は、グローバル版に比べて30種類と少ない。また、マーケットメイカーの存在など取引環境も異なるため、バイナンスブランドを最大限に活かしつつも、サービス開始初期からビットコインの現物市場で本家と同等の流動性を確保することは困難と予想される。
日本は過去、世界のビットコイン取引量の大きな割合を占めてきた。2017年4月に「改正資金決済法」が施行され、仮想通貨の安全な取引を可能とする法的枠組みが整備された。それと同時に、中国では仮想通貨の規制強化が加わり、BTC取引量に占める日本円のシェアは約60となった(2017年10月「CryptoCompare」データ)。
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\ビットコイン取引高世界一🎉/
— bitFlyer(ビットフライヤー) (@bitFlyer) August 4, 2020
当社は 8 月 4 日 午後 4 時 23 分現在、ビットコインの取引高(過去 24 時間)において世界一になっています。(Coinhills 調べ)引き続き bitFlyer をよろしくお願いいたします。
Coinhills:https://t.co/XJOmRY3ULG pic.twitter.com/QAPXlcFxed
2020年に一日とはいえ取引量で世界トップに輝いたこともあるbitFlyerの出来高は現在、日次取引量で21位(約3000 BTC/日)に留まっている(「Coinhills」調べ)。コインチェックやbitbankといった主要な取引所における日次ビットコイン現物取引量は、それぞれ約1,000 BTC(約3.8億円)前後に落ち着いている(「Bitcoin日本語情報サイト」調べ)。
なお、23年6月17日現在、バイナンスジャパンのローンチ日程は未だ確定していない。米国証券取引委員会(SEC)は、2023年6月5日にBinance.comとその米国支社、Binance.US、そしてCEOのチャンポン・ジャオ氏を米国証券法違反の疑いで訴えた。SECは、Binance.USが投資家保護のための規制構造を無視したほか、情報開示が不十分であるなどと主張しており、計13件の訴訟を行っている。
バイナンスは公式声明を通じてSECの主張を全面的に否定しているが、この訴訟が長引く可能性があり、それがバイナンスジャパン版のローンチに影響を与えることも想定しておく必要がある。
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