CoinPostで今最も読まれています

BitMEXの「米国法逃れ」で逮捕事例、何があったのか──ビットコイン下落要因に

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

BitMEXらを告発

米司法省(DOJ)と米商品先物取引委員会(CFTC)が、暗号資産(仮想通貨)デリバティブ取引所BitMEXと同社のアーサー・ヘイズCEOらを告発、Samuel Reed共同創業者(CTO)を拘束したことが分かった。

マネーロンダリング対策(AML)や本人確認(KYC)などに関するCFTCのルールに違反し、未登録のプラットフォームを運営したことが主な理由だ。AMLについては故意に規制を守らなかったとして、ヘイズCEOを含む4名は銀行秘密法(BSA)にも違反したとDOJから訴えられている。これから罰金や取引の禁止、不正利得の返金、賠償など、裁判所が必要かつ適切と判断する対応が求められる。

BitMEXは香港を拠点にする取引所で、100倍のレバレッジ取引が注目を集める仮想通貨業界の主要プラットフォームの一つだ。

訴状によると、BitMEXは米国で運営を行うにあたり、CFTCから指定契約市場(DCM)とスワップ執行施設(SEF)の認可を受けていなかった。その状況下で証拠金を利用したBTCのデリバティブ取引を提供し、レバレッジ取引において直接売買を行ったことが問題視されている。

AMLとKYCについては必要な手順で手続きを実行しなかったとして、CFTCのルールにも違反したと指摘された。

40ページに及ぶ訴状には、被告として、BitMEXの親企業HDR Global Trading Limited、関連企業ABS Global Tradingら5社の名前もあがっている。

CFTCのHeath Tarbert会長は本件について、以下のようにコメントした。

 

デジタル資産はデリバティブ市場にも、経済に対しても大きな可能性を持っている。

米国がこの業界で世界のリーダーとなるために、今回のような違法行為は根絶しなくてはならない。

市場の完全性が達成されてこそ、新しい革新的な金融商品は成功する。

弁護士、有識者の見解は

仮想通貨セクターに精通する弁護士のJake Chervinsky氏は今回のニュースを受け、ニューヨーク南区の連邦地検が銀行秘密保護法の違反としてヘイズらを告発(逮捕事例含む)したことは、これまでのCFTCの告発よりも影響度が極めて高いと指摘。懲役は最大で5年間となる可能性があると説明した。

また、ヘイズCEO本人は、シンガポール在住で米国にいないとされるが、米国とシンガポールは犯罪者引渡条約を結んでいるため、引き渡すことは可能だとした。

業界への影響は?

ブロックチェーン業界で弁護士を務めるCollins Belton氏は、CFTCによるBitMEXの告発はDeFi(分散型金融)セクターの「DAO報告書」になり得ると指摘。DAO報告書とは、SECが2017年に発表した仮想通貨販売の証券法違反に関する規範だ。業界の基準となることを意味する。

Belton氏は、銀行秘密保護法の違反は証券法違反よりも罰則が大きくなると指摘する。

また、DeFiセクターへの影響についてもコメントし、BitMEXは顧客の資産を預かるため、CFTCがその点に関して規制の違法を指摘していることに注目した。CFTCの法的観点が「本物のDeFi」には有利だと見ている。本物のDeFiは顧客の資産を管理しないため、CFTCがDeFiにデリバティブ市場と同じルールを適用させない可能性があるという。

市場への影響に言及した経済学者のAlex Kruger氏は、BitMEXの告発ニュースが「短期的に弱気、長期的に強気」と見ている。

長期的な理由には、未だ承認されない米国内のビットコインETFへの進展になるとの考えがある。「BitMEXが米国市場からなくなれば、米国内の規制された取引所やOTC市場の出来高が高くなる可能性が増え、規模も拡大し得るため、SECがETFを承認する確率も高くなり得る」と説明した。SECがビットコインETFを承認しない理由の1つに、「米国の仮想通貨市場の規模が未だ小さい」点が挙げられている。

ビットコインETFの実現可能性に影響がもたらされ得ることについて、Chervinsky氏もコメントした。「CFTCの告発はETFの実現にとって必要だが、十分ではない可能性もある。おそらく、BitMEX以外で高い出来高を持つ取引所もターゲットとされるかもしれない」と話した。

ビットコイン相場は一時下落

また、2日の仮想通貨市場で、BitMEXの報道を受けビットコインが一時急落。前日比5%安を記録した。

BTCUSD(Coinbase)チャートで確認すると、CFTCのステートメントがオンライン上で公開されたタイミング後にBTC市場が急落。

SNS上で先に拡散され、CFTC公式ツイッターとメディアが続いて情報を報じた。

現時点で、BitMEXからのBTC出金(OutFlow)の急増は確認されていないが、過去のビットコイン市場とBitMEX出金状況の相関性が指摘されていることから、市場の警戒ポイントにもなり得る。

BitMEXでは、BTC入金は24時間利用出来るが、BTC出金は1日のうちUTC13:00(日本時間22時)に1回のみ行うことができる仕組みとなる。

日本時間1時〜5時にBTC相場が動きやすい理由としては、米国時間との時差や4時間足の確定タイミングのほか、BitMEX出金時刻を経過して流動性の変動も加味する必要がある。

追記

BitMEXの公式発表によると、顧客が出金できるように、日本時間10月2日の17時、および22時に計2回の追加出金プロセスを行う。

追加の出金申請時間を公表したことで、マーケットの注目ポイントとして見られる可能性がある。

最近のBitMEXの規制対応

BitMEXは多くの日本人の顧客を抱える取引所でもあったが、日本で5月1日から施行された仮想通貨関連改正法案に対応するため、日本からBitMEXを利用した取引が同日から制限された。

関連BitMEX、日本国居住者の仮想通貨取引を禁止へ

その後、8月28日よりKYCプログラムを導入。過去に登録して取引を行なっている既存ユーザーも6カ月以内にIDチェックを行うことを求め、取引を続けるためには2021年2月12日までに本人確認を完了する必要があるとしていた。9月1日からは日本に続き、カナダのオンタリオ州の居住者からのアクセスを制限している。

規制に対応する一方で今年5月には、BitMEX、HDR Global Trading LimitedおよびABS Global Trading、ヘイズらが、資金洗浄および相場操縦を含む理由で提訴。米国で送金事業ライセンスを持たずに運営し「一日あたり30億ドル(約3200億円)に及ぶ資金を転送させていた」と申し立てられた。

関連BitMEX、巨額マネロンや相場操縦で新たな訴訟に

CoinPost App DL
記事提供:THE BLOCK
THE BLOCKとは

Cryptoにおける”最初で最後の言葉”であること。
The BlockはCryptoにおける最高クオリティで最重要のシグナルをお届けします。日々、Website、Newsletter、Podcast、イベントを通じて、業界で最も影響力のある人々にリーチしています。

注目・速報 相場分析 動画解説 新着一覧
13:00
ワールドコイン、秘匿化技術で生体認証データの保護・オープンソース化を発表
暗号資産(仮想通貨)でベーシックインカム実現を目指す、ワールドコイン・ファンデーションが生体認証データ保護にSMPC技術を導入。そのシステムをオープンソース化した。セキュリティとプライバシーを強化するとともに、システムの普及拡大を目指す。
12:32
短期トレンド変化のビットコイン続伸なるか、ミームコインが牽引する場面も
CPI発表で急反発を見せた暗号資産(仮想通貨)相場ではビットコイン(BTC)が下降チャネルをブレイクアウトした。16日には賛否両論渦巻くミームコインが相場を牽引する場面も。
12:00
世界最大の証券清算機関DTCC、チェーンリンク活用した「Smart NAV」を実験
世界最大の証券清算・保管機関DTCCは、チェーンリンクを活用した「Smart NAV」の実証実験を行った。JPモルガンなど金融大手10社が参加している。
11:10
Slash Fintech、暗号資産決済でVプリカ販売サービス開始 NFT特典も実施中
Slash FintechがVプリカ販売サービスを開始。暗号資産(仮想通貨)決済でVプリカ購入可能。特典としてSlash Genesis NFTをプレゼント。利用方法から使い方まで解説。
10:00
ブラックロックのビットコインETF、アナリストが高評価
ブラックロックの仮想通貨ビットコインETFの購入者数は記録的な数字であると、ブルームバーグのシニアアナリストが高評価。レポートが提出され、ビットコインETFのパフォーマンスを分析した。
09:30
SECの仮想通貨保管ガイドライン覆す決議案、米両院で可決
米連邦議会上院は、下院に続き、SECが発行した仮想通貨の保管に関する会計公報を覆す決議案を可決した。議員やSECがコメントを発表している。
08:35
TON基盤の「Notcoin」、800億トークンをエアドロップ
仮想通貨NOTトークンはエアドロップの実施に際しBybitやOKX、バイナンスに新規上場した。現在0.0075ドルで取引されている。
08:00
「BTCの短期の上値余地は限定的」JPモルガン
仮想通貨ビットコインの短期の上値余地は限定的であるとJPモルガンは予想。他にもビットコインの生産コストやマイナーの状況を分析した。
07:10
モルガン・スタンレー、420億円相当のビットコインETFを保有
米金融大手のモルガン・スタンレーが第1四半期の時点(3月末まで)で、420億円相当の仮想通貨ビットコインの現物ETFを保有していたことが13F書類で確認された。
06:20
ソラナ基盤のリステーキングSolayer、わずか45分で目標の31億円入金上限額を達成
Solayerの「epoch 0」は招待のみのアクセスで、仮想通貨ソラナネイティブステーキング、mSOL、JitoSOL、bSOL、INFのステーキングを対象としたもの。TVLが最も高いのは、mSOLで、833万ドルに達した。
05:45
コインベース、3つのソラナ銘柄の永久先物提供
米仮想通貨取引所大手コインベースは16日、3つのソラナ基盤の銘柄のパーペチュアル先物取引を新たに提供した。JupiterやJitoが対象となった。
05/16 木曜日
15:14
アークとフィデリティが牽引するビットコインETFの資金流入
米国のビットコイン現物ETFに巨額の資金流入が2日間続いている。直近ではブラックロックのiシェアーズ・ビットコイン・トラスト(IBIT)への資金流入が一服した一方、ARKBとFBTCが注目され、累積純流入額は121億ドルに達した。暗号資産(仮想通貨)投資信託に対する直近の流入動向を分析。
14:30
メタマスク、ボット対策の取引機能を提供開始
米Web3ソフトウェア企業Consensysは、 仮想通貨ウォレットのMetaMaskで同社が開発した新技術「スマート・トランザクション」が利用可能になったと発表した。
14:10
米デリバティブ大手CME、ビットコイン現物取引の提供を計画
現物の仮想通貨ビットコインへの直接アクセスは、規制された最大のデリバティブプラットフォームを通じて、金融商品として本格的な普及につながる見込みだ。
13:04
SBI VCトレード、ジパングコインの貸暗号資産で特別年率を提供
暗号資産(仮想通貨)取引所SBI VCトレードがジパングコイン取扱いを開始し、貸コインで年率99%の特別キャンペーンを実施中。デジタルゴールドでインカムゲインを得る機会が期間限定で提供される。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア