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初心者でもわかる仮想通貨ヘッジファンド「Three Arrows Capital」とは|企業の特徴や運用実態を解説

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

Three Arrows Capitalとは

2022年に入り、ウクライナ情勢や米連邦準備理事会(FRB)による金融引き締め、またテラ騒動などによって、暗号資産(仮想通貨)市場は低迷しています。2021年の仮想通貨バブルの様相から一転して、「仮想通貨に冬の時代が再来した」といった声もささやかれるようになりました。

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冬の時代は個人投資家はもちろん、仮想通貨企業にも大きな影響を与えています。複数の大手企業からは人員削減など、経費を圧縮する発表も行われました。

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また、大きな影響を受けるのは、仮想通貨を保有・運用している企業も同様です。市場では、ビットコイン(BTC)を大量保有し、そのビットコインを担保に融資を受けているマイクロストラテジー社の動向も注視されています。

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この冬の時代に、財政が大きく悪化して最も注視されている一社が仮想通貨ヘッジファンド「Three Arrows Capital(3AC)」です。本記事では、3ACについてご紹介していきます。

目次
  1. 企業の概要
  2. ヘッジファンドとは
  3. 仮想通貨業界の投資
  4. 2022年の3ACの状況

1. 企業の概要

3ACは、2012年創設の仮想通貨ヘッジファンド。学生時代のクラスメイトだというSu Zhu氏とKyle Davies氏が創業しました。

もともとはシンガポールを拠点にしていましたが、その後ドバイに移転したとの情報があります。Zhu氏の公式ツイッターアカウントの「場所」に入力されているのはドバイです。一方で現在、同社の公式ウェブサイトには、英国領ヴァージン諸島(BVI)の規制に準拠していると記載。シンガポール金融管理局(MAS)の発表からも、現在はBVIを拠点にしていると見られます。

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3ACは公開されている情報が少なく、運用実態など細かい点は不確かなことが多いですが、最も多い時は1.3兆円(100億ドル)〜2.4兆円(180億ドル)相当の資産を運用していたと言われています。

2. ヘッジファンドとは

資産運用額からも分かる通り、3ACは創設後、大手ヘッジファンドへと成長しました。本節ではまず、そもそもヘッジファンドとは何なのかをご説明していきます。

ヘッジファンドという言葉は本記事のように「企業」を指していることもありますが、本来は、3ACのような企業が運用する「金融商品」を指している場合が多いです。一般的にヘッジファンドには、以下のような特徴があります。

1. 機関投資家や富裕層らから私募で資金を集めて運用する

2. 様々な投資手法を使って、市場が上がっても下がっても利益が出るように運用する

ヘッジファンドの「ファンド」は、資金を集めて運用するところから名前に使われています(上記1の特徴)。また、「ヘッジ(hedge)」という英単語には「防衛手段」といった意味があり、金融用語では「リスクを回避すること」という意味で利用されます(上記2の特徴)。

1の特徴は分かりやすいと思うので、2についてもう少し説明していきます。ヘッジファンドの投資戦略としてよく紹介されているのが、以下のような手法です。

  • ロング・ショート戦略
  • 裁定取引(アービトラージ)戦略
  • イベントドリブン戦略
  • グローバルマクロ戦略
  • マーケット・ニュートラル戦略
  • このような様々な手法を駆使し、保有資産を担保に借り入れを行なって運用規模を拡大する「レバレッジ」を活用したり、先物やオプションといった金融派生商品(デリバティブ)にも幅広く投資したりしながら資金を運用するのがヘッジファンドです。

    例えば伝統的な手法である「ロング・ショート戦略」は、株式や仮想通貨の複数銘柄に対して買い注文(ロング)と売り注文(ショート)を行い、ロングとショートの比率を機動的に変更したりして、値動きによるリスクを抑制しながら絶対収益を狙う手法です。

    3ACも上記のような戦略を活用し、資産を運用していたとされています。公式ウェブサイトでは投資手法について「当社はリスク調整後のリターンで、高い利益を提供することに特化したヘッジファンドである」とだけ説明しています。

    リスク調整後のリターンとは、単純なリターンの大きさではなく、得られたリターンに対し、どれだけリスクを取っていたかを反映させたもの。投資商品を比較する際、同じリスクならどちらのリターンが多いかを考える時などに利用することができ、「シャープ・レシオ」など複数の指標があります。

    例えば、シャープ・レシオには指定の公式があり、算出された数値が高いほど、リスクを取ったことによって得られた超過リターンが多いこと、つまり効率よくリターンが得られらことを意味します。

    なお、仮想通貨やブロックチェーンの領域で、資金調達のニュースなどで「ベンチャーキャピタル(VC)」という言葉が頻繁に出てきますが、ヘッジファンドはVCとは異なります。VCとは、新しい企業やプロジェクトを支援する企業のこと。出資して経済的に支援するだけでなく、多くの場合、経営のアドバイスなども行います。

    3. 仮想通貨業界の投資

    それでは、3ACは仮想通貨やブロックチェーンの領域で、具体的にどのような投資を行なっていたのでしょうか。

    投資先は公式ウェブサイトで公開されており、5つに大きく分類されています。

    まずはベースレイヤー。ビットコイン、イーサリアム(ETH)ソラナ(SOL)など9プロジェクトに投資を行なっています。

    出典:3AC

    2つ目がDeFi(分散型金融)です。DeFiの投資先は、Aave、Balancer、Kyber Network、Lido、Orcaなど23プロジェクト。

    出典:3AC

    3つ目は株式。BlockFi、Deribit、StarkWareなど5社の株式に投資しています。

    出典:3AC

    4つ目はファンドです。ファンドの投資先はMulticoin Capital、Coincident Capitalなど5社。

    出典:3AC

    最後の5つ目はゲームとNFT(非代替性トークン)。Axie Infinity、Crypto Raidersなど6プロジェクトに投資しています。

    出典:3AC

    どのように資金を配分していたかなど詳細までは公開されていませんが、上記投資先で最大100億ドル〜180億ドルを運用していたと見られています。

    しかし、運用の詳細は公開されていませんが、仮想通貨市場が低迷したことで、3ACの運用実態が少しずつ明らかになってきました。次節では同社の22年の状況についてご説明していきます。

    4. 2022年の3ACの状況

    大手ヘッジファンドへと成長を遂げた3ACは22年6月、債務超過の危機に瀕しているとの疑惑が浮上しました。

    時系列で見ると最初は6月14日に、3ACのものとされるアドレスから、イーサリアムに交換するために約2万2,830ものstETHが送信されたことがツイッター上で報告されました。

    stETHは、DeFiプラットフォーム「Lido Finance」でイーサリアムをステーキングすることで入手できるトークンのこと。ユーザーは、ステークしたイーサリアムと同量のstETHを受け取ることができます。

    上記ツイートによると、この時は「1stETH=0.93ETH」とstETHは割安で取引されていました。この状況から「3ACは財務状況が悪化したため、割安ででもstETHをイーサリアムに交換しているのではないか」との憶測が広まりました。

    一方でstETHを投げ売りし、割安にしたのは3ACではないかとの指摘もあります。

    関連:イーサリアム関連「stETH」の価格乖離、その背景は

    投資の詳細を公開していない3ACに対しては、これを機に様々な分析や報道が行われました。

    その他の事例

    事情に詳しい関係者の話としてCoinPost提携メディア「The Block」が6月15日に報じた内容によると、仮想通貨市場が大幅に急落した影響で、3ACが業界トップのレンディング企業へ担保に出していた4億ドルもの証拠金が清算。その後も、複数のレンディングプロバイダーで保有する債務の調整に追われていると報じられました。

    この報道と同じタイミングで共同創設者のZhu氏は同日、「問題解決に向け、関係者と全力で取り組んでいる」とだけツイッターで報告。同社が困難な状況に陥っている事実を窺わせました。3ACは高いレバレッジをかけて運用したり、損失を取り戻そうとして必要以上に資金を投じたりする「リベンジトレード」を行なっていたとの見方も上がっています。

    関連:シンガポールの大手ヘッジファンド、520億円相当のポジション清算か

    上記CoinPostの記事では、同社に関連付けられたDeFiアドレスで保有ポジションの清算リスクが高まっていることを報道。このアドレスは、レンディングプロトコル「Aave」に約300億円相当のイーサリアムを担保に出し、240億円相当の米ドル・ステーブルコインを借り入れていました。

    また、匿名リサーチャーの見解として、3ACが資金を工面するために、StarkWareなどの有望な投資先の株式や上場前トークンを、担保に入れていた可能性も報じています。

    テラプロジェクトへの出資

    上記の記事にも書きましたが、3ACの財政にはテラプロジェクトの問題が大きな影響を与えていたようです。同社はテラのプロジェクトにトークンセールを通して、2億ドル出資していたことが明らかになりました。3ACの共同創設者Davies氏は「Wall Street Journal(WSJ)」のインタビューに対し、テラ騒動には「不意を突かれた」と説明しています。

    関連:テラUSD(UST)のディペッグ騒動 Terraform Labs社や取引所の対応まとめ

    ステーブルコインのUST(現USTC)やLUNAトークン(現LUNC)の暴落には耐えられたものの、ビットコインやイーサリアムなどの価格にも影響が波及したことで、同社の負担が大きくなったと述べました。

    この内容はWSJが6月17日に報道。3ACが法律顧問と財務顧問を雇用したことや、資産の売却や他社からの救済を含めた選択肢を検討していることも明らかになっています。

    関連:Three Arrows Capital、資産売却や他社からの救済も検討=WSJ

    ビットコインのポジションが強制清算

    他にも3ACが財政困難に直面したことを示す事例があります。具体的に社名が明かされている内容では6月17日、情報筋の話として「Financial Times」が、仮想通貨貸借サービス大手BlockFiが3ACのポジションを強制清算したと報じました。

    BlockFiのZac Prince最高経営責任者(CEO)も17日、「ある大手顧客の過剰担保ローンについて我々は最近、最良の判断を下して清算を行った」とコメント。この「大手顧客」が3ACだと見られています。

    Financial Timesは清算の金額は報じていませんでしたが、「2020年にBlockFiに戦略的投資を行った3ACは、BlockFiからビットコインを借りていた。しかし、追加証拠金の要求(マージンコール)に応じることができず、両者の合意のもとで清算を実行した」と伝えています。

    Prince CEOは「今回の相手企業に実際に清算を行ったのは、当社が初めてだろう」とコメントしました。

    関連:大手ヘッジファンド「Three Arrows Capital」、ビットコインのポジションを強制清算か=FT報道

    債務不履行の事例も

    また、仮想通貨取引プラットフォーム「Voyager Digital」は6月27日、3ACに対して債務不履行通知を発行したことを発表しました。

    Voyagerは当時、3ACに15,250BTC分(430億円相当)と3.5億USDC分(474億円相当)のエクスポージャーがあり、27日までに全額返済するよう求めていました。エクスポージャーとは「投資家や金融機関、企業が保有する金融資産のうち、価格変動などのリスクにさらされている金額や残高、比率のこと」です。

    債務不履行通知が発行されたことで3ACが返済できなかったことが明らかになりましたが、Voyagerはこれからも専門家に相談しながら、返済を求めていくと説明しました。

    関連:仮想通貨企業Voyager、Three Arrowsの債務不履行を発表

    その後、結局Voyagerは破産を申請。裁判所の書類から、3ACの未返済額は6.5億ドル相当であることが分かっています。

    関連:破産申請したVoyager、FDICの保険は顧客資産に不適用と発表

    裁判所が清算を命令

    このように、3ACは資金を借りて運用を行なっていたため、同社の財政状況は関連企業にも影響が波及しています。

    3ACの投資先の1つとされる仮想通貨銀行「Finblox」は6月17日、出金制限を設け、報酬分配を一時停止することを発表しました。Finbloxは「イールド生成とリスク分散のために3ACを含む8社と協業してきた」と説明。そして「3ACによる流動性への影響を評価する」とも述べました。非公式ながら、3ACは投資先の資産運用を請け負っていたとの情報も飛び交っています。

    関連:仮想通貨銀行Finbloxが出金制限、Three Arrowsの債務問題の影響は?

    自社だけでなく他企業へも大きな影響を及ぼしている3ACは6月27日、BVIの裁判所から企業の清算を命じられたことが報じられました。これは事実上の破産と見られています。

    関連:仮想通貨ヘッジファンド「Three Arrows Capital」、裁判所が清算を命令か=報道

    そして、7月1日には米国で破産申請をしたことも明らかになりました。この申請には、米国破産法第15章(国際倒産)を適用。破産法第15章(通称「チャプター15」)は、海外企業が米国以外の国で再建を進める期間において、米国の債権者による訴訟から保護され、資産を守るためのルールです。

    関連:仮想通貨ヘッジファンドThree Arrows、米国で破産申請

    破産したからには債務を整理する必要があります。今回の命令を巡っては、運用資産の規模などから債務整理の難しさを指摘する声が上がりました。また、仮想通貨などの資産が大量に売却されるのではないかという懸念の声も聞かれています。

    国際決済銀行(BIS)は21年12月版の四半期レポートで、ヘッジファンドのようなノンバンクの金融仲介企業は、DeFiなどにおける投資で高いレバレッジをかけていると指摘。このような状況では、投資資産の価格が下落してリスクが高まると、ヘッジファンドらに融資していた企業が返済を迫ったりして、強制売却につながる可能性があると警告していました。

    3ACがポジションを清算されたり、債務整理で資産を売却する場合、仮想通貨などの資産は価格に関わらず売却しなくてはなりません。大規模な資金を運用していた3ACが資産を売却すると、対象資産の価格がさらに下がり、関連企業らに影響が波及して清算や破産の連鎖を生む可能性があるため、3ACの動向は市場から非常に注視されています。

    関連:「市場に漂う清算リスクの暗雲」、仮想通貨企業の債務問題・救済策まとめ

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