
トランプ関税の影響
資産運用大手VanEckのデジタル資産研究部門責任者のマシュー・シーゲル氏は8日、米トランプ政権の関税措置によって貿易戦争激化の懸念が高まる中で、暗号資産(仮想通貨)ビットコイン(BTC)は存在感を高めているとの見方を示した。
中国とロシアの貿易決済事例などをもとに、ビットコインは投機的な資産から金融のツールに発展し始めていると指摘。特に、米ドルや米国主導の金融システムの使用を回避したい国にとって、ビットコインは有用だとした。
今回の内容は、トランプ関税の影響についてまとめたVanEckのウェブページに掲載されている。このウェブページでは投資家への情報提供を目的に、シーゲル氏に加えて主に複数のポートフォリオマネージャーが、関税の資産への影響と投資家が注視すべき指標を回答している。
今回シーゲル氏は、トランプ政権の関税措置が通商における緊張や、金融や地政学における断片化のリスクを高めたと指摘。そして、貿易や金融インフラの武器化は、中立的な決済手段への関心を高めていると主張した。
シーゲル氏は、中国とロシアがエネルギー取引の決済にビットコインや他のデジタル資産を使い始めたことが報じられていること、ボリビアが仮想通貨を使って電力を輸入する計画を発表していること、フランス国有企業がドイツに輸出している余剰電力でビットコインのマイニングができないか探っていることに言及している。
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その上で、これらの事例が、ビットコインが投機資産から有用な金融ツールに発展し始めていることを示唆していると指摘。そして、米国離れを探る国で特にこの傾向が顕著だとした。
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投資家が注視すべき指標
シーゲル氏は注視すべき指標について、まずは米連邦準備理事会(FRB)の金融政策に注目すべきだと主張。利下げや米ドルの流動性増加といった金融緩和策は、これまでビットコインの価格を押し上げてきたと述べた。
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注視すべき指数として挙げたのは、他国通貨に対する米ドルの強さを示す「ドルインデックス」。ドルの弱さが継続すれば、特に地政学的な断片化が進む環境では、ビットコインのヘッジ手段としての価値が高まるとした。
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他にもビットコインの上場投資商品(ETP)の資金フロー、オンチェーン活動のデータ、中国とEU(欧州連合)の報復関税の動向も注視すべきだとした。
ETPとは
「Exchange Traded Products」の略。規制当局の認可を得た上で証券取引所で取引される金融商品で、ETF(上場投資信託)も含むとされる。
また、10年債の利回り上昇のビットコイン価格への影響は小さくなってきている可能性があるとの見方も示している。