CoinPostで今最も読まれています

日銀、CBDC戦略の中間報告を公表 想定モデルと5つの課題

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

 

CBDC五つの主要論点

日本銀行は2023年4月17日に「CBDC(中央銀行デジタル通貨)に関する関係府省庁・日本銀行連絡会議 中間整理」を公表した。

CBDCに関する最初の連絡会議が1月26日に財務省で開催され、関係府省庁がCBDC導入時に直面する可能性のある問題点を特定していた。この中間報告は、CBDC導入の議論における土台を築くものであり、直接的な導入決定や方向性を示すものではないが、2023年12月の有識者会議の成果を基に、主要な設計要点が整理されている。

関連:日銀と政府、デジタル円の連絡会議を初開催 春の法整備に向けて

この中間整理には、以下の五つの主要論点が含まれている:

  • 日本銀行と仲介機関の役割分担(垂直的共存)
  • CBDCと他の決済手段の役割分担(水平的共存)
  • セキュリティの確保と利用者情報の取扱い
  • 法令面の対応
  • その他

CBDCとは

各国・地域の中央銀行が発行するデジタル化された通貨を指す。「Central Bank Digital Currency」の略である。仮想通貨との大きな違いは、CBDCは法定通貨であること。通貨の管理や決済等においてコスト削減や効率性向上が期待できる一方で、個人情報やプライバシーの保護、セキュリティ対策、金融システムへの影響など考慮すべき課題は多い。

▶️仮想通貨用語集

「1. 日本銀行と仲介機関の役割分担」では、日本銀行が直接利用者のニーズに応えることは非現実的であるため、民間の仲介機関がCBDCの授受を仲介する「二層構造(現金と同様)」が適当だとされている。仲介機関はCBDCの発行・還収に関する業務を担い、取引の開始・終了手続きや顧客管理などの基本サービス(コアサービス)を提供することが期待されており、家計簿サービス、条件付き決済サービスなど、利便性を高める追加サービスも提供されることが期待される。

出典:財務省

「2.CBDC(中央銀行デジタル通貨)と他の決済手段の役割分担」では、CBDCは現金など他の決済手段と並行して機能することが想定されている。政府と日本銀行は、CBDC導入後も現金への需要が持続する限りその供給を継続する方針を示している。CBDCにより高額取引が容易になる一方で、その匿名性の設定が重要な課題である。国際的にはCBDCの匿名性を現金と同等に保つことは、マネーロンダリングやテロ資金供与のリスクを考慮すると実行可能でない、または不適切との見解が示されている。

また、CBDCは既存の民間決済システムとの円滑な相互運用が求められる。CBDCは異なる決済手段間での交換を保証し、公正かつ自由な競争を支援する役割を果たすことが期待されている。民間事業者が既にシステム構築や市場獲得に投資を行っているため、CBDCの導入がこれらのビジネスモデルに及ぼす影響について、関係当局と事業者間での詳細な議論が必要とされる。

日本銀行のCBDCについて

日本銀行が検討中のCBDCは、スマートフォンアプリや物理カードを使用し、電子マネーやQRコード決済と同様に利用する形式を想定している。この(リテール)デジタル通貨は、日常の多様な取引に利用できるよう設計され、店舗での買い物やオンラインショッピングなど、現金が不便な場面でも使用可能なモデルが理想。このCBDCの目的は、利便性と普遍性を備えた決済手段として、誰もがいつでもどこでも利用できるようにすることにある。

民間のデジタル決済手段と異なり、CBDCは使用可能な店舗や送金の可否に制限がなく、ユニバーサルでアクセスしやすい決済手段として機能する。さらに、CBDCは日本銀行の負債として発行され、信用リスクがないため、利用者は安全かつ即時に決済が完了する安心感を享受できる。

別途、クロスボーダー決済においては、「ホールセール型CBDC」として検討されている。CBDCの国際利用においては、世界各国でCBDCの導入が進むことを前提に、国際間の技術標準化と国際連携が不可欠だ。

関連:成田悠輔が切り込む『デジタル円実現後の未来』|WebX対談レポート

日銀・政府のCBDC政策と経緯

  • 2020年10月 – 日本銀行が「中央銀行デジタル通貨に関する日本銀行の取り組み方針」を公表。
  • 2021年4月以降 – 日本銀行が概念実証とパイロット実験を通じてCBDCの技術面での実証を開始。
  • 2021年6月18日 – 閣議において「経済財政運営と改革の基本方針2021」が決定され、CBDCの制度設計の大枠の整理が命じられた。
  • 2023年4月 – 財務省にてCBDCに関する有識者会議が立ち上げられた。
  • 2023年6月16日 – 閣議において「経済財政運営と改革の基本方針2023」が決定され、年内に有識者の議論を取りまとめ、制度設計の大枠を整理することが再確認された。
  • 2024年1月 – CBDCに関する関係府省庁・日本銀行連絡会議が設置された。

関連:経産省レポート、Web3.0の現状評価や将来像 NOT A HOTELの事例

CoinPost App DL
注目・速報 相場分析 動画解説 新着一覧
05/13 月曜日
15:05
リップルCEO「米国政府は、ステーブルコインUSDT発行企業のテザー社を標的にしている」
リップル社のブラッド・ガーリングハウスCEOはインタビューで、米国政府がステーブルコインUSDTの発行企業テザーに監視の目を強めていることを注視していると語った。
14:32
ユニスワップ創設者ら、SECの仮想通貨規制はバイデンの大統領選に悪影響と指摘
ユニスワップの創設者らは仮想通貨業界に対する米SECの姿勢を批判し、大統領選で現職バイデン氏の再選に不利になる可能性を示唆した。
12:18
JPモルガン、ビットコイン現物ETFの保有が明らかに
米JPモルガンはSECへ提出した書類の中で複数社のビットコイン現物ETFへの投資を報告した。ダイモンCEOはBTCに対して懐疑的な姿勢を保っている。
12:17
冴えない動きの続くビットコイン、15日にCPI控え様子見基調
暗号資産(仮想通貨)相場では、15日にCPI(米消費者物価指数)を控える中、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)相場の様子見基調が強まっている。売り優勢の局面を打開できずにいる。
05/12 日曜日
11:24
来週のビットコイン相場はPPIとCPIに注目、ネガティブならチャネル下限試すシナリオも|bitbankアナリスト寄稿
GW明けのビットコイン(BTC)相場をbitbankのアナリスト長谷川氏が分析。ビットコインチャートを図解し、今後の展望を読み解く。
11:00
週刊仮想通貨ニュース|トランプ前大統領の異例発言に高い関心
今週は、米フランクリン・テンプルトンによる仮想通貨ソラナのレポート発表、ビットコインの累積トランザクション数の10億件到達、ドナルド・トランプ氏による異例の発言に関する記事が最も関心を集めた。
05/11 土曜日
15:00
ビットコイン上のステーブルコイン発行計画 Taproot Assetsのテストが進行
Lightning LabsのCEOエリザベス・スターク氏が、暗号資産(仮想通貨)ビットコインのブロックチェーンにステーブルコインを導入する新技術「Taproot Assetsプロトコル」について解説。ライトニングネットワークを使った即時、低手数料の国際取引が可能に。
14:00
「Friend.TechなどでBaseがイーサリアムL2を主導」フランクリン・テンプルトン分析
フランクリン・テンプルトンは、仮想通貨ブロックチェーン「Base」がFriend.Techなどソーシャルファイに牽引され、今後も代表的なイーサリアムL2であり続けると予想した。
12:45
日本代表団、スイスのDFINITY本部を訪れる
平将明氏および加納裕三氏を含む日本の代表団がDFINITY本部を訪問。DFINITYが推進するInternet Computerは、高速で広範なブロックチェーンベースのプラットフォームで、スマートコントラクトとデータシャーディングにより、効率的なWeb3アプリの開発を可能にする。
11:20
米SEC、コインベースの仮抗告を却下するよう申し立て
米SECは仮想通貨取引所コインベースとの裁判で新たな書類を提出。コインベースが証券性をめぐり求める仮抗告を退けるべきだと申し立てている。
10:00
著名投資家マーク・キューバン氏、SECゲンスラー委員長を批判
著名投資家マーク・キューバン氏は米大統領選挙で仮想通貨も争点の一つになると意見した。また米SECのゲンスラー委員長に批判を向けた。
09:00
米大手銀ウェルズ・ファーゴ、複数のビットコイン現物ETF銘柄を保有
ウェルズ・ファーゴを含むいくつかの金融大手はビットコインETFが1月にデビューしたのち、それらの取り扱いを開始した経緯がある。
08:00
米ARK、イーサリアム現物ETFの申請からステーキング要素取り除く
現在、5月中に仮想通貨イーサリアムの現物ETFが承認される期待はすでに大幅に後退。専門家らはその可能性を2ヶ月前の約70%から25%に引き下げた。
07:30
J・ドーシー氏「2030年のBTC価格は100万ドル超へ」
2030年のBTC価格は100万ドル超まで上昇する可能性があると強気な見方を示すなど、ジャック・ドーシー氏が仮想通貨ビットコインの魅力を語った。同氏は以前からビットコインを支持している。
07:00
ソラナJupiter、モバイルアプリのリリース時期発表
モバイル版の最新情報のほか、Jupiterは第三回のLFG投票の予定についても情報を公開。来週あたりに新たなローンチパッド候補の仮想通貨プロジェクトを公開し、5月22日から投票を開始する。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア