仮想通貨投資家が伝統的な金融商品への分散投資を考えるなら、まず候補に挙がるのは仮想通貨関連企業の株式でしょう。株式市場での取引経験が浅いうちは、何万とある銘柄の中から投資先を選択するだけでも一苦労です。
しかし、仮想通貨に関連する企業であれば、これまでの知識・経験をある程度転用できるため参入ハードルが低いほか、市場自体も今後の拡大が期待できます。本記事では、そんな仮想通貨関連企業に投資する具体的な利点、注目の銘柄や将来性まで網羅して解説します。
- 目次
1. ビットコイン保有企業に投資する利点・選び方
株式市場に参入するにあたって最初の難所難関が「銘柄選び」です。そこで、初めは馴染みのある仮想通貨関連銘柄に絞って検討することをおすすめします。
1-1. 仮想通貨関連企業の銘柄を選ぶ利点
株式市場での取引経験が少ない場合、まず検討すべきは「馴染みのある業界」の銘柄です。その業界に精通していれば最新情報のキャッチアップも容易で、企業がローンチしたサービスの市場における意味合いや価値の大きさなどへの理解も進みやすいと言えます。
そのため、仮想通貨の知識はあるが株式投資の経験が少ない場合は、まずビットコインなど仮想通貨に関連する企業から調べると効率的かもしれません。
また、仮想通貨関連の企業は株価・資産額・業績が仮想通貨市場の動向に一定以上の影響を受けます。一般的な株式と比べて仮想通貨市場に近い値動きとなるため、分析や予測に既存の知識を転用可能です。
何より仮想通貨は市場自体が急激に拡大を続けており、今後はそれに伴った関連企業の業績・事業規模の拡大が予想されるため、将来性の面でも十分期待が持てます。
ただし、注意点もあります。
暗号資産(仮想通貨)と関連性の高い銘柄ほどビットコインなど仮想通貨市場のトレンドと連動しやすく、ボラティリティ(価格変動性)が激しいため、ポジションのエントリータイミングには十分注意が必要です。また、類似セクターのみでポートフォリオを構成することは、分散投資の観点からはオススメできません。1-2. 仮想通貨関連企業を選ぶ際のポイント
仮想通貨関連の企業に投資を検討する際場合、直接的に仮想通貨・ブロックチェーン事業を営む企業に限定せず、ビットコインなどを会社の資産として保有する企業も含めることを検討しても良いでしょう。
仮にこれは、直接仮想通貨事業を行う企業に限定すると、その大多数は上場していないため選択肢が極端に狭まってしまうでしょうからです。多額の仮想通貨を保有する企業であれば、仮想通貨に前向きかつ事業内容もデジタル資産に親和性が高いケースが多く、前述の利点を享受できます。
ただし、仮想通貨関連企業の銘柄を選ぶ際には、一般的な株式投資のように事業内容や売上・利益、配当制度や株価の水準のほか、仮想通貨特有のリスクも検討する必要があります。具体的には、その企業の仮想通貨投資経験の有無、市場に精通した人材の有無、保有の場合は投資目的か決済目的か、どれだけマーケットリスクを抱えているか等をチェックしましょう。
2. ビットコイン保有量トップ10の上場企業
続いて、世界で最もビットコインを保有する企業をご紹介します。CoinGeckoのデータによれば、21年12月末時点でビットコインの保有量が最も多い上場企業は次の通りです。
企業名 | 国 | BTC保有量 | 保有BTCの価値(米ドル) | BTC発行量に占める% | |
---|---|---|---|---|---|
1 | MicroStrategy Inc. | US | 121,044 BTC | $6,186,123,965 | 0.576% |
2 | Tesla | US | 48,000 BTC | $2,453,107,550 | 0.299% |
3 | Galaxy Digital Holdings | CA | 16,402BTC | $838,247,293 | 0.078% |
4 | Square Inc. | US | 8,027 BTC | $410,231,131 | 0.038% |
5 | Marathon Patent Group | US | 4,813 BTC | $245,975,138 | 0.023% |
6 | Hut 8 Mining Corp | CA | 4,724 BTC | $241,426,668 | 0.022% |
7 | Coinbase | US | 4,483 BTC | $229,110,024 | 0.021% |
8 | NEXON Co Ltd | JP | 1,717 BTC | $87,749,701 | 0.008% |
9 | Voyager Digital LTD | CA | 1,239 BTC | $63,320,839 | 0.006% |
10 | Riot Blockchain, Inc. | US | 1,175 BTC | $60,050,029 | 0.006% |
保有量トップ10の上場企業だけで、ビットコイン総発行量の1.077%(21年12月末時点で約1兆200億円相当)という膨大な資金を仮想通貨に投じている計算です。
全体を俯瞰すると、マイニング企業の「Marathon Patent Group」や仮想通貨取引所の「Coinbase」など、主に仮想通貨事業を営む企業が目立ちます。その他、デジタルアセットに関する金融サービスを提供する「Galaxy Digital Holdings」など親和性の高い業種の企業も多いです。
異色なのが、他の企業と比べても一線を画すビットコイン保有量を誇る2トップ。「MicroStrategy」の主な事業はデータ分析ソフトウェア開発・提供で、「Tesla」は電気自動車の製造販売が柱で、仮想通貨事業をメインとして展開しているわけではありません。
これら企業の多くは2020年以降に大量購入へ踏み切っており、その内いくつかの企業は米国の大規模金融緩和による米ドルのインフレヘッジが主な購入目的だと説明しています。
3. ビットコインを保有する注目の国内株式
株式投資の経験が少ないうちは、外国株式よりも参入ハードルが低い国内株式から取引を始める方が安全でしょう。そこで次に、ビットコインを保有する国内上場企業をピックアップしてご紹介します。
3-1. ネクソン(3659)
株式会社ネクソンは、21年12月末時点で世界で8番目(アジア全体ではトップ)のビットコイン保有量を誇る国内上場企業です。2011年に東証一部に上場し、主な事業内容はオンラインゲームの開発・配信。『メイプルストーリー』『アラド戦記』など複数の有名ゲームをリリースしています。日本だけでなく韓国・中国・欧米でも事業を展開するグローバル企業です。
2021年には1億ドル相当のビットコインを購入し、東証一部上場企業として初めて仮想通貨を財務資産に組み入れる決定を行ったことで話題を呼びました。購入したビットコインの総額は、ネクソンが保有する米ドル・韓国ウォン・日本円を含めた現金及び現金同等物(2020年12月末時点)の2%未満に相当すると発表しています。
21年12月24日時点の銘柄基本情報:
株価(円) | 2,278.0 |
---|---|
発行済株式数 | 898,446,469.0 |
時価総額 | 2,046,661,000千円 |
配当利回り | 0.22% |
純資産 | 720,445百万円 |
株主持分 | 709,882百万円 |
株主持分比率 | 82.34% |
資本金 | 22,679百万円 |
関連:東証1部上場企業ネクソン、110億円相当のビットコインを購入
3-2. Eストアー(4304)
Eストアーグループは、主に中小~大手小売店へEC総合支援サービスを提供する企業です。2001年にJASDAQへ上場し、「ショップサーブ」などのEC通販システムや顧客店舗のマーケティングを主力事業として展開しています。
ビットコインだけでなくビットコインキャッシュ(BCH)も保有し、21年3月期のバランスシートでは暗号資産を資産として約1億700万円、暗号資産評価益で約9600万円を計上しています。Eストアーは通販の決済でビットコインを導入している関係から、投資というより顧客の利便性向上の目的で保有している可能性が高いでしょう。
21年12月24日時点の銘柄基本情報:
株価(円) | 1,514.0 |
---|---|
発行済株式数 | 5,636,636.0 |
時価総額 | 8,533,867千円 |
配当利回り | 2.11% |
純資産 | 2,343百万円 |
株主持分 | 2,343百万円 |
株主持分比率 | 27.23% |
資本金 | 646百万円 |
3-3. フィスコ(3807)
フィスコグループは仮想通貨取引所「Zaif」の親会社です。2006年に上場し、仮想通貨・ブロックチェーン事業以外にも金融情報サービス事業・広告代理業・ICT/IOTデバイス事業など多様なサービスを法人・個人向けに展開しています。
フィスコは独自トークンの「フィスココイン(FSCC)」を発行。フィスココインはグループの一部飲食店で決済手段として導入されているほか、同社の株主優待として配布されたこともあります。
仮想通貨の運用状況としては、2021年12月期3Q決算では暗号資産評価益として146万6000円を計上、暗号資産売却益として約1億48万円を計上しました。
21年12月24日時点の銘柄基本情報:
株価(円) | 197.0 |
---|---|
発行済株式数 | 45,776,722.0 |
時価総額 | 9,018,015千円 |
配当利回り | 1.52% |
純資産 | 1,297百万円 |
株主持分 | 1,272百万円 |
株主持分比率 | 46.75% |
資本金 | 100百万円 |
4. ビットコインを保有する注目の海外株式
次に、ビットコインなど仮想通貨を資産として保有する海外株式をピックアップしてご紹介。国内株式よりも取引のハードルは高いものの、より仮想通貨市場に親和性が高い企業が多く、ラインナップも豊富です。
4-1. マイクロストラテジー(MSTR)
マイクロストラテジー社は、21年12月末時点で約7000億円相当のビットコインを保有する、ビットコイン保有量世界第1位の米国企業です。企業向けソフトウェアプラットフォームの設計・開発・マーケティング事業をグローバルに展開しています。
同社は20年8月に取得原価約250億円でビットコインを購入、その後も21年8月や11月などに大規模な追加購入を行いました。
CEOのMichael Saylor氏は、ビットコインへ投資する理由として、米ドルなど通貨の価値がかなりの確率で減少する一方でビットコインの価値には普遍性・永続性があることを挙げています。
21年12月23日時点の銘柄基本情報:
株価(USドル) | 597.21 |
---|---|
発行済株式数 | 8.965百万 |
時価総額 | 6,527十億ドル |
配当利回り | – |
純資産 | 2,986,244千ドル |
資本金 | 19千ドル |
関連:米マイクロストラテジー、7,000BTCのビットコイン買い増し
4-2. テスラ(TSLA)
テスラ社は米国のEV(電気自動車)メーカーで、21年12月末時点で約2700億円相当以上のビットコインを保有しており、保有量としては世界第2位。売上額はトヨタのおよそ10分の1にもかかわらず時価総額が約2.8倍もあり、期待値の高い新興企業として知られています。
直接仮想通貨・ブロックチェーン事業を展開しているわけではないものの、同社の動向は仮想通貨市場にたびたび大きな影響を及ぼしてきました。例えば21年2月、テスラは多額のビットコイン購入と共に同社のEV購入にビットコイン決済を導入する可能性を示唆したことを受け、ビットコインは過去最高値を更新。しかしその後にビットコイン決済の一時停止を発表し、一転して相場の急落を招きました。
同社はビットコインへの投資理由として、経営上の流動性維持に必要ではない現金の運用先を多様化し、運用益を最大化するためと説明しています。
21年12月23日時点の銘柄基本情報:
株価(USドル) | 1,067.0 |
---|---|
発行済株式数 | 1.004十億 |
時価総額 | 1.072兆ドル |
配当利回り | – |
純資産 | 57,834,000千ドル |
資本金 | 1,000千ドル |
関連:仮想通貨ビットコイン急落 テスラ社のBTC決済中止受け
4-3. コインベース(COIN)
コインベース社は世界最大手の仮想通貨取引所の運営会社。仮想通貨・ブロックチェーンに特化した事業を営む企業として始めて米国市場に直接上場し、仮想通貨の社会的地位引き上げに大きく貢献しました。
21年12月末時点で約250億円相当のビットコインを保有し、保有量としては世界7位。 直接上場を選ぶだけあって既に黒字化しており、収益性の高さや高水準の純利益率から、今後のさらなる成長が期待できます。
仮想通貨に特化した事業を営むうえ多額のビットコインを保有しているため、仮想通貨市場から受ける影響がとりわけ大きい銘柄です。
21年12月23日時点の銘柄基本情報:
株価(USドル) | 268.15 |
---|---|
発行済株式数 | 155.244百万 |
時価総額 | 57.707十億ドル |
配当利回り | – |
純資産 | 18,454,271千ドル |
資本金 | 2千ドル |
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5. ビットコイン保有企業の将来性
続いて、仮想通貨関連銘柄に関する全体的な動向と今後の展望について簡単に整理しましょう。
5-1. 企業によるビットコイン投資は20年代から加速
ビットコインを資産として保有する企業は、20年から21年にかけて急激に増加しました。要因の一つとして、仮想通貨市場の成熟に伴って社会的受容が高まっていたところにコインベースが上場を果たし、参入をさらに後押ししたことが挙げられます。
また、新型コロナウイルスの流行や米中関係の悪化等により世界経済が混乱し、米ドルなど通貨を保有するリスクが上昇したことも原因と考えられるでしょう。こういった動きは顕著で、前述した以外にも多くの企業が仮想通貨市場に参入を始めています。
例えば、「Morgan Stanley」「Goldman Sachs」をはじめとする数多くの大企業がデジタル資産関連事業の強化を開始。保守的な資産運用会社として知られる「Capital Group」すら、マイクロストラテジー社の株式を大口保有することで間接的に仮想通貨市場に参入しています。
このように、企業の仮想通貨投資・ビットコイン保有企業への関心は高まる一方です。
5-2. 企業へのビットコイン普及が意味すること
20年から目立ち始めた米国の機関投資家・企業によるビットコインの積極的な購入は、仮想通貨が金融商品としての信用を獲得しつつあることを示すものです。
未だ課題は多いですが、もし企業の仮想通貨市場への参入が増え続ければ仮想通貨市場に企業マネーが流入し、市場の成熟を大きく後押しするでしょう。仮想通貨に親和性が高いプロダクトやサービスの流通も増え、アクセスする手段が多様化すれば、より多くの個人が仮想通貨を利用し始める事は想像に難くありません。
その結果、前述したような早期から仮想通貨関連事業を展開・ビットコイン等をポートフォリオに組み込んでいた企業は、飛躍的な成長を遂げる可能性があります。
6. ビットコイン保有企業の株式を購入できるネット証券
最後に、前述したビットコイン保有企業の銘柄をインターネットから購入できるネット証券をご紹介します。
6-1. SBI証券
出典:SBI証券
SBIホールディングス株式会社の子会社であるSBI証券は業界最大手のネット証券会社で、業界屈指の手数料の安さが魅力です。
国内・海外ビットコイン保有企業だけでなく、ETF・IPO・信用取引・コモディティなど多様な金融商品を取引できます。投資家サポートも充実しており、例えば「WealthNavi for SBI」というロボアドバイザーを使用すれば一部の資産をAIに運用代行してもらえるサービスも。
口座開設から取引まで一連の作業をオンラインで完結できるため、利便性の面でも優れた証券会社です。まだネット証券の口座を保有していない場合は、SBI証券から始めることをおすすめします。
関連:スマホ1つで始める簡単株投資(投資信託)|SBI証券の特徴を徹底解説
6-2. 楽天証券
出典:楽天証券
楽天証券は「楽天市場」「楽天カード」などでお馴染みの楽天グループが運営するネット証券。主要ネット証券の中で新規口座開設数が3年連続トップに輝くなど、目覚ましい勢いで成長しています。
楽天証券が他のネット証券と一線を画すのは、ポイント制度の充実度でしょう。例えば別の楽天サービスの利用で溜まった楽天スーパーポイントを使って投資ができるほか、投資の取引手数料のうち1~2%が楽天ポイントとして還元される仕組みなども。
投資によってポイントを貯め、貯まったポイントを投資に回すことで複利効果による資産の効率的な増加も狙えます。普段から楽天サービスを頻繁に利用するなら、まずは楽天証券の口座開設を検討しましょう。
関連:貯めたポイントで投資信託|楽天証券がおすすめな理由とは
7. ビットコイン保有企業からはじめる伝統金融商品
本記事では、ビットコイン保有企業など仮想通貨関連銘柄について詳しく解説しました。企業の仮想通貨への投資は今後も一般的になっていく可能性があり、それによる仮想通貨市場の成熟促進効果にも期待が高まっています。
仮想通貨投資家が伝統的金融商品への投資を検討する場合、馴染みがあり将来性も十分な仮想通貨関連銘柄からリサーチしてみてはいかがでしょうか。
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