仮想通貨市場の動向
5月第4週の暗号資産(仮想通貨)市場。前週金曜日(21日)、中国の国務院金融安定発展委員会にて、劉鶴(りゅう かく)国務院副総理が仮想通貨の取引やマイニングについて言及。
中国国内での規制を改めて強化する方針を示し、中国国内におけるマイニング事業者の経営リスクが懸念視、相場に再びネガティブな空気が漂った。当局の発表後、HuobiやBybitなど一部の仮想通貨事業は中国でのサービス停止を表明した。
中国当局の発表に加え、環境問題の再燃など、マイナス材料が中旬から相次いだ感のあるビットコイン(BTC)は引き続き下落。月間では40%近い下落率を見せた。
イーサリアム(ETH)は週明けの24日、一時2,000ドルを下回ったもののその後反発。軒並み下落相場の中、イーサリアムのレイヤー2ソリューションのPolygon(MATIC)などの高騰も目立った。
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時価総額TOP20の騰落率
下落基調が続く仮想通貨市場でも、持ち堪えた時価総額上位銘柄の週間騰落率は以下の通り。(ステーブルコインは除く:30日時点)
- Polygon(MATIC):33.44%
- ユニスワップ(UNI):10.62%
- イーサリアムクラシック(ETC):5.46%
- Chainlink(LINK):3.97%
- イーサリアム(ETH):-0.85%
仮想通貨ポリゴン・ネットワーク(MATIC)は引き続き好調を維持。DFINITYの手がけるInternet ProtocolのガバナンストークンICPも11位に踏みとどまった。一方、シータ(THETA)が逆行高を記録する場面もあり、20位に再浮上した。
ステーブルコイン流通量が10兆円突破
5月25日、主要ステーブルコインの総流通量が総額1,000億ドル(11兆円)を突破した。CoinPost提携メディアのThe Blockの統計では、テザー(USDT)やUSDコイン(USDC)などのステーブルコインの発行量は2021年に入り増加ペースを続けており、年初時点での総流通量は約300億ドル(3.3兆円)。
周知の通り、ステーブルコインの発行量ではテザーがダントツの一位だが、他のステーブルコインに比べ、USDTのマーケットシェアは徐々に減少傾向にある。全体の仮想通貨市場でもTOP10入りしたUSDCの比率は20%に達しているほか、バイナンスの手がける米ドル建ステーブルコインのBUSD、MakerDAOのステーブルコインDAIなども発行量の増加が顕著だ。
5月におけるステーブルコインのオンチェーンボリュームも28日時点ですでに月間ベースでは過去最高を記録しており、下落相場の中で利益確定売りに走る投資家マネーの傾向を表す。
ビットコインとイーサリアムの検索数、年内最多を記録
また、ビットコインとイーサリアムは共に、5月におけるGoogle検索数が年内最多を記録。Google Trend上では、日間での検索数は5月19日に最も多い検索数が観測された。5月19日には、大量のロスカットが発生し、相場全体が急落していた経緯があり、理由を探る動きが爆発的な検索数に繋がった。
CoinPostのアクセス数も過去最高に達し、日本でも同様の傾向が確認されたことを示した。
ビットコインが3ヶ月ぶりに300万円台に急落した、19日の暴落相場の詳しい解説はこちらから。
関連:仮想通貨暴落で大規模ロスカット発生 ビットコイン400万円を割り込む
仮想通貨取引所の取引量がATH更新
2021年に入り好調を続けていた仮想通貨市場だが、5月は下落基調の相場環境となった。ただ、仮想通貨取引所の出来高は過去最高水準の2.13兆ドル(約230兆円)を記録。The Blockが正当と認める24の仮想通貨取引所の月間取引量は2ヶ月連続で増加した。
特に取引量の増加が目立ったのは4月にナスダック上場を果たしたコインベースで、The BlockのFrank Chaparro氏は昨年の110億ドル(1.2兆円)から1,820億ドル(20兆円)に成長したと指摘。20年5月と比べて、16倍近く取引量が増えた計算となる。
Exchange volumes are surging
— Frank Chaparro (@fintechfrank) May 28, 2021
Coinbase volumes in May 2020: $11bn
Coinbase volumes in May: $182bn pic.twitter.com/tYsYljoxGG
コインベースでは21年1Q(第1四半期)における業績も好調で、5月中旬の決算では総収益は18億ドル(2,000億円)に到達。機関投資家からイーサリアムへの関心が高まるなど、興味深い動向も反映されていた。
グレースケール投信のプレミアムが回復傾向
また、下落相場が注目を集める中、2月下旬以降、現物価格(NAV)に対するマイナス乖離が続いていた米仮想通貨運用大手のグレースケールの投資信託も徐々に回復しつつある。
仮想通貨データサイトbybtの統計では、28日時点でグレースケール社のビットコイン投資信託(GBTC)のマイナス乖離は-11.46%。2週間前は27%までディスカウント状態が拡大していたため、徐々に回復傾向に転じている模様だが、いまだにマイナス水準を示しており、機関投資家の新規マネーの呼び水と呼ぶには弱い状況にある。
一方、チャート分析サイトY Chartsのデータでも、GBTC同様、マイナスに転じていた同社のイーサリアム投資信託(ETHE)のプレミアムの回復が確認。5月24日には一時11%のプラスのプレミアムに転じていた。
グレースケール社のGBTCは約65万BTCに相当する額を運用しており、これはビットコイン全体の約3%にあたる。2020年から運用枚数の増加ペースが右肩上がりになり、裁定取引需要も背景に、高いプレミアムと並行して、一時は新規流入が相場のプラス要因となっていた。(ビットコイン投信は仕組み上、米国の適格投資家や機関投資家が投資信託を購入後、半年間ロックされる)
過去には現物価格に対するプレミアムが100%を超えることもあったが、21年12月から徐々に減少傾向に。2月末には初めてマイナスに転じた。
プレミアムがマイナスに転じると新規の資金流入が停滞し、グレースケール社は3月に投資信託の新規購入停止を発表した。
4月には、セカンダリーマーケットの流動性向上を目指し、ビットコイン投信を上場信託(ETF)に転換する方針を明らかにしており、現在は方針発表から2ヶ月が経過したタイミングにある。
関連:米グレースケール、ビットコイン投信GBTCを上場信託(ETF)に変換する方針を表明
CMEの仮想通貨先物
シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の提供する仮想通貨先物の出来高と未決済建玉(OI)は以下の通り。2月以降、減少傾向にあったビットコイン先物の取引量は5月に入り少し持ち直しているか。
ビットコイン先物
一方、2月上旬に取引が開始したイーサリアムの先物取引は3月以降、現物のETH価格の高騰を考慮した上でも指数関数的な伸びを見せており、適格投資家やヘッジファンド、機関投資家などの層からも注目を浴び始めていることが伺える。
イーサリアム先物
ビットコインのオンチェーンデータ
ビットコイン(BTC)関連の注目のオンチェーンデータは以下の通り。
Taproot
今月1日導入が開始されたビットコインの大型アップグレード案「Taproot」への賛同を示すマイニング・プールの比率が上昇を続けている。
29日時点で、主要マイニングプールからのTaprootシグナル(支持)率は97.18%を記録。ブロック数ベースでも、過去2週間のブロックでは約8割がTaprootのアクティベーションをシグナルしたことが確認された。
仮に、期限日までにTaprootの支持を示すブロックが90%に達しなかった場合、Taprootのアクティベーションに向け他の方法が検討されることとなる。30日現在、ブロック基準ではTaproot支持を示すシグナルブロックは81.55%だ。
TaprootはSegWit以来とされる、ビットコインの大型アップグレード案。シュノア署名やMASTといった新技術を導入することで、ビットコインのプライバシー機能やスケーラビリティの向上などが利点として挙げられている。1月時点でも、すでに9割の大手マイニングプールが原則的な合意を示していた。
関連:ビットコインの大型アップデート「Taproot」の実装テスト開始
ビットコインのオンチェーン取引量
The Blockの統計では、5月におけるビットコイン・ネットワーク上の月間オンチェーン取引量は歴代2位の水準を記録している。Adjusted On-chain Volumeは自分のアドレス間でひたすらBTCを送信し続ける取引や、スパム的なトランザクションを差し引くなど、調整(アジャスト)されたオンチェーン取引量を指す。
ビットコインの月間オンチェーン取引量は2021年に入り、歴代最多の取引量の記録を継続して更新し続けており、これまでは2017年12月が最高水準だった。
イーサリアムのオンチェーンデータ
イーサリアム(ETH)関連の注目のオンチェーンデータは以下の通り。
ETH2.0 ステーキング額
ステーキングはブロックチェーン上で仮想通貨をロックすることで、配当として仮想通貨を得る資産運用手段を指す。
総ステーキング額:約518万ETH(先週:約476万ETH)
関連:仮想通貨ステーキングとは|初心者でもわかる「報酬」の仕組み
ETHの月間オンチェーン取引量は過去最高
また、月間オンチェーン取引量の右肩あがりが続くビットコインに劣らず、5月におけるイーサリアムの月間オンチェーン取引量はすでに歴代最高水準を記録している。特筆すべきは、ドル換算では、5月のイーサリアム・ネットワーク上のオンチェーン取引量はビットコインの数値を上回っている点だ。
また週間平均取引量で比較しても、ETH価格が初めて3,000ドルを突破した5月3日以降、ETHのオンチェーン・ボリュームがビットコインを上回っていることが確認できる。
DeFiプラットフォームや、NFTの高まる人気が後押しとなっていると考えられる。
ETHネットワーク上の月間アクティブアドレス
また、イーサリアム・ネットワーク上の月間アクティブアドレスが4月に続き、過去最高水準を記録した。アクティブアドレスとは、ETHネットワーク上で送信、または受信を行ったユニークアドレスの事。ブロックチェーンの利用度や、ネットワーク効果を測定するために用いられる。
以前の最高記録は2018年1月の1,762万アドレスだったが、4月は僅かに上回る1,766万アドレスがイーサリアムを活用。30日時点では、1,856万アドレスを記録している。
DeFi(分散型金融)
DEX出来高も過去最高を大幅更新
分散型取引所(DEX)における出来高もこれまでの最高水準を大きく上回った。PancakeSwapの台頭もあり、5月の取引量は33兆円(約3,032億ドル)規模をマーク、前月比では88%の伸び率を見せている。
全体の取引量のおよそ半数にあたる出来高を記録したPancakeSwapの後にはUniswap、Sushiswapや今月メインネット実装を完了したUniswap v3などが続いた。
関連:Uniswap v3、イーサリアムメインネット実装完了
DEXアグリデーターの取引量も過去最多
DEXの利用拡大に伴い、DEXアグリゲーターの取引量も過去最多を記録した。DEXアグリゲーターは複数のDEXにアクセスして、最善の取引価格を表示するアルゴリズム。代表例では1inchやUniswap、Kyber、0xなどが同様のサービスを提供している。
DEXアグリデーターにおける5月の月間取引量は約2兆円を記録しており、1inchが引き続き大多数を占めた。一方、0xの提供する新たな仮想通貨取引所MatchaやParaswapも急成長を見せており、昨年5月と比較すると1inchのマーケットシェアは25%近く減少している。
関連:DeFiプロジェクト0x、分散型取引所「Matcha」をローンチ
UNI、CAKE前週比推移
DeFi上位銘柄のユニスワップとパンケーキスワップの前週比は以下の通り。(30日時点)
- ユニスワップ(UNI):22.77(4.5%)
- パンケーキスワップ(CAKE):14.35(-14.0%)
関連:PancakeSwapが稼働するブロックチェーン、バイナンス・スマートチェーンとは
NFT上位銘柄:前週比
NFT(非代替性トークン)関連銘柄の騰落率は以下の通り。(30日時点)
- シータ(THETA):6.06(-4.1%)
- チリーズ(CHZ):0.262995(-5.9%)
- エンジンコイン(ENJ):1.28(0.3%)
下落相場もNFT出来高は好調
一方、5月の相場急落時もNFT(非代替性トークン)の取引は高水準を維持。日間平均では580万ドル(6億円)相当の85,000以上のNFTが取引され、年初来時点と比較すると277%の上昇にあたる。
クリプト指標
日程 | 指標 |
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6/1頃 | Stellar Protocol 17 アップグレードへ |
6/4~6/5 | Bitcoin2021 最大級のイベントをアメリカ(マイアミ)で開催へ |
6/4 | Ripple訴訟問題、SECの反論に対する応答文書の期限 |
Stellar Protocol 17 アップグレードへ
6/1頃
2021年6月1日、新機能の実装を目的にStellar Protocol 17へのアップグレードが予定されている。
2021年5月4日にはテストネット上でのリリースが行われており、2021年6月1日にはノードによるアップデート投票が行われる。
投票による承認数が一定数を超えた場合、Stellar Protocol 17へのアップグレードが行われる。
Bitcoin2021 最大級のイベントをアメリカ(マイアミ)で開催へ
6/4~6/5
Bitcoin2021最大級イベント開催地をロサンゼルスからマイアミへ変更を発表。
理由についてはCOVID-19の第2波が通過しワクチンのロールアウトが行われるまでの十分な時間を確保するためである。
カンファレンスの開催も2021年6月4日から2021年6月5日に延期された。
当イベントでは、この分野で最も優秀な人材が集合し、何十ものユニークなBTCアクティベーションが行われ、インターネットからの参加者を通じて世界最高のテクノロジーを祝うことができる。
Ripple訴訟問題、SECの反論に対する応答文書の期限
6/4
XRPの販売をめぐる訴訟で、米SECと米リップル社の役員らが審議の日程で合意に至ったことが判明。
次回、2021年6月4日までがGarlinghouse氏とLarsen氏がSECの反論に対する応答文書提出の期限となる。
参考:リップル訴訟:CEOら訴状取下げ要求、審議スケジュールが決定
前週の週次レポートはこちら:前週比ではイーサリアムなどDeFi関連の崩壊目立つ、ビットコインの底を探るデータも
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関連:クリプト指標導入「CoinPostアプリ」の使い方をトレーダー目線で解説|寄稿:Bit仙人